長期修繕計画の見直し|インスペクションで解明 住まいのミステリー

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執筆者の下地鉄郎さんは先日、所有する築35年のマンションの大規模修繕工事を終えた。建物の専門家としてだけでなく、区分所有者・理事として経験したことをつづる。(文/下地鉄郎 インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

番外編「マンション大規模修繕を終えて 理事になり感じたこと①」

そろそろやらなくては

一般的にマンションは、築20年を超えるころから大規模修繕を意識する時期に入る。鉄筋コンクリート造であれば、外壁塗装、防水工事、設備配管や機器やエレベーターの更新などが主な対象となる。私が区分所有するマンションも、築30年を超えたころから外壁のひび割れや設備類の腐食などが目立つようになってきた。

「本格的に大規模修繕と向き合わなくては」と感じていた時に、マンションの理事になった。それをきっかけに定期総会の場で大規模修繕工事の修繕委員を兼ねることを提案し、承認してもらった。

これまで多くの建物のインスペクションに関わってきた。そこで行うのは、劣化状態の診断や工事内容への助言など、主に建物そのもの、いわば「ハード面」の確認である。

マンション大規模修繕も建物の工事に関することだが、今までの関わり方とは全く違っていた。そこには、複数の区分所有者がいて、それぞれに生活があり、考え方がある。建物の状態だけでなく、管理組合としてどう判断するか、どう合意形成するかという難しさが加わる。

そのため、多くのマンションでは管理会社に任せる部分が大きくなる。もちろん管理会社に委託することで、会計、点検、資料作成、総会運営など、所有者だけでは大変な作業を支えてもらえる。

一方で、大規模修繕工事のように専門性が高く、金額も大きい場面では、管理会社や専門業者などが間に入ることで、所有者側から工事内容や金額の妥当性が見えにくくなることもある。これは、どのマンションでも起こり得ることだ。だからこそ私は、大規模修繕工事を進める前に長期修繕計画について第三者的な視点でチェックする、つまり「セカンドオピニオン」が大切だと感じていた。

修繕積立金が足りない!

修繕委員として最初に取り組んだのは、長期修繕計画の見直しだった。当時の理事長とともに、まず次のことを確認した。

  • 現在の建物の劣化状態
  • これまでの修繕履歴
  • 今後予定される修繕工事
  • 現在の修繕積立金の状況

幸いこのマンションでは、管理会社を通して定期的な建物点検を実施していた。また、新築時からの修繕履歴や見積書も残されていた。これはとても大きかった。過去の記録があることで、建物がどのように維持されてきたのかをたどることができたからである。資料を確認しながら、私なりに大規模修繕工事の概算費用を想定した。

すると、ある程度予想はしていたものの、現在の修繕積立金だけでは必要な工事費に達していない可能性が見えてきた。住人としては、毎月の修繕積立金は低い方がよい。しかし建物は年数とともに確実に傷み、必要な修繕費は先送りしても減るわけではない。

そこで、全世帯に対して修繕積立金の見直しを説明することにした。そのためには、感覚的な説明ではなく、念のために根拠のある資料が必要である。委託していた管理会社に、工事費の概算を含めた最新の長期修繕計画書の再作成も依頼した。管理組合として、どのような工事が必要で、どのくらいの費用が見込まれ、今の積立金では何が不足するのかも丁寧に整理するためである。その計画書をもとに、大規模修繕工事に関する臨時総会を開いた。その時点での主な課題は、三つあった。

①修繕積立金の増額
②どの工事を優先するかを整理
③見積もりを依頼する施工会社をどう選ぶか

建物の専門家としては、必要な修繕はある程度、判断できる。しかし、理事として住民の方々に説明し、理解を得ながら工事を進めていくのは別の難しさがあった。大規模修繕は、建物だけの問題ではない。お金、資料、説明、合意形成。そのすべてを一つずつ積み上げていく作業なのだと、改めて感じた。

次回は、臨時総会での反応や、その後の管理会社変更に至るまでの経緯について紹介する。

執筆者プロフィル

しもじ・てつろう/1級建築士、(株)クロトン代表取締役。電話 098(877)9610


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」インスペクションで解明 住まいのミステリー
第2106号(2026年5月15日発行)より転載