マンションの大規模修繕 工事前準備→完了を振り返る|インスペクションで解明 住まいのミステリー

読了時間 約5分

執筆者の下地鉄郎さんは先日、区分所有する築35年のマンションの大規模修繕を終えた。建物の専門家としてだけでなく、区分所有者、そして理事として経験したことをつづる。最終回となる今回は、工事を行う前の準備、工事中のコミュニケーションや検査の立ち会い、工事完了までを振り返る。(文・写真/下地鉄郎 インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)

番外編「マンション大規模修繕を終えて 理事になり感じたこと⑤(最終回)」

駐車場の確保に頭悩ませ

工事の内容や施工会社が決まれば、後はお任せで進むというわけではない。多人数の住民が生活する中で行うマンションの工事であるため、各住民の理解や協力が必要となってくる。

【工事前】
工事前に最も懸念していたのが、工事用車両の駐車場所と、住民の駐車への影響だった。

マンションの近隣には貸駐車場がほとんどない。工事用に、理想としては10台分ほどをまとめて確保したかったが、なんとか確保できたのは徒歩3分ほどの場所にある数台分だった。

さらに外壁や駐車場天井の塗装に伴い、約5カ月の工期のうち、2カ月近くは工事用の足場がかかり、駐車スペースも限られてくる。その間、住民の駐車方法にも調整が必要だった。

管理会社やほかの理事と相談した上で、工事前の臨時総会で住民に事情を説明。約半数の方々に縦列駐車の協力をお願いした。日々の車の出し入れに関わる不便を伴うものだったが、快く受け入れてくれた。

その他、工事契約で取り決めていた仮設トイレや作業員の休憩所の位置なども説明した。工事中の進捗(しんちょく)は、基本的にエレベーターホールの掲示板で知らせることとし、施工会社の担当者や緊急時の連絡先も共有した。

工事中の安全と施工品質を確保するためには、住民、施工会社、管理会社の三者が、対等な関係の中でコミュニケーションを図ることが大切だ。互いに相談しやすい関係を築き、気持ちよく工事を終えたいと考えていた。

足場あるうちに確認する

【工事中】
今回の大規模修繕工事の主な内容は次の項目だった。

  • 外壁や天井面の塗装とタイルの浮き補修
  • サッシ周りのコーキングの更新
  • 屋上の防水塗装
  • エレベーターの更新
  • 給排水管の外部のサビ除去と塗装
  • 給排水管の内部の赤サビ抑止装置の設置
  • 消防設備の更新(火災報知機、避難ハッチなど)

大半のマンション大規模修繕工事と同様に、今回の工事でも建物を長く使い続けるための、外壁や天井を保護する塗装工事が大きな割合を占めた。外壁については、足場があるうちだと間近で確認できるため、理事などが自ら仕上がりの検査に立ち会うことを勧めたい。あらかじめ立ち会いの取り決めをしておけば、住民が工事内容を共有する機会にもなる。

今回、仕上がった建物を検査する工事中検査は、各足場が段階的に解体されるため計3回行った(工事前状態確認を含めると計4回)。1回目は建物の南側と西側、2回目は北側と東側、3回目は階段の吹き抜け部分だ。地上からは見えにくい部分を、足場があるうちに検査しておく必要がある。

外壁検査の方法については、目視での確認とともに打診による確認がある。見た目だけでは分からないタイルやコンクリートの浮きがないかを確かめるためだ。理事としてどこまで立ち会うかは、それぞれのマンションの体制にもよるが、今回は現場で建物の状態を直接把握することの大切さを感じた。

仕上がった建物に不具合がないか、足場解体前に検査する筆者。打診棒を使って、外壁タイルに浮きがないかを確認している

経験を住人全員で共有

【工事完了】
3回の立ち会い検査や他の工事完了状態も現場で確認できた。完成時には、事故なく終えられたことに、とにかくほっとした。安全に工事を完了していただいた施工会社や協力いただいた管理会社の皆さまには本当に感謝している。

工事完了後の総会では、工事内容の主な振り返りと、今回含めなかった細かい工事や課題なども共有し、今後も継続的な点検や修繕が必要なことを住民同士で確認した。修繕記録や今後の課題の記録に残すのはもちろん、住民全員で経験を共有することが大切だと考える。その経験は、今後住民の入れ替えがあったとしても定期的修繕や、将来の大規模修繕時に必ず活(い)きてくる。


今回を含め、5回に渡ってマンション大規模修繕の経験を書かせてもらった。内容は以下の通り(見出しをクリックすると、記事ページに移動します)

①長期修繕計画の見直し
②工事内容の決定と透明化
③臨時総会と管理会社の変更
④施工会社選定から工事請負契約まで
⑤工事準備、工事中、工事完了(今回)

あせて読みたい:【特集・9月23日は不動産の日】マンションの大規模修繕 専門家と当事者が語る、“三つの壁”とは

次回からは、インスペクションの記事を再開する。引き続き、建物の健康状態を知ることを通し、暮らしが豊かになる連載を目指しますので、よろしくお願いします。

執筆者プロフィル

しもじ・てつろう/1級建築士、(株)クロトン代表取締役。電話 098(877)9610


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」インスペクションで解明 住まいのミステリー
第2128号(2026年10月16日発行)より転載