認知症対策だけじゃない|家族信託を深掘り

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家族がもめないための「幸せ相続計画」の普及・啓蒙をする(一社)全国幸せ相続計画ネットワークの専門家が、相続で大切なキーワードを深掘りして解説。前回に引き続き、同ネットワークに加盟する行政書士法人シナジーアシストの行政書士・仲根佑亮さんが「家族信託」について説明する。(文/仲根佑亮・(一社)全国幸せ相続計画ネットワーク加盟 行政書士法人シナジーアシスト代表・行政書士)

目的は節税ではない

前回、家族信託には、財産を所有する「委託者」から財産管理を任される「受託者」、利益を受け取る「受益者」がいること。そして認知症対策に有効であることが知られていると説明しました。

今回は、家族信託の注意点と、認知症対策だけではないさまざまな活用事例を紹介します。

まず大切なのは、「家族信託は必ずしも節税対策ではない」という点です。結果として節税になる場合もありますが、目的は節税ではありません。

家族信託を組むことによって、不動産の登記名義は委託者から受託者に移ります。しかし、所得税などの課税関係は原則として信託前と変わりません。信託財産から生じた利益に対しては、基本的に受益者に所得税が課されます。そのため、所得税対策として用いられる法人化や、相続税対策になると言われた複層化信託など、節税対策とは異なる、という点を理解しておく必要があります。

家族信託の仕組み

先々まで受益者指定

次に、家族信託の活用事例を紹介します。

①【分割型】信託財産…軍用地/家族…本人・子ども3人

本人(委託者)が長男(受託者)との間で信託契約を締結。本人が元気なうちは受益者として軍用地代収入を受け取り、相続発生後の受益者を子ども3人に設定します。

この信託のメリットは、名義を長男1人にしながら、収益を複数人に分けられる点。不動産を細かく分けずとも、不公平感を生じさせないようにできます。

また、受益者を子ども世代だけでなく、孫の代以降まで決めておくことも可能です。例えば、本人が亡くなった後は長男、長女、次男の3人の子どもへ。そして、長女が亡くなった後は、その受益権を長男の子どもへ引き継ぐようにしておくことなどもできるのです。

②【整理組み換え型】信託財産…借地/家族…本人、妻、子ども2人

不動産は多いが金融資産が少ないため、相続税の納税資金が足りない状態。このようなケースは、県内で多く見られます。

まず、どんな種類(不動産、金融資産など)の財産が、どれぐらいあるのかを把握するための棚卸しをします。その上で、全財産を「将来子どもたちへ引き継ぐ財産」と「引き継ぐと重荷になってしまう財産」へと振り分けます。

「重荷になってしまう財産」になりやすいのは、昔から貸したままになっている「借地」。理由は、手放そうとしても買い手がつきにくいためです。

この事例では、借地を信託し、長男を受託者として名義を長男にします。そうすることで長男が本人に代わり借地代の見直しや借地を整理(売却)することが可能に。結果として、納税資金の確保や将来の負担軽減につなげることができます。

家族信託は、単なる認知症対策ではなく活用の幅は広がっています。次回も事例を交えながら活用法を紹介します。

(一社)全国幸せ相続計画ネットワークとは

全国の士業(税理士、司法書士、弁護士)をはじめ、相続の専門家が「相続で家族をもめさせない」「相続で優良財産を減らさない」「子や孫を将来お金で困らせない」ことを目指し、「相続計画」という新しい考え方の普及啓もう活動を行う。「親の不動産(通称:もめナビ)」サイトを監修。
https://www.momenavi.com/


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」○○を深掘り(2)
第2106号(2026年5月15日発行)より転載