築68年なのに状態は◎ 沖縄の木造民家、民泊や交流の場に改修|建築散策 沖縄のか・かた・かたち

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家族3代が受け継いできた1958年完成の木造住宅。Hさんは「後世まで大切に受け継いでいってほしいという父の気持ちから、民泊利用を目指しました」と話す。代々、日ごろの手入れを欠かさなかったため、建物の状態は良好。当時の面影や意匠はそのままに、快適性や機能性を高めた。(編集部/市森知)

「か・かた・かたち」とは
建築家・菊竹清訓さんが示した設計プロセス。目に見えない構想(か)が、技術(かた)を通して、形(かたち)になる。 建築や都市は生物が新陳代謝するように、古くなったところを部分的に入れ替えながら、時代に合わせて変化・更新させていく必要性を示した。


「祖父が強いこだわりを持ち完成した実家だと父から聞いています。県産のイヌマキ(チャーギ)や県外から立派な杉など材料を集め、やんばるから職人を呼び、一定期間住まわせながら建築されました」とHさんは話す。

1958年完成の木造住宅は赤瓦やイヌマキの雨端(あまはじ)の柱など琉球古民家の面影が随所に残り、Hさんは幼少期から過ごしていた。「祖父と父が代々、大切に受け継いできた木造住宅を『朽ちさせない』ためにも、紹介制の民泊活用を計画しました」と振り返る。

知人を介して知った建築会社に改修を依頼。「建物に刻まれた時間の『侘(わ)び寂(さ)び』×自然素材」をコンセプトに、築68年の木造住宅は伝統的なデザインを損なうことなく、快適性や機能性が加わり、よみがえった。

外観。赤瓦屋根や門柱にのるシーサー

外観。雨端にあるチャーギの柱など当時の面影が残る

良好な家の状態に驚き

設計・施工を行った(有)ラムハウジングの建築士・川上晃奈さんは住宅の保存状態に驚いた。「シロアリ被害や深刻な木材の腐食がほとんど見当たらず。チャーギの柱や杉の梁(はり)など構造体の状態は良好でした」。

Hさんによれば、家族が定期的に床下に潜り薬剤を散布したり、劣化が生じた木材を丹念に替えたりしていたという。築年がたっても、「住み手が日ごろから建物を手直ししていたため、新しくする部分がむしろ少なかったです」と川上さん。そして、ただ新しくするのではなく、「この家が持っているものとどう組み合わせていくかと考えながら、改修しました」とも話した。

和室から庭を見る。障子や欄間、掃き出し窓は既存のものを使い続けている

左側の掃き出し窓から日が差し込む廊下。右側の和室にかけて、徐々に陰影のグラデーションが生まれる

現行の基準に照らし合わせながら構造的な補強を施したほか、「幻の漆喰®」・「音響熟成®木材」などの自然素材と換気計画で室内環境を整えた。「室内は快適な湿度や温度、きれいな空気に保たれ、訪れるゲストの健康を守る建物になっています」。建具などはHさんが保管していたガラス板や「音響熟成®木材」の端材を使い、新しく造り付けた。

リノベ後、「音響熟成®木材」やグラスアートを手がける堀木れいこさんのステンドグラスを使い、目隠し壁を新設。視線は遮りながら、壁の一部はルーバー状となり風は抜ける

畳を敷き替えた和室のほか建物全体の床下地など見えない部分まで確認し、改修した

建物を育てていく

改修後、民泊だけに限らず、「東洋医学と健康住宅のお話し会」や「沖縄のチナー(言い伝え)」講座、ワークショップなど、多くの人が交流する拠点にもなっている。

Hさんは「当初の想定以上に大勢の人に、この建物を利用してもらえ、非常にうれしい。完成した家を見て、父も『家がよみがえったようだ』ととても喜んでいました。現在、私が建物や庭を手入れするようになって、日々のメンテナンスの大変さが身に染みて分かりました。改修を終着点とせず、日頃から『育てていく』という感覚を大切に、この建物を長く残していきたいです」と話した。

キッチン天井の一部に「カビ」発生 すぐに手直し

二つの通気層で熱・湿気を 効果的に排出

改修工事で唯一、キッチンだけ天井材を剥がし、立派な梁をデザイン的に取り込んだ。和室などほかの部屋は天井を貼ったまま、熱気と湿気を排出する設備を導入した。

建築トラブルに直面したのは施主に引き渡して、1カ月がたったころ。キッチンの天井の一部に、カビが発生していた。この原因について、川上さんは「キッチンの天井裏だけ屋根から伝わる輻射(ふくしゃ)熱の影響が他の部屋と比べて大きく、湿気や熱気を排出する機能も不足していました。そのため、カビが発生しやすい条件を整えてしまったのではないか」と分析する。

天井材(上)を剥がした立派な梁が特徴的なキッチン。隣接していた裏座をパントリーに変え、大勢で作業できる場に整えた

対応策として、当初の改修工事では一つしか設けていなかった通気層を二つにする工事を追加した。川上さんは「赤瓦屋根とキッチンの天井の間にスペースがなかったため、設備を導入せず、独自の工法を採用。湿気や熱気を外部に逃がす層と熱の伝達を抑える層を設けました」と説明する。

梁のデザイン性を損なうことなく、カビ対策を実施。追加工事後から現在まで、キッチンの天井にカビが発生することはなくなった。


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」 建築散策 沖縄のか・かた・かたち(4)
第2128号(2026年10月16日発行)より転載