特集・企画
2021年6月25日更新
[沖縄・建築士の日 特集③]意外な分野で活躍する建築士
7月1日は建築士の日。その職能は建築業界だけでなく、さまざまな職種で生かされている。意外な分野で活躍する建築士を紹介する。※7月1日は建築士法の施行日から「建築士の日」。今号は建築士をテーマに特集を展開します。
1級建築士資格を生かすカメラマン
小玉 勝さん
アーキメディア沖縄
設計の意図酌み撮る
大きな三脚に載ったカメラ。地面に対して水平・垂直になっていることを確認し、ファインダーをのぞいてシャッターを切る。1級建築士として住宅設計を手掛けていた小玉勝さん(52)の現在の職業は、建築写真専門のカメラマンだ。「図面を見れば設計の意図が伝わってくるので、どこをどう撮ればいいかが分かる」というのが小玉さんの強み。依頼者からも「アングルなどをお任せできるのがいい」と喜ばれている。
撮影時に心掛けているのは「できるだけ写真で建物の魅力を伝えること。特に住宅は実物を見られる人が少ないですからね」と小玉さん。
魅力を最大限に引き出す工夫もする。例えば撮影の時間帯。外観なら事前に太陽の傾き方や立地条件を調べ、建物への日当たりを考えて撮る。
雨や曇りの日は延期を余儀なくされる。一方で「雲一つ無い快晴よりは、少し雲がある方が沖縄らしくて絵になる」と天候もベストな状態を待つ。
フラッシュは使わず、自然光や建物自体の照明だけで撮るのもこだわり。「光の計画も設計の一部だから」だ。
小玉さんが撮影したマンションの外観。建物の縦と横のラインがきれいに出て、天候の条件もそろった1枚
評判広がり写真に専念
10歳の誕生日、祖父から一眼レフカメラを贈られたのがきっかけで写真を始めた。
転機となったのは沖縄移住後に勤めた設計事務所。「ホームページにアップするため本格的に建築写真に向き合い始め、雑誌で撮り方を学んだ」
その後、自身で設計事務所を立ち上げ、建築写真も仕事として請け負うことにした。評判が口コミで広がり、写真に専念することに。今では年間約100件の撮影をこなす。
撮った写真は広告や建築賞への応募資料などさまざまな用途で使われ、時には全国的な建築雑誌に載ることもある。
「自分の感性で撮っているので、誰かに交代できない。健康には気を使っている」と小玉さん。「これからも写真の技術向上に努め、建築写真一本で頑張っていきたい」と力を込めた。
小玉さんが自身で設計し、撮影した一戸建て住宅。照明をつけなくても明るいことが伝わる
好きな建物&建築家
小玉さんに、①好きな建物②好きな建築家を聞いた。①旅行で訪れたスペインの建物。世界一美しいと言われる「アルハンブラ宮殿」など街並みごと歴史を感じた一方、近代的な顔も見られました。中でも建築家のサンティアゴ・カラトラバが一帯を設計した「芸術科学都市」=下写真=は、博物館やオペラハウスなど全てがダイナミックで近未来的な印象を受けました。
小玉さん撮影
②槇文彦さんです。学生時代に講演会を聞きに行ったのですが、とても上品な紳士の印象。特に東京にある複合施設「スパイラル」は、面と線の要素を繊細に組み合わせた外観のデザインが、スマートでかっこよくて、洗練されており、槇さんの人柄が建物に表れていたように思います。
プロフィル
こだま・まさる/1968年、東京都出身。1級建築士。大学院卒業後、県内外の設計事務所で勤務。2001年、沖縄に移住。2008年、アーキメディア沖縄設立
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取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1851号・2021年6月25日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。