特集・企画
2022年7月1日更新
[沖縄・建築士の日2022 特集②]意外な分野で活躍する建築士
7月1日は建築士の日。その職能は建築業界だけでなく、さまざまな職種で生かされている。意外な分野で活躍する建築士を紹介する。※7月1日は建築士法の施行日から「建築士の日」。今号は建築士をテーマに特集を展開します。
開業25周年を機に本館客室改修中のザ・ブセナテラス。建具を確認する比嘉さん(左)
1級建築士資格を生かすホテルマン
比嘉 幹治さん
ザ・テラスホテルズ(株)シニアマネージャー
建築から給仕まで
汗ばむ気温の6月でも、ホテルマンらしくスーツ姿でザ・ブセナテラスの改修現場に立つ比嘉幹治さん。ザ・テラスホテルズの社員で唯一、建築士資格を持つ。社内の声を取りまとめてラフ図面を描き、設計・施工会社に伝える“パイプ役”を担う。主な業務は既存5ホテルの改修や新築工事だが、「人手が足りないときはレストランで給仕もします」。客の反応に触れ、スタッフの動きを体感する。だからこそ「皆が使いやすい空間を造りたい」と力を込める。
現在は7月10日に開業25周年を迎えるのに合わせ、ザ・ブセナテラス改修の大詰め。「ここまで来るのは大変だった。ファンが多いホテルなので、どこまで変えるか悩んだ」。間取りやホテルカラーは大きく変えず、遮音壁を設けたり、ワーケーション利用を考えてデスクスペースを設けたり、ミニキッチンやミニバーを見直し、部屋で楽しめる機能を充実した。
比嘉さんは既存の空間や家具の写真に改修ポイントや寸法を細かく描く。それをもとに設計・施工会社と打ち合わせをする
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リニューアル工事を終えたクラブラウンジ。コンシェルジュデスクの設計も比嘉さんが携わった
家具も各ホテルに合わせて設計
ホテル内の家具設計・選定も比嘉さんの仕事。「MBギャラリーチャタンは、外国の方も多く訪れるので、ソファや椅子の座面を少し大きめにしている」。ザ・ブセナテラスでは「客室の家具の色を明るめに変更した。改修前と床面積は変わらないが、広く感じられるようにしている」。各ホテルに合わせて細かく配慮する。
以前は東京の設計会社に勤務していた。「机上で図面を描くことが多く、リアルなものづくりをしている感覚が薄かった」。そんなとき、地元・沖縄のザ・テラスホテルズの存在を知り、同社へ。“生の声”を反映する作業は、「無理難題も少なくない」と苦笑するも、そこにやりがいを感じて試行錯誤する。「建築に携わる人間としては、ゲストが驚く唯一無二の空間を造りたい。ホテルマンとしては安全性や使い勝手も重要。常に『非日常』と『機能性』の間で葛藤している」。
「次の業務は、石垣島でのホテル建設。既存5ホテルの長所をすべて盛り込みたい」と意気込む。「テラススタイル」に日々向き合う建築士の集大成が楽しみだ。
ザ・ブセナテラスのガゼボスイート。「リビングルームの天井を50センチ上げたほか、家具の色も明るめに変更した」と比嘉さん。より広く、ラグジュアリーな空間になった
プロフィル
ひが・みきはる/1979年、那覇市出身。東京の設計会社勤務などを経て2012年にザ・テラスホテルズ㈱に入社。現在は総合企画部・ホテル業務推進グループのシニアマネージャー。同社の5ホテルの改修のほか、2021年4月に開業した「MBギャラリーチャタン by ザ・テラスホテルズ」や、サービスアパートメント「ザ・ナハテラス クラブレジデンス」の新築を手掛けた
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取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1904号・2022年7月1日紙面から掲載
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。