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空間デザイン心理士Ⓡで一級建築士。2児の母でもある、まえうみ・さきこさんが、空間を心理的に解析する。今回のテーマは「家を整える」。最近、「家事が重荷になってきた」「家にいても疲れる」「勝手が合わなくなってきた」と感じる人は「住まいからのサインかも。家を見直して自分仕様に整えましょう」と、まえうみさんは話します。(文・イラスト/まえうみさきこ・ielie)
エネルギー消費増える50代 住まいを心地良く整えよう
ちょっとした消耗が蓄積し、体に表れる
最近、こんなふうに感じたことはありませんか。「やりたいことはあるけど、なんとなく後回しにしてしまう」「体は元気なはずなのに、なぜかいつも疲れを感じる」「毎日の家事が、少しずつ重荷になってきた」。一つでも「分かる!」と思ったなら、それは住まいからのサインかもしれません。
50代は、仕事も家庭も「フル回転」している時期です。それに加え、親の介護が始まったり、子どもの進学や独立があったり。エネルギーの消費が増える一方で、なかなか自分自身を整える余裕がない。家に帰ってきても、なぜか休まらないと感じていたとしたら、住まいが知らず知らずのうちに「体の負担」になっている、ということは案外、多いんです。
例えば、冬の脱衣室の寒さ。毎晩お風呂に入るたびに、体がギュッと縮こまる感覚、ありませんか? それは確実に体に負担をかけています。
そして、使いにくいキッチン。毎日三度の食事を作るたびに、ちょっとした動きにくさがあったととしたら。1年あるいは10年単位で、どれだけの疲れが溜まっているのでしょうか。
また、片付けても片付けてもすっきりしない収納。探し物をするたびに消耗するエネルギーは、目には見えませんが、確実に大きく積み重なっています。
住まいは暮らしの「土台」です。その土台にぐらつきがあると、なんとなく疲れが取れない、という不具合が起きてくるのです。
「使える」と「快適」その差は大きい
住まいを整えるにはいったん、立ち止まって考えてみてください。
これからの毎日を、どんなふうに過ごしたいですか? 長年「いつかやりたい」と思ってきた手芸や絵、ガーデニングなどの趣味を本格的に楽しみたいと思っているなら、それを広げられる心地よい専用のスペースがあるといいですよね。それで毎日がどれだけ豊かになるでしょう。
あるいは、夫婦2人でゆっくりコーヒーを飲んで話せるコーナーをつくるのいいかもしれません。
ほかにも、在宅で仕事をするために集中できる自分だけの場所が欲しい、友人を気軽に招けるようなすっきりとした空間にしたい、毎朝庭で朝の光を浴びながら深呼吸したいなど。どれも「ぜいたくなこと」ではありません。暮らしを少し見直すことで、十分に手が届きます。
それなのに「まだ先でいいか」と後回しにしてしまうのは、今の住まいが「なんとか使えているから」ではありませんか? しかし「なんとか使えている」と「心地よい」の間には、大きな差があります。
気力も体力もある50代のうちに実行
住まいを見直すには、体力も気力も要ります。完成するまで、毎日考え、打ち合わせを重ね、理想の暮らしのイメージを言葉にして、たくさんの選択をしていく。
これは決して軽い作業ではありません。住まいの見直しは、予想外のことも多々起こります。以前、住まいを見直し、建て替えで3年以上かかった60代のお客さまも、「こんなに期間がかかるとは思わなかった」とおっしゃっていました。
60代、70代と年齢を重ねてくると、健康上の変化や家族の状況の変化が重なって、「やりたいこと」よりも「できること」から選ばざるを得ない場面が増えてきます。
また、ローンの審査なども、年齢が上がるにつれて条件が変わってくることもあります。
だからこそ、まだ体も気力もある50代のうちに、自分の意志で住まいを選んでほしいと思うのです。これは「焦って決める」ということではなく、余裕があるうちに、じっくり自分と向き合う時間を持つということです。
「住まいを整える」というと、大規模なリフォームや建て替えをイメージするかもしれませんが、そうとは限りません。
間取りを変えずに収納を見直すだけで、毎日の家事がぐっとラクになることがあります。照明の色を変えるだけで、家の中の居心地が変わることもあります。脱衣室に小さな暖房を取り付けるだけで、体への負担を軽減できます。
大切なのは「今の暮らしに何が足りていないか」「これからどんな暮らしをしたいか」を、自分なりに整理することです。その整理ができていれば、大きな工事が必要なときも、小さな工夫で十分なときも、適した判断ができるようになります。
住まいを整えることは、これからの人生を整えること。「家にいても何だか疲れる」「勝手が合わなくなってきた」。と思っているなら、今がそのタイミングだと、私は思います。このゴールデンウイークに「暮らし・住まい見直す」時間をつくってみてはいかがでしょうか?
キッチンの収納を見直してみる
50代からのキッチン収納のポイントは、
①肩から腰の高さによく使う物を集める
②ワンアクションで取れるようにする
③重い物は、出し入れするときに腰に負担の少ない腰高の位置に収納する
④今の暮らしに不要な物は手放して、身体と脳への負担を減らすことを最優先する

リビングの照明の色を変えてみる
温かみのある電球色などに調光できる照明に取り替えてみましょう。リモコンでワンタッチで調光できる照明だと便利です。
また、くつろぎたいときは天井の照明を消してフロアランプの光で過ごすのもオススメです。

脱衣所に暖房機を置いてみる
脱衣所に暖房機を置くと、冬場の入浴時に温かい部屋から寒い脱衣所へ移動することで起きる急激な温度変化(ヒートショック)による血圧の急激な変化を防ぐのに効果的です。
心筋梗塞や脳梗塞、浴槽内での溺死などの深刻な事故を防ぐのにも入浴前からの予備暖房は大切です。

執筆者プロフィル

まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。建築会社に20年勤務したのち、2021年6月に「ielie(イエリエ)」を設立。建築の知識やママの経験を生かして、住まいの悩みに応じたコンサルティングやインテリアコーディネートを行う。一級建築士、空間デザイン心理士®、夫、2人の子ども、猫2匹と暮らす。
ielie(イエリエ)ホームページ
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」家と心理(50)
第2104号(2026年5月1日発行)より転載