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執筆者の下地鉄郎さんは先日、区分所有する築35年のマンションの大規模修繕を終えた。建物の専門家としてだけでなく、区分所有者、そして理事として経験したことをつづる。前回までの流れは、大規模修繕の施工会社を選定するにあたって管理組合と管理会社との間で考え方の違いが露呈。苦渋の決断で管理会社を変更した。その後、新たに施工会社を選定し契約に至るまでの経緯を説明する。(文・イラスト/下地鉄郎 インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)
番外編「マンション大規模修繕を終えて 理事になり感じたこと④」
透明性保つルールを追加
新しい管理会社のもとで、当時の理事長とともに改めて工事の見積もり依頼をすることになった。それにあたり、長期修繕計画書を基に、工事範囲である共用部分の工事仕様書を改めて作成した。工事仕様書の条件は絶対ではなく、使用する塗料などの材料・メーカーは、保証期間や性能が同等であれば各工事会社の判断に委ねるなどとした。
また、工事における専有部分と共用部分との明確化や工事中にトラブルがないよう、当時の理事長と管理会社とともに新築時からほぼ変わっていない「マンション管理規約」の見直しを行った。その際、任期1年間としている次の理事長に私が就任となる流れが見えてきたため、条文の中に「理事関係者が工事関係者や管理会社と工事において利害関係を持った場合は、その工事に関する審議・決定から外れることとする」との追記もお願いした。これは工事受注時の不透明な手数料やリベートの疑念を防ぐ自制の条項である。
近年、マンション工事をめぐる不透明な取引がニュースで取り上げられている。理事や修繕委員と住民との間に、工事に関する知識や経験の差がある場合ほど、意思決定の透明性を保つためのルールは大切だと感じた。

半年かけて優先順位決め
候補とする施工会社は、私・建築関係の仕事をしているもう一人の理事・管理会社のほか、マンション住民からも推薦を募り、3社に見積もり依頼をすることになった。2カ月ほどで3社分の見積書が集まった。
工事額について予測はしていたが、共用部分のすべてを工事する場合、予算が足りないことが分かった。臨時総会を開催し、工事内容の優先順位を決めても予算を超える額については再度、修繕積立金を増額する必要があることを丁寧に説明した。
工事内容の優先順位などを決める作業は理事会と臨時総会を複数回開催し、半年近くかかった。最終的に再度、修繕積立金を増額することで住民承認が得られた。増額分については、借り入れを予定している沖縄振興開発金融公庫の融資期間が20年間(固定金利)ということもあり、結果的にそこまで大きな負担とはみなされなかった。それよりも、適切な大規模修繕工事を行うことにより、マンション全体の資産価値の維持・向上につながることが住民に伝わり、工事を待ち望む雰囲気が広がっていった。
3社から2社に絞り込まれた施工会社には、必要以上の値下げ要求はせず、工事中の安全面やコミュニケーションについての方針をヒアリングした。住民には経過を掲示板でお知らせし、最終的に1社に決定。ついに請負契約を交わすこととなった。
次回は、工事中のコミュニケーション、工事進捗(しんちょく)の立ち会い、検査手順について説明する。
執筆者プロフィル

しもじ・てつろう/1級建築士、(株)クロトン代表取締役。電話 098(877)9610
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」インスペクションで解明 住まいのミステリー
第2120号(2026年8月21日発行)より転載