特集・企画
2022年7月1日更新
[沖縄・建築士の日2022 特集③]意外な分野で活躍する建築士
7月1日は建築士の日。その職能は建築業界だけでなく、さまざまな職種で生かされている。意外な分野で活躍する建築士を紹介する。※7月1日は建築士法の施行日から「建築士の日」。今号は建築士をテーマに特集を展開します。
競合他社や他業種の店舗へ調査に行くことも多いという仲村さん。そのときに「一客としてじっくり見たい」ことから顔写真はNG。ファミンチュお面を手に、デスクワークの様子を再現してもらった
コンビニで活躍する2級建築士
仲村 淳さん
(株)沖縄ファミリーマート開発本部 開発業務部 建設課
時代に合わせ売り場つくる
コンビニ業界は消費者ニーズをいち早くキャッチしなければならず、競合店や他業種の調査も重要だ。「一人の客としてじっくり他店を見たいので、すみませんが顔写真はNGでお願いします」と話す沖縄ファミリーマートの仲村淳さん。仲村さんは建設課に所属し、新店の建設や既存店の改修などに携わる。「新店舗を建設する際、まず開発担当者が土地を探してきて、集客が見込めるか調査を重ねる。その後、私たち建設課が敷地に合わせた配置計画を行う。基本的に駐車台数は13台前後で、建物はできるだけ標準プランが入るよう検討しながら、なるべくコストを抑えた計画を何パターンか挙げる」
細かい図面は設計事務所に委託するが、「平面図は社内で描いている。客の道線を意識しながら冷蔵・冷凍ケースや陳列棚などを配置しなければならないし、什器の知識も必要。そのため、コンビニのセオリーを理解している内部で描く方が効率的」と説明する。
また、時代に合わせて「冷凍食品売り場を増やしたり、コーヒーカウンターを設置したり、最近ではレジ頭上に『デジタルサイネージ(電子看板)』の導入を進めている。変化のスピードが早いので対応力も必要」と話す。
さらには、他業種との併設店舗、大型施設や病院などへの出店のほか、居抜き物件の利用も増えている。「既存建物への入居は、構造や配管などの問題から通常の規格をはめ込むのが難しい場合もある。そのときこそ、技術者としての腕の見せどころ。レイアウトを見直し、利用しやすい売り場をつくり上げる」と胸を張る。
最近、増えているという他業種との併設店舗。仲村さんは、「建築時の調整は大変だが、お客さまにとっては利便性が良い。お互いに集客にもつながることから積極的に取り組んでいる」と話す
石垣島に初出店 9カ月で11店建設
2013年に沖縄ファミリーマートに入社。翌年10月には初出店となる石垣島での店舗建設を任された。15年6月までの間に11店舗を造るハードスケジュールだった。「オープンを楽しみに待つ方々の期待に応えるべく、緻密なスケジュールを組んだ。さまざまな方々の協力を得て、なんとか予定通りに開店でき、店の前に行列を作るお客さまを見たときには、本当にホッとした」
「車社会の沖縄において、コンビニはわずかな休憩所であり、日常を支えるインフラでもある。今後ますます必要とされると思う。建設課のメンバーとして、建築士として、少しでも県民のお役に立ちたい」。
“ファミンチュ”の背後に責任感とプロ意識がにじんだ。
沖縄ファミリーマートとゲート・ワン社が導入を進める「デジタルサイネージ(電子看板)」。県内328店舗(2022年6月時点)のうち約150店舗に設置されている。同店のお知らせやエンタメ情報、ニュースなどを配信。他会社のCMも流れ「新たな広告媒体として力を入れている」
プロフィル
なかむら・じゅん/1979年、北中城村出身。木造ハウスメーカーや、設計事務所勤務を経て2013年㈱沖縄ファミリーマートに入社。同社の建設課には9人が在籍しており、そこでは唯一の建築士。業務の傍ら、若手に向けて2級建築士試験の勉強会も行っている
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取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1904号・2022年7月1日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。