特集・企画
2022年7月1日更新
[沖縄・建築士の日2022 特集①]意外な分野で活躍する建築士
7月1日は建築士の日。その職能は建築業界だけでなく、さまざまな職種で生かされている。意外な分野で活躍する建築士を紹介する。※7月1日は建築士法の施行日から「建築士の日」。今号は建築士をテーマに特集を展開します。
パソコンに向かって作業する工藤さん。VRゴーグルをかければ、CGの中に入ったような感覚を味わえる
CG制作で1級建築士資格を生かす
工藤 敏雄さん
デジタルスタジオ ガラパゴ代表
建物をリアルに再現
家具や植栽で彩られた広いバルコニー。高層階だろうか、遠くの景色まで見渡せる。おしゃれに暮らす様子が伝わってくる1枚だ。マンションの1室を撮影した写真のようだが、実はこれ、一級建築士の資格を持つ工藤敏雄さんがCG(コンピューターグラフィック)で描いたパース(イメージ画像)。工藤さんが作るパースは主に広告などで使われ、図面ではイメージしにくい建物の雰囲気を可視化することで、マイホーム取得を後押ししている。
強みは「図面を読めること」。制作するのは建物が完成する前なので、実物を見ながらというわけにはいかない。だが工藤さんの場合は「平面図や立面図などを見れば建物の特徴を理解し制作できる」と話す。「少しの差で印象が変わる」というアングルにも気を配り、建築士ならではの視点で建物を見栄え良く切り取っていく。
その際「できる限りリアルに仕上げる」ように心掛ける。中でも光の当たり方を調整するライティングにはこだわる。複数のソフトを使い分けながら光のタッチを調整し、より魅力的な建物になるよう絵にメリハリをつけるという。
CGを駆使して制作したマンションのパース。背景の街並みはドローンで撮影した画像を合成したもので、実際に見える高さからの眺望となっている
異なる分野で新たな技術
大学時代からCGに興味があった工藤さん。卒業後に勤めた設計事務所では、設計や施工監理の他、CGでの住宅パース制作も担当した。「当時の主流は模型。内部の雰囲気が分かるCGパースはお施主さんに喜ばれた」と振り返る。
次第に「いろいろなCGに触れたい」との思いが募り、事務所を設立。食品のCMでキャラクターのアニメーションを手掛けるなど挑戦を続けた。その中で建築パースとは異なる技術を学び、それを再びパース作りに生かしていった。今はVR(仮想現実)に注力している。
一方で「どんなに画期的な技術でも人間の目は徐々に慣れ、しばらくたつと古く感じる」。そのため建築やCGはもちろん、幅広い知識をアップデートし続けることが不可欠。しかし「好きなことなので苦にならない」と笑顔を見せる。
「変化し続けるものが生き残る」というダーウィンの進化論のように、さまざまな挑戦で変化を続ける工藤さん。次にどんな技術で建物を表現するのか楽しみだ。
パソコンやスマホなど、インターネット上でモデルルームを体感できる「WebVR」の画面。コロナ禍で内覧できない人などに向けて、2年掛かりで制作したもので、好きな場所を好きな角度から見られる。インターネット上でも3D表示ができるよう、ゲーム用のCGソフトを使ったり、データを軽くする方法を試行錯誤することで可能にした。https://garapago.xsrv.jp/AlphaSmart_TaniyamaRyokuchi_Ichibankan_0216/index.htmlまたはこちらから体験できる
プロフィル
くどう・としお/1977年、秋田県出身。琉球大学工学部環境建設工学科を卒業後、県内の設計事務所に就職。マンションのCGパースを専門に手掛ける会社を経て、2009年、デジタルスタジオ ガラパゴを設立。県内外のマンションのパースだけでなく、食品、ビール、スポーツ施設のCMなど、さまざまな分野でCGの技術を生かしながら活躍している
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取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1904号・2022年7月1日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。