特集・企画
2022年7月1日更新
[沖縄・建築士の日2022 特集④]意外な分野で活躍する建築士
7月1日は建築士の日。その職能は建築業界だけでなく、さまざまな職種で生かされている。意外な分野で活躍する建築士を紹介する。※7月1日は建築士法の施行日から「建築士の日」。今号は建築士をテーマに特集を展開します。
施設部の職員と工事の打ち合わせをする知念さん(左)。「部長は、仕事はとても几帳面だけど、普段は気さくで話しやすい」と部員
空港で活躍する1級建築士
知念 健さん
那覇空港ビルディング(株) 施設部部長
玄関口守る縁の下の力持ち
国内外からさまざまな人が訪れる沖縄の玄関口、那覇空港。安全・安心・快適が当然で、使いにくければ即、苦情につながる。利便性・快適性・機能性の高い水準を「当たり前」に保つのが那覇空港ビルディング㈱の仕事だ。施設部はその中枢を担い、建物の維持管理から清掃・警備などのソフト面まで幅広い業務を行う。同部を率いる知念健さんは、一級建築士免許を持つ。「縁の下の力持ち的な役割で派手さはないけれど、重要施設である空港の機能を守るべく、緊張感を持って対応している」
空港は、私たちが知る以上に巨大で複雑な施設だ。一般客が利用しているのは「建物の半分程度」。もう半分は空港に入居している会社(航空会社や店舗など)の事務所や、商品を管理するバックヤード、機械室などがある。常にどこかで改修や、安全性を高めるための補強工事などが進行している。
各工事は設計・施工業者に委託しているため知念さん自ら図面を引くことはないが、「工事費や委託費などが適正か査定する際は図面を読み解くスキルが必要だし、設計・施工業者との打ち合わせや各種検査の立ち会いには建築の専門知識が欠かせない」と話す。
費用査定については、建築資格を持たない社員でも算出できるようマニュアルを作成した。一般的な工事と大きく違うのは人件費。「空港は年中無休のため、営業時間外の午後9時~早朝5時までの作業も多い。しかも、建物を利用しながらの工事なので小分けにして行っている」。
安全面で特に力を入れているのが、台風対策、停電対策、水対策(雨漏り・浸水など)。その一つとして今年、電気室へ続く地下車路の前に巨大な止水扉を設置した。幅6メートル×高さ3メートルある
コロナ禍はチャンス
施設部の役割は「黒子」と言う。「コロナ禍で利用者が減ったことは、ある意味チャンス。危険を伴う工事など人が多い時にやりにくい業務を今のうちに進めて、通常に戻った時に『奇麗になった』『使い勝手が良くなった』と感じてほしい」と急ピッチで随所の工事を進める。
以前は県内の金融機関で、新店舗建築のための土地購入などに携わっていた。建築業界以外で働くと、「専門用語や関係法令など、イチから勉強しなければならないが、パイオニアになれるのが魅力」。那覇空港に勤め、最初に取りかかった費用査定のマニュアル作成のように「建築士として、その会社に必要だと思うものを形にできる。責任とともにやりがいも大きい」と語る知念さん。バイタリティーがあれば、図面を引かずともその職能は活きる。
那覇空港内で知念さんのお気に入りの場所は国際線エリア3階にある「ふくぎホール」。滑走路に面していてさまざまな飛行機を眺めることができる
プロフィル
ちねん・たけし/1971年、宜野湾市出身。琉球大学工学部を卒業後、県内の建築設計事務所、金融機関勤務を経て2021年1月より現職。1級建築士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。今後の目標は、「スカイトラックス社が発表する世界の空港のランキングで、那覇空港を40位以内に入れること!」
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取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1904号・2022年7月1日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。