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住宅の劣化状態などを調査して報告する「インスペクション(建物診断)」。今回は、マンションの大規模修繕に伴う調査。インスペクション沖縄の下地鉄郎さんが調査したところ、西側に外壁タイルの浮きが集中していたそうだ。その原因とは。(文/下地鉄郎 インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)
第37話「築35年マンション 大規模修繕」
依頼内容/築35年8階建て全21世帯のマンションの大規模修繕に伴うインスペクション。外壁と屋上をメインとした調査依頼
外壁タイルを調査すると
今回は、マンション大規模修繕時における建物全体のインスペクションで、大規模修繕の工事内容として最も重要とされる外壁と屋上の調査がメイン。
屋上については新築時に防水が施されており、水たまりもなく良好であった。
一方、外壁面は9割近くがタイル張り仕上げとなっており、タイルの浮きや剥がれがないかが最も注意するべきポイントであった。 外壁塗装の前に仮設足場をかけた段階で、外壁タイル面の打診検査を行った。目視では劣化はほぼ見られないが、打診棒で全面的にたたいて確認したところ、わずかであるが部分的に浮きの反応があった。浮きの分布状況としては、遮る建物がない建物正面の西側と、周囲をアパートに囲まれた裏面の東面とでは、西面のほうが倍以上多かった。
日当たりと劣化状況のイメージ図

| 西面(建物正面) | 日を遮る建物がなく、午後の強烈な直射日光をまともに浴びる |
| 東面(裏面) | 周囲をアパートに囲まれ日陰になりやすい |
| 調査結果 | 西側は東側に比べ、倍以上の部分でタイルの浮きが確認された。また、南西側のコーナーと北西側のコーナーにはクラックが見られた |
日射による熱膨張で
中でも南西側コーナーと北西側コーナーにはクラック(ひび)があちこちに見られた。西面のほうが直射日光が当たるため、熱膨張によるコンクリート収縮が主な原因である。日中の熱膨張と夜間の収縮により、コンクリート内の応力が逃げ場を探し、隅部や端部にわずかなクラックとして現れる。その応力変位やクラックは仕上げ面のタイルに浮きやクラック、一部欠けを生じさせる。
放置すれば、そのクラックに雨水や水蒸気が侵入しコンクリートの中性化や鉄筋酸化を促してしまう。さらに劣化が進行してくると、最終的にはタイル剥がれやその下地コンクリートの崩落を招く。今回のクラックはわずかということもあり、施工会社とも相談してクラックの範囲に当初の見積りの通りである「エポキシ樹脂注入工法」を採用することとなった。
筆者の実体験から
実は、今回のインスペクションは、筆者が管理組合の理事長をしているマンションの話だ。住人が大勢いる区分所有マンションで健康的な建物状態を維持するためには、ハード面のほか管理組合の運営などのソフト面まで考える必要がある。それを踏まえ、私は数年前より修繕委員と理事長を兼任し以下を実施してきた。
- 長期修繕計画の見直し
- 管理会社変更
- 管理規約変更
- 修繕積立金の見直し
- 大規模修繕の実施
貴重な体験だったとともに、県内築古マンションの課題へのヒントにもなると思うので、公開できる範囲で、次回から「インスペクション番外編」として体験談的に執筆(4回予定)する。「管理会社任せで詳しいことは分からない」「関心はあるが大変そうなので別の住人にお願いしたい」「管理運営についてはもっと透明化する必要があるのではないか」など、県内のマンション住人で大規模修繕の時期が迫っている方々に、ぜひ読んでもらいたい。
インスペクション沖縄のサイトでは、簡易的に建物の健康状態をチェックできる。
執筆者プロフィル

しもじ・てつろう/1級建築士、(株)クロトン代表取締役。電話 098(877)9610
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」インスペクションで解明 住まいのミステリー
第2102号(2026年4月17日発行)より転載