[不動産の日]建物診断のプロ 下地鉄郎さん×補修改修のプロ 赤嶺雄一郎さん|身近な不動産 持ち家を守る|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

リノベーション

メンテ

2024年9月20日更新

[不動産の日]建物診断のプロ 下地鉄郎さん×補修改修のプロ 赤嶺雄一郎さん|身近な不動産 持ち家を守る

9月23日は全国宅地建物取引業協会連合会が定めた不動産の日。それに合わせ今号は「不動産」をテーマに特集。最も身近な不動産である「持ち家」の修繕や、不発弾から守る事業、沖縄県宅地建物取引業協会の活動などを紹介する。




赤嶺雄一郎(右)
あかみね・ゆういちろう/㈱タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士。本紙で2024年4月から「知っておきたい!補修改修のキホン」を連載
㈱タイズリフォーム098・975・7815

下地鉄郎(左) 
しもじ・てつろう/㈱クロトン代表取締役、既存住宅状況調査技術者、1級建築士、応急危険度判定士、耐震診断技術者。本紙で2023年4月から「インスペクションで解明 住まいのミステリー」を連載中
㈱クロトン098・877・9610


 

何年もたせたいか明確にし計画修繕

建築費が上がり続け、新築取得が難しい昨今。せっかく建てた持ち家を長持ちさせるにはどうしたら良いのか。本紙で補修改修の連載をする赤嶺雄一郎さんと、建物診断の連載をする下地鉄郎さんに聞いた。

 屋上はRC造の弱点! 
 早い内に防水して守る  


★県内の鉄筋コンクリート造の住宅で、多い相談や悩みは

下地 
建物に大きな亀裂が出たり、コンクリートが落ちたりなど劣化が目に見えてきたときに「あと、何年くらい住めるか」という相談が多い。

赤嶺 同感。築30年くらいの鉄筋コンクリート(RC)造のお宅で、一切メンテナンスをしておらず、爆裂や漏水が起きてから補修の依頼が来た。かなり劣化が進んでいる、と伝えると「コンクリートなのに30年でこんなに傷むの?」と言われた。長持ちさせたいなら定期的なメンテは必要不可欠、ということは本紙でも繰り返し伝えているが、まだ浸透しきってない。

下地 県内のRC造の劣化を早めている大きな原因のひとつが「屋上防水をしていない」こと。屋上は雨や直射光が直撃することから劣化しやすく、水分が躯体に侵入しやすい。いわばRC造の弱点。だからこそ屋上防水は新築のうちにやるべきだし、築古でもやっていないならすぐやってほしい。屋上防水の重要性が広まれば、極端な話だがRC造の劣化の悩みは半分以上、減ると思う!


屋上防水がされておらず、コンクリートがむき出しになっている。沖縄ではよく見る屋上だが、躯体に水分が入り込みやすく、劣化しやすい


★今の家に、コスパ良く住み続けるには

赤嶺 
やはり、防水は必須。特に屋上やテラスなど風雨や日射にさらされる部分は、早急にやった方が良い。

また「屋上防水なら10年くらい前にやったよ」と言われて確認したら、トップコート(保護材)が劣化していて触ると白い粉が付く状態だった。屋上は、塗装も劣化しやすい。トップコートだけならまだしも、その下の防水層まで傷んでしまったら、イチから防水工事をしなおさなければならない。そうなる前に、トップコートは定期的に塗り直す必要がある。ちなみに、トップコートの耐用年数は長くなるほど金額も高くなる。

下地 人は忘れっぽいため、新築の際にグレードの高い材料や工法により保護する方がコスパはよいと思う。

あと、「この家を、いつまで持たせたいか」を明快にすることも大切。10年しか住まないなら、そこまでお金をかける必要はないかもしれない。しかし、50年100年と住み続けたいなら、どこにどれだけお金を掛ける必要があるのか、修繕計画を立ててほしい=下図。





※下地さんが建物診断をしたお宅(築41年の鉄筋コンクリート造一戸建て)に提供した簡易的な修繕計画表

※20年もたせるには1年以内に屋上防水、10年以内に屋上や外壁のクラック補修と塗装のほか、配管などの部分的な交換などが必要。40年もたせるにはそれらに加え、10年以内にスラブ下や水ジミの補修、外構の修繕などが必要。その後は経過を見ながら30年内に同じような補修を行う



赤嶺 一般的な一戸建て住宅(2階建て)で、足場を組んで屋上防水や外壁塗装、ひびや爆裂の補修工事をすると、300万円くらいは掛かる。家を長持ちさせたいなら、その工事をだいたい15年スパンでやることをすすめる。

下地 予算が足りないなら、ユーチューブなどでやり方を勉強して、DIYするという手もある。

赤嶺 台風後に水洗いをして潮を落とすことも大事。わが家は築49年だが、定期メンテに加え、台風後は必ず高圧洗浄機で隅々まで水洗いしているおかげで、建物の状態は良い。洗いながら建物の状態をチェックすることで、傷んでいる部分にも早めに気づける。また、セルフケアやチェックをすることで、家に対する意識が変わる。「何年持たせたいか」も明確になってくる。

下地 自分の目で確認することはすごく重要。特に屋上は、安全に注意して定期的に上がって見てほしい。晴れているのに水がたまっている所があれば要注意。その水が徐々に染みこみ、ひびや爆裂を引き起こす恐れがある。
 



インスペクション(建物診断)とは、建築士の資格を持つ専門の技術者が第三者的な立場で住宅の状況調査をすること


 工事の規模や内容により 
 業者使い分けてコスパ◎  


★業者選びのポイント

赤嶺 
工事の規模や内容に応じて業者を使い分ける。

例えば、照明の取り換えなら既製品を設置するだけだが、防水や外壁塗装は現場で施工しなければならないため、技術が必要。また、外壁塗装などで足場を掛けたときに、窓枠のシーリング補修や水道管の交換なども一緒にやると予算の節約になる。だから総合的に手掛ける業者に依頼するとコスパが良い。

一方で、大きな会社に小さい工事をお願いすると費用がかさむ場合がある。小さな工事は地域の業者や専門業者にお願いするとムダがない。

下地 業者の出す見積もりに不安があったり、説明を受けてもよく分からない場合は、インスペクション(建物診断)を活用してほしい。業者の見積もりは工事を見据えたものだが、インスペクションは取引の利害のない第三者が調査をするため、見積もり内容の妥当性や判断基準を知るのに適している。


★建て替えか修繕か、見極めるポイント

赤嶺 
建て替えの方が予算が掛かるため、今の家に長く住み続ける方が経済的。ただ、それには定期的なメンテが欠かせない。一番いいのは、建物が傷む前に保全すること。いい状態のままもたせて、子や孫の代まで住み継げば、節税にもなり金銭面の負担を大きく抑えることができる。

下地 建物って、どんなにボロボロでも修繕できるし、修繕すれば何年でも持たせられる。なので、「何年持たせるか」を先に決めて、長持ちさせるための各工事の費用対効果を考慮する。

地震への備えも考えなければならない。1981年以前の旧耐震基準で建てられ、劣化が激しい建物は建て替えも比較検討した方が良い。


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2020号・2024年09月20日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2315

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る