執筆者の下地鉄郎さんは先日、区分所有する築35年のマンションの大規模修繕を終えた。建物の専門家としてだけでなく、区分所有者、そして理事として経験したことをつづる。今回は今までの管理会社と契約を解除し、新しい管理会社に出合うまでを説明する。(文/下地鉄郎 インスペクション沖縄メンバー、既存住宅状況調査技術者)
番外編「マンション大規模修繕を終えて 理事になり感じたこと③」
見積もりの考え方に違い
マンションの大規模修繕にあたり、工事の透明性を確保するため、理事会側からは管理会社に2社以上の見積もりを依頼した。しかし出てきた見積書はどれもグループ会社のもので、内容も「一式」表示が多く、積算根拠にも不安が残った。
やむを得ず、理事長とともに見積もり依頼を受けてくれる施工会社を探すものの、うまくいかない。大手のマンション管理会社は、ある意味「元請け」的な立場にあり、それを壊してまで一管理組合の相見積もりを受けてくれる会社は見つからなかった。
そこで私たち管理組合は、今までの管理会社との契約を解除する方向で考え、準備を進めることとなった。通常、管理会社との契約を解除すると、次の管理会社が決まるまでは「自主管理方式」になる。管理費は節約される半面、理事会や住民の負担は確実に増える。日々の会計処理、各種契約の更新、エレベーターや消防設備の点検手配まで、これまで管理会社が担っていた実務を自分たちで回さなければならない。
それをなるべく避けるため、契約解除の準備を進めつつ、水面下では、工事体制の透明性について理解してもらえる別の管理会社を探すことも同時に始めた。
規約に沿って契約解除
契約解除や新しい管理会社との契約は、理事長をはじめ誰も具体的な手順が分からなかったため、関連書籍や同様の事例も調べながら慎重に進めていった。新築時に作成された古いマンション管理規約を読み直し、契約解除の手順を確認した上で、2度目の臨時総会を開き、状況を説明した。住民の中には不安を感じる方もいたが、理事長がこれまでの経緯と今後の方針を丁寧に説明し、最終的に契約解除の方針が決まった。
管理会社の担当者にその方針を伝えたところ困惑していたように見えた。しかし、これは住民が総会で決めたことであり、管理組合としての意思決定である。感情的な対立にするのではなく、これまでの管理業務への感謝を持ちながらも、今後の大規模修繕工事をどのような体制で進めるのかを優先して判断する必要があった。
地元の管理会社と契約
いくつかの管理会社のリサーチと接触を重ねた中で、私たちが重視したのは、単に管理費が安いかどうかではない。大規模修繕工事における見積もりや施工会社選定プロセスの透明性を含め、マンション規模の実情に合った支援が受けられるかどうかであった。
最終的には、こちらの方針にも共感してくれ、見積もり選定についても柔軟に対応してくれる地元の管理会社が見つかった。見つからなければ、自主管理となる可能性もあったため幸いであった。
この経験を通して感じたのは、マンション管理は「任せるもの」であると同時に、やはり「住民たちでつくっていくもの」でもあるということだ。管理会社は大切なパートナーである。しかし、最終的に建物を所有し、維持していくのは住民(区分所有者)であり、住民による管理組合である。
次回は、見積もりを依頼する施工会社の選定手順や、工事内容の確定と契約に至るまでの経緯について書いていきたい。
管理会社変更の経緯(今回の事例)






執筆者プロフィル

しもじ・てつろう/1級建築士、(株)クロトン代表取締役。電話 098(877)9610
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」インスペクションで解明 住まいのミステリー
第2115号(2026年7月17日発行)より転載