読了時間 約4分
Nさんのお宅は、自身がオーナーの9階建て共同住宅の最上階。そこで、念願だった「日本庭園を眺める暮らし」をかなえた。(編集部/東江菜穂)
有限会社 久田緑化造園(沖縄県南城市)
建築の段階から、リビングから庭が望めるよう計画を進め、足立美術館の「生の額絵」を独り占めしたようなぜいたくな住まいが完成した。Nさんは「ソファに座って庭を眺めていると心が〝無〟になる。どれだけ見ても飽きない」とほほ笑む。

施工前は白壁で普通のベランダだった
▼

メインの庭はリビングに面して設けられている。サッシが庭を額縁のように切り取る
時間や季節の移ろい、楽しむ
庭の中央には主石と副石が寄り添って鎮座し、その周りではツバキやアセビ、ウメなどが季節ごとに花を咲かせる。その背後に配された煤竹(すすたけ)加工の人工竹垣は無機質な白壁を隠し、石組みや灯籠、植栽を浮き立たせる。

奥には灯籠や蹲が鎮座する、趣深い日本庭園。白壁を茶色がかった「煤竹加工」の竹垣で隠し植栽や石などを浮き立たせている
「もう少し涼しくなったら、窓を開けて庭を楽しみます。上階だから、外からの視線が気にならない」。 時間や季節の移ろいごと楽しむ。「9階だけど朝は小鳥が遊びにきて、かわいらしい鳴き声を聞かせてくれることもあるんです」。昼は日を浴びて輝く石や緑を楽しみ、夜はライトアップをして梁(はり)に映る木々の陰影を堪能する。

足元は飛び石や砂利が敷かれている。曲線的に石や植栽が配され、奥行きを感じさせる

ライトアップすると梁に葉の影が映る
Nさんは「いくつかの造園会社を回って、納得のいく提案をしてくれた会社にお願いしました。理想の庭を造ってもらって、私の生きがいになっています」と笑顔で話した。
重量や排水に注意払い
密と隙、高低差で広がり
Nさん宅の庭を手掛けた久田緑化造園の一級造園技能士・上原光さんは「高層階での作庭ということで、重量と排水にはかなり気を使いました。大がかりな石や木を使わず、広がりや存在感を感じさせるよう『密と隙』のバランスを熟慮したほか、植物・石・点景物(灯籠や蹲(つくばい))などで高低差を付けています」。空間に強弱・高低を付けて視線をコントロールし、平たんなベランダに立体感や奥行きを生み出した。

壁中央の空いた部分には斜め格子の欄間を設け、透かして景色が見えるようにした
排水に関しては「重量の軽減と根の伸張(しんちょう)性などを考慮して人工軽石の透水層を厚めにしたほか、コンクリートスラブとの間には防水層を設けました」。

メインの庭の断面図。青い部分が人工軽石の排水層。厚めに設けている
メインの庭のほかに、玄関前のアプローチにも坪庭を造った。「こちらは〝和風モダン〟がコンセプト。エレベーターが開いたら、まず灯籠が目に入るように配置しています。背景となるコンクリート壁面には千本格子をしつらえ、後方下から暖色のライトで照らすよう計画。奥行きを演出しています。植栽に関しては、日陰でも持つものを選択しています」。


エレベーターが開くと目の前に坪庭が表れる。「まず灯籠に目が行くよう配置した」と造園を手がけた上原さん
玄関前の坪庭は「和風モダン」をテーマに作庭。灯籠や石は日本庭園風だが、背後の千本格子がモダンな雰囲気を醸す
今回は、建築工事との兼ね合いもあり納期などに制限があった。「事前に当社のヤードで材料を仮組みして収まりなどを確認してから現場に搬入、再構築しました。現場では大型クレーンで荷揚げを行うなど工事は大変でしたが、施主に喜んでいただき、苦労も吹き飛びました」と上原さんは笑顔で語った。

9階での造園のため、植栽や石などはクレーンで搬入するなど、「工事は大変だった」と上原さん
【問い合わせ】
有限会社 久田緑化造園
沖縄県南城市玉城字船越1237ー1
https://www.kudagreen.com
電話=098(988)8855
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」プロがつくる庭
第2126号(2026年10月2日発行)より転載