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2023年6月30日更新
[7月1日・建築士の日特集]2拠点で活躍する建築士②|玉城勝也さん(Creative Team 情熱集団 沖縄 代表)
沖縄本島とそれ以外の「2拠点」で活躍する建築士にスポットを当て、地域や国が異なる2拠点に身を置くからこそ感じる面白さを語ってもらった。7月1日は建築士法の施行日から「建築士の日」。今号は建築士をテーマに特集します。
[拠点]沖 縄 ー 上 海
Creative Team 情熱集団 沖縄
代表 玉城勝也さん
たまき・かつや/1978年、八重瀬町出身。2000年から県内設計事務所に勤務。08年から上海の設計事務所に勤務。11年、CreativeTeam情熱集団 沖縄 設立。12年、CreativeTeam情熱集団 上海 設立。新築からリノベーションまで幅広く手掛ける。22年、沖縄三育中学校竣工。モットーは「人の数だけ家がある、家族の数だけ夢がある」。
国際コンペの技 個人宅にも
鳥のように街全体を見渡したかと思えば、車で通りを走っていると錯覚するほど流れるように移り行く景色。建物の中を歩き回ったり吹き抜けの大空間を見上げたり、デザインや規模感、人との距離まで分かるリアルな画像に驚く。「上海での仕事はコンペで取るのがほとんど。競争相手は欧米系の建築事務所でレベルが高く、ナレーション付きの映像や3Dのイメージ画像を使う。だから沖縄で住宅をデザインする際も打ち合わせにこの手法を使うのは苦じゃないし、完成後に『こうじゃなかった』と言われたことは一度もない」多様な仕事・価値観がアイデアの泉広げる
経済も人も「バイタリティーがある上海で勝負したい」と渡中したのは30歳の時。現地設計事務所で都市計画や上海万博のパビリオン、商業施設などのデザインに携わり、仲間とともに独立。上海と沖縄を行き来し、12年がたつ。
緻密な市場分析に基づくコンセプト固めやデザインセンス、大所帯の組織相手にプロジェクトを進める粘り強さを自負するのは、「日本では考えられないスケールの仕事を若手の頃から任せてもらえた」から。国も人も規模も用途も違う2拠点での仕事は、「アイデアの泉を広げてくれる。金銭感覚や時間の使い方を含め、考え方や価値観が違うからこそ面白い」。
違い面白がり 唯一無二をカタチに
その違いを改めて感じたのは、沖縄事務所開設後、初の住宅見学会。「来場者に『同じ物を』と言われたのが物足りなかった。中国人はこちらが勘弁してと思うほど(笑)要望を言うのが当たり前で、無理難題と思えるこだわりに応える楽しさがある」からだ。考えた末に取り入れたのが「1日の過ごし方を書いてもらう」ヒアリングシート。「みんなが思う以上に個々の価値観が出る。僕らも悪ノリが好きだから、ならばと頼まれてもいないのに常に新しいコト、できるコトを探しちゃう」。そうして施主とのキャッチボールを繰り返し建てた一例が、「室内でたき火ができる家」だ。
上海には3年行けていないが「現地の投資家が沖縄を意識し始めた。いずれ中国人向けの商品開発などで架け橋になれれば」と話した。
沖 縄
カメ好きのクライアントに応えた個性的な外観のイメージ画像と完成写真(下写真)。広いデッキは家族の交流や住環境を考え、設計されている(建築士提供)
上記住宅の風の流れをイメージ画像で可視化したもの。敷地や住宅の条件に合わせて計算されている(建築士提供)
上 海
客席すべてが個室タイプの「日本料理 光琳」のイメージ画像。間接照明、ライティングにこだわり、高級感ある日本の料亭のような店舗デザインとなっている。店舗外から見えるふすまは(下写真)組子風の造作で、高級感をさらに引き立てる(建築士提供)
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取材/徳正美
『週刊タイムス住宅新聞』建築士の日特集
第1956号 2023年6月30日掲載