鉄骨造編③ 気を付けたい点と対策|構造のはなし[7]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

建築

2016年10月28日更新

鉄骨造編③ 気を付けたい点と対策|構造のはなし[7]

家づくりの代表的な構造体について、専門家が分かりやすく解説。今回は鉄骨造で気をつけたいことを挙げる。「鉄骨造の建物で多くの方が気にされるのは、①遮音性・断熱性②耐食性③揺れ④防水性の4点でしょう」と新里さん。それぞれの対処法も紹介する。

遮音・防水・耐食性に留意

断熱・音漏れは外壁材で
まずは、遮音性と断熱性についてです。鉄骨造は暑さが気になる、音が響きやすい、漏れやすいといったイメージがありますが、断熱・遮音性能の高い外壁材を使用することでいずれも解消できます。
外壁の音漏れに関しては、防音材を施すこともあります。また、内部の音の響きに関しては、使用する材料によって異なる場合があります(下写真)
●鉄骨の床梁とフローリングなどの仕上げ材の間が木下地のみ…よく響く
●鉄骨の床梁の上にALC板(用語解説参照)を使う…少し響く
●鉄骨の床梁の上にデッキプレートを張ってコンクリートを打つ…ほとんど響かない

2世帯住宅などで上下階に高い遮音性を必要とする場合は、マンションなどで採用されている厚さ13センチのコンクリート床にすると安心です。


上下階の遮音性を高めるため、上下階の間にコンクリートを打設する様子。アパートやマンションに用いられることが多い(写真はすべてシンケンハウス提供)​

サビ対策で耐久性保つ
鉄骨造の建物は、コンクリートや木、プラスチックと違い経年によって素材自体が劣化することはないので、腐食さえ防げば半永久的に使用することができます。一般的な重量鉄骨造の建築では、骨組みとなる鉄骨は外壁や内壁などの仕上げ材で覆われ、その板も厚いので、サビが問題になることはほとんどありません。
一方、外気にさらされる用途の場合は塩害なども踏まえ、各種の優れた防錆技術が適用されています。たとえば、亜鉛と鉄を混合させた溶融亜鉛メッキ鉄材や、亜鉛を含み高い防錆性能を持つ塗料を塗布する手法があります。このような技術により、鉄骨は長期の耐久性を確保しています。
サビのもう一つの原因として挙げられるのが結露(水滴が付くこと)です。対策としては、換気設備および通気加工を慎重に計画することで、だいぶ軽減されます(イメージ図参照)



揺れは安全面で有利
鉄骨構造の住宅は地震や台風の時は揺れます。鉄骨の骨組みが揺れることで、地震や強風のエネルギーを吸収しています。
地震などで揺れを受けた際、柳のように力を受け流すので、骨組みに変形などが生じる可能性は少ないです。そのため骨組みとなる柱と梁のつなぎ目の破断が起きず、一気に壊れないため安全面でも有利な点があります。ただ基本的には、重量があって揺れにくい構造の鉄筋コンクリート造に比べると、ある程度揺れを感じやすいのはしかたないと言えます。

窓まわりに防水処理
経年劣化による建物内部への雨漏りの原因は、外壁と窓まわりからの雨水浸入です。外壁や窓まわりの防水処理としては、水密性・気密性を目的に、継ぎ目や隙間などにシーリングといわれる合成ゴム製のペーストを充填します。このシーリングの耐久性は5年前後と短く、シーリングが劣化してやせ細ってしまうと、その部分から雨水が浸入し、建物内部を傷めてしまうことになります。
シーリング材の劣化を軽減する方法として、上から耐候性(変形、変色、劣化などの変質を起こしにくい性質)のある塗料を塗布することが挙げられます。耐候性のある塗膜がシーリング材を保護し、劣化スピードを遅らせる効果が期待できます(下写真)


窓まわりや外壁のつぎ目に施工されたシーリング材を保護するために、耐候性の高い塗料を塗布する様子


◆用語解説
・ALC板/壁や床、屋根材に利用される、コンクリートに発泡材などを加えて硬化させたもの(合板)。遮音性が高く、断熱性、耐火性にも優れる


次回は鉄骨造のメンテナンスです。




執 筆 者
しんざと・しょうた/1979年、うるま市出身。2004年、鉄骨造を専門に手掛ける新里総業㈱(現、シンケンハウス㈱)に入社。アフターサービス部門、営業を経て11年に代表取締役に就任した。

 

構造のはなし一覧


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1608号・2016年10月28日紙面から掲載

建築

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2138

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る