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2024年3月15日更新

繰り返し出る「白い粉」|インスペクションで解明 住まいのミステリー 第12話「築47年のRC造2階建て」

文・大城佑介(インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は、壁やタイルの目地などから繰り返し吹き出す「白い粉」の原因を、インスペクション沖縄の大城佑介さんが探る。
 

 第12話「築47年のRC造2階建て」

繰り返し出る「白い粉」

 依頼内容 
鉄筋コンクリート造2階建て住宅。雨漏りなどの明らかな問題はないが、壁やタイルの目地、天井、窓枠の角から何度掃除しても白い粉が吹き出してくる。

 現場の特徴 
・築47年、鉄筋コンクリート造2階建て
・約20年前にリノベーションし、キッチンやトイレの位置を移動
・壁や天井から繰り返し白い粉が吹き出す


断面イメージ図

 

 写真①  タイルの目地から白い粉


 写真②  天井裏も真っ白


 写真③  屋上はチョーキング現象や、開口部の回りに微細なひび割れが見られた


 ま るで雪に覆われたよう

今回調査をしたのは築47年のRC造の建物で、壁、タイルの目地、天井、窓枠の角から、白い粉が繰り返し吹き出す原因をつきとめてほしいとのことでした。

調査で最初に目にしたのは、タイルの目地から噴出する白い粉=写真①。手に取ると、真っ白でさらさらしており、カビとは異なることがすぐにわかりました。

次に、天井裏の点検口を開けると、白い粉がドバっと落ちてきました。外壁に沿って走る梁(はり)が、まるで雪に覆われたかのように白い粉で覆われていたのです=写真②。

そして特に被害がひどい外壁部分を探ります。被害がひどい部分の近くには鍾乳洞のつららのようなカルシウム質の塊や、軒天井の塗装の膨らみが見られました。

次に屋上に足を運びます。防水層のチョーキング(触ると白い粉が付着する)現象があり、点検口周辺には微細なひび割れが見られました=写真③。調査の結果、このひび割れから雨水が浸入していることが分かりました。

開口部やダクト周りにひび割れが集中していたので、依頼主に聞き取りをしたところ、約20年前リノベーションを行っており、その工事でキッチンやトイレを移動し、換気扇のダクトの穴や、屋上に登るために点検口を新設したとのことでした。それらがひび割れにつながったと思われます。



 原 因は白華現象

白い粉の原因は「エフロレッセンス(白華現象)」で、建材内部に含まれる水分が表面に移動し、水分が蒸発して残ったカルシウム質の結晶が白い跡として建物のコンクリートなどの表面に現れるものです。この現象は、建物が「ここに水がたまってるよ」と教えてくれるサインのようなものです。その水分がどこから来ているのかを特定することで、建物の構造的な問題や隠れたダメージを見つけ出すことができます。

このお宅では屋上などで見られた微細なひび割れから雨水がコンクリート内に浸透。それがエフロレッセンスにつながっていることから、屋上防水層、外壁塗装面の補修をし、内部に水が浸透しないようにメンテナンスをした方がよいとお伝えしました。メンテ後は白い粉の発生はおさまってきたとのことです。


 解決策・アドバイス 
◆コンクリート内に水分を浸透させないことが1番の解決策。例えば、防水処理の改善、排水システムの修正、ひび割れや隙間の修復などが挙げられる。これらの対策を行うことで、建物の劣化を防ぎ、長期的な健康を保つことができる。






おおしろ・ゆうすけ
建築設計事務所スケルトン代表
https://www.sukeruton-sekkei-okinawa.com/


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1993号・2024年3月15日紙面から掲載

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