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2021年6月25日更新

[沖縄・建築士の日 特集④]意外な分野で活躍する建築士

7月1日は建築士の日。その職能は建築業界だけでなく、さまざまな職種で生かされている。意外な分野で活躍する建築士を紹介する。※7月1日は建築士法の施行日から「建築士の日」。今号は建築士をテーマに特集を展開します。

沖縄県職員の宮下さん。現在は首里城復興整備を担当。ことし3月に県が策定した「首里城復興基本計画」に基づき、中城御殿跡地整備や首里杜地区周辺の歴史まちづくりの推進などに取り組む
沖縄県職員の宮下さん。現在は首里城復興整備を担当。ことし3月に県が策定した「首里城復興基本計画」に基づき、中城御殿跡地整備や首里杜地区周辺の歴史まちづくりの推進などに取り組む


1級建築士資格を生かす沖縄県職員

宮下 草伸さん
沖縄県 土木建築部 都市公園課 
首里城復興整備担当
 

県民の声 街や建物に反映

沖縄県の職員には建築士資格者が40人以上いる。それだけ、「暮らし」と密接な資格ということだ。所属する部署は大まかに三つ。

①建築物の安全性や法適合を確認する部署。

②県立の学校や団地、病院など公共施設を整備する部署。

③まちづくりなど都市計画に関する部署。

宮下草伸さん(37)は入庁して10年。その3部署を経験し、現在は首里城復興整備を担当する。「人と話すのが好きなので、たくさんの人や建物と関われるのがやりがい。学生のころから興味のあった、まちづくりに携われるのも魅力」

入庁前は設計事務所に勤めていた。住宅から学校まで、大小さまざまな建物を担当したが、「さらに広い視点で建築に携わりたい」と転職した。「設計者として県職員とやりとりする中で、建築や都市計画の幅広い知識に感心した」ことも背中を押した。
 
中城御殿跡地整備について、県建築士会・山城一美副会長と話をする宮下さん。「県民の誇りである琉球の歴史文化を子や孫の世代に継承していくことが、沖縄の発展につながる」と意気込む
中城御殿跡地整備について、県建築士会・山城一美副会長と話をする宮下さん。「県民の誇りである琉球の歴史文化を子や孫の世代に継承していくことが、沖縄の発展につながる」と意気込む



計画の「調整役」

県職員になってからは、図面を書くより〝チームのまとめ役〟。住民、学識者、設計者、施工者など多様な人の声を聞き、「目標を共有して計画を進め、形にしていくためサポートするのが仕事」

特に印象に残っているのは那覇高校の建て替え。設計から完成まで3年間携わった。「大きな学校で関わる人も多く、設計の取りまとめに苦労した。工事中は『生徒や関わる人々に喜ばれる建物にしよう』と声を掛け合い、チーム一丸となって取り組んだ」

ことし4月からは首里城復興整備担当として、中城御殿跡地整備や公園周辺のまちづくりを担う。先日、地域住民や専門家と意見交換をした。
「かかわる方々の思いの深さを知った。丁寧に声を聞き、地域課題の解決を目指す」

丁寧な対応は取材時にも。「好きな建物」を聞くと、眉を寄せて熟考した末「ラーメンと寿司です」。「食べ物でなく、建物ですよ」と言うと顔を真っ赤にして「なぜその質問? とは思ったんですけどね」。真摯な人柄がにじんだ。

携わった建物で印象に残っている那覇高校。「関係者が多く、大変だったが出会いも多かった。前を通るといろいろな人の顔が浮かぶ」
携わった建物で印象に残っている那覇高校。「関係者が多く、大変だったが出会いも多かった。前を通るといろいろな人の顔が浮かぶ」
 

好きな建物&建築家

宮下さんに、①好きな建物②好きな建築家を聞いた。

①「沖縄美(ちゅ)ら海水族館」です。建築に携わった人たちの思いや、訪れたたくさんの人の喜び・思い出が詰まっていて、年を重ねるごとに魅力を増していく、すてきな建物です。 

②リチャード・バックミンスター・フラー(1895年~1983年)です。技術者として、持続可能な世界を考え続け、行動し続けた尊敬する建築家です。
※発明家で建築家、数学者で哲学者でもあるアメリカの偉人。三角形の構造で構成する「ジオデシック・ドーム」の考案者。「宇宙船地球号」の提唱者でもある


プロフィル
みやした・そうしん/1983年、宜野座村出身。1級建築士、建築基準適合判定資格者、構造設計1級建築士、技術士(総合技術監理部門、建設部門)。沖縄と近畿の職業能力開発大学校を卒業した後、県内の設計事務所に5年間勤務。2011年沖縄県庁に入庁。公共建築、建築検査、都市計画などを担当



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取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1851号・2021年6月25日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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