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2023年6月30日更新

[7月1日・建築士の日特集]2拠点で活躍する建築士①|仲本兼一郎さん(STUDIO MONAKA共同代表)

沖縄本島とそれ以外の「2拠点」で活躍する建築士にスポットを当て、地域や国が異なる2拠点に身を置くからこそ感じる面白さを語ってもらった。7月1日は建築士法の施行日から「建築士の日」。今号は建築士をテーマに特集します。






[拠点]沖 縄 ー 京 都

STUDIO MONAKA 共同代表 仲本 兼一郎さん
STUDIO MONAKA
共同代表 仲本 兼一郎さん


なかもと・けんいちろう/1987年、嘉手納町出身。高校卒業後、京都建築大学校に進学。京都にある魚谷繁礼建築研究所を経て、2015年、岡山泰士氏・森田修平氏と一緒に、STUDIO MONAKAを京都で創業。18年、沖縄事務所を開設。20年、第6回沖縄建築賞で「House in Matsumoto」が奨励賞・新人賞を受賞。
 

京町家の感覚 沖縄になじませる

築100年以上は当たり前。間口が狭く、奥行きが深い「ウナギの寝床」のような造り。隣家との距離も20~30㌢ほどしかない。そんな京町家の改修などを手掛けるのが、京都と沖縄に事務所を構えるSTUDIO MONAKAの仲本兼一郎さん(35)だ。建築士としてのスタートが京都で、自身も町家に住んでいた経験から「出身は沖縄だけど京都的な感覚が自然と身についた。沖縄での設計も、その感覚を大切にしている」と話す。

例えばスケール感。「町家はコンパクトながら、日本人の体格に合うので自然と落ち着く。そんなヒューマンスケールを意識し、必要以上に大きくならないようにしている」

また、隣家側に窓がない町家では光や風を取り込むため、中庭や坪庭を設けたり、玄関から続く土間で部屋をつないだりする。仲本さんは「外を通って部屋に入る造りは、冬でも暖かい沖縄でも受け入れられやすいのではないか」と、中庭や通り庭でつなぐ分棟式の住宅を沖縄で提案。「アマハジなどと通じる部分もあるので沖縄でもなじむ」と説明する。


アプローチ方法変えて偏らないアイデア

2拠点で活動を始めた当初は戸惑うことも多かった。「特にカルチャーショックだった」のが断熱に対する考え方。底冷えする京都では床まで断熱するのが一般的だが、沖縄では予算調整の時にまず断熱から削られるという。そのため設計に対するアプローチも「京都ではいかに閉じて外気を遮断するかを考えるが、沖縄では、シロアリや湿気対策として床下を大きく開けるなどいかに開くかを考える」。

ほかにも、町家改修では材料選びのために古道具店を巡ったりするが、沖縄では送料も考えなければならず選択肢が限られる。構造材として使おうとしたベイマツが「シロアリ被害を受けやすい」ため使えないなどもあった。

一方で「地形や気候、歴史、文化、日常の風景も全く違うので、アイデアが凝り固まらない。各地域の計画を共有することで若いスタッフたちの刺激にもなる」と仲本さん。

今後については「沖縄のリゾート感を京都でも出していきたいし、アジアにも拠点を設けたい。それぞれ交流することで、自分たちならではの建築になるのではと思う」と力を込めた。


沖 縄
棟を分け、中庭を通って行き来する住宅「House in Matsumoto」。石を中心としたシンプルな庭も相まって、京町家のようにも感じる
棟を分け、中庭を通って行き来する住宅「House in Matsumoto」。石を中心としたシンプルな庭も相まって、京町家のようにも感じる

シロアリや湿気対策のため、床下を大きく開けた事例。「京都でこれをやると、寒くて大変なことになる」と仲本さん(建築士提供)
シロアリや湿気対策のため、床下を大きく開けた事例。「京都でこれをやると、寒くて大変なことになる」と仲本さん(建築士提供)

京 都
(上・下写真)京町家を改修した宿泊施設。隣家と近接しているため隣家側に窓はないが、中庭からの光が室内を照らす=下写真(建築士提供)(上・下写真)京町家を改修した宿泊施設。隣家と近接しているため隣家側に窓はないが、中庭からの光が室内を照らす=下写真(建築士提供)
(上・下写真)京町家を改修した宿泊施設。隣家と近接しているため隣家側に窓はないが、中庭からの光が室内を照らす=下写真(建築士提供)


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取材/出嶋佳祐
『週刊タイムス住宅新聞』建築士の日特集
第1956号 2023年6月30日掲載

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「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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