夕日味わう吹き抜け 賃貸併用の5階建て住宅|お住まい拝見

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Hさん一家は自宅兼アパートを賃貸併用の5階建て住宅に建て替え、4・5階に新居を構えた。要望の一つ「西日を浴びて夕景を楽しむ」ため、吹き抜けのリビングは西側と南側に設けられた大開口が印象的。明暗のコントラストと大らかさが際立つ。(編集部/市森知、撮影/フォトアートたかの・高野光)

Hさん宅 RC造/自由設計/家族5人

コンクリート打ち放しで吹き抜けのリビングと木仕上げ天井のダイニング・キッチン。色のトーンは落としシックな雰囲気が漂うLDKは大開口から差し込む陽光に包まれる

2層の大窓 風巡る室内

「窓からの風景だけではなく、長年収集していた美術品に囲まれ、赤みがかった夕方の陽光を全身に感じる。好きを詰め込んだ空間です」とHさんは笑う。4階建ての自宅兼アパートを、新たに5階建ての賃貸併用住宅に建て替えた。1階が駐車場、2・3階が貸室(満室)、Hさん一家は4・5階で暮らす。

木天井の玄関からLDKに足を踏み入れると、大開口越しに広がる天を仰いでしまう。「友人、親族ら大人数が一堂に集まっても圧迫感がないように」と、リビングは吹き抜け空間に。天井高さ約5.6メートルで、南側の壁一面には2層の大開口が設けられ、街並みや空模様を切り取る。西日をあえて取り込こめるよう、西側に高窓を設置。「日光浴がリラックスできるひととき」とHさん。

南側の大開口は掃き出し窓の上に、はめごろし窓が並ぶ。天井は玄関部より約3メートル高いため、リビングに入ると高低差により一段と開放的だ(山口瞬太郎建築設計事務所提供)

ダイニング・キッチンの上部に5階のフリースペースがある。北側バルコニーにつながっているため、風が家全体を縦横無尽に巡る

LDKのほか、4階は南側と東側にバルコニー、西側に主寝室と広めの水回りをまとめ、「老後を暮らしやすいようにしました」。5階は子ども室2部屋とフリースペース、北側と西側にバルコニーを設けた。風が四方のバルコニーから流れ込み、熱を逃がし空気を入れ替える。自然の力も活用しながら、居心地の良さを高めていた。

キッチン・ダイニング。大容量のパントリー(写真左手)や食器棚などを造り付け、表に物が出ず生活感を払拭。キッチンはオーダーしたほか、家具はインテリアコーディネーターとして活躍するHさんの姉と相談しながら整えた

5階の子ども室前の廊下(上写真)を進むと、フリースペース(下写真)がある。廊下の手すりの高さはやや低めに設定されているため、開口部への視線の抜け感やLDKとのつながりが高まっている

実家と「リンク」する外観

設計は友人の紹介で知り合った建築士に依頼。Hさんは「いくつもの建築模型で自宅に限らず、外観や貸室の造り、共同住宅としての設備面などついて細かくやりとりできました」と振り返る。

例えば、北側の外観はアイアンの手すりで囲われた外階段が印象的。道路と各住戸の間にあるため外の適度な距離感を生み出しつつ、「アイアンの軽やかさと相まって柔らかな表情に。隣に建つ実家とリンクするたたずまいになりました」。

外階段が印象的な北側外観。右隣にはHさんの実家が並ぶ。建築士の山口さんは「コンクリートやアイアンの素材を親世帯とリンク。アイアンの使い方や壁の位置で表情を変え、外階段を道路と各住戸の間に置くことで外部環境と付かず離れずの距離を生み出した」と説明する

またインテリアコーディネーターであるHさんの姉と話し合いながら、家具やカーテンをチョイス。賃室北側のカーテンだけは同じものを取り付け、統一感を演出した。

ここがポイント/人も街も愛着わく家

Hさん一家の自宅兼貸室を設計するにあたり、建築士・山口瞬太郎さんが目指したのは「人にも街にも愛される住まい」だ。「街路樹のクロキは丁寧に管理され、人通りも多い。施主さんの要望や共同住宅としての機能を満たした上で、世代や時代の変化に耐える共同住宅を模索しました」。

例えば「オープンな外階段」は、街と緩やかにつながるための装置だ。北側の外壁は一部を歩道側から大きく後退させ、敷地境界線との間に階段を配置した。アイアンの手すりで囲んだことで、「圧迫感を軽減し、内からは視線が抜ける。外と内を明確に分けて閉じるのではなく、街に開くことを意識しました」と山口さん。貸室の床は地面より2メートル以上高いため、「歩行者との視線の高さはズレるので、心理的な安心感は保たれる」とも。

各貸室は仕切りのないワンルームに。「インテリアなどで空間を自由にレイアウトしたり、事務所として使ったり。住まい手が柔軟な使い方ができるようになっています」

2階貸室の一室。南北に抜ける広々としたワンルームで、インテリアコーディネーターであるHさんの姉が事務所を構える。コンクリート打ち放しの空間に照明や植物などが彩りを添える

4・5階のHさん宅は要望の西日・夕景が堪能できるように、大開口を西側にも取り付けた。その際、防火性能を満たす既存の窓枠では天井上部に下がり壁が必要となるため、スチールで窓枠を製作。「性能を落とさず不要な壁はなくし、抜け感・意匠性も両立させました」。

オレンジカラーの壁が印象的な子ども室。部屋ごとに家族の「好き」が存分に反映されている

4階南側バルコニーには流し台を取り付け、バーベキューなどを楽しめるようにした

DATA

家族構成:夫妻、子ども3人
敷地面積:167.56㎡(約50.69坪)
建ぺい率:68.12%(許容70%)
容積率:183.11%(許容200%)
1階床面積:102.5㎡(約31.00坪)
2・3階:賃貸エリア
4階床面積:109.08㎡(約33.00坪)
5階床面積:46.41㎡(約14.04坪)
用途地域:第二種中高層住居専用地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:(株)山口瞬太郎建築設計事務所 山口瞬太郎、福原清子
構造:濱川構造設計
施工:(株)IMIコーポレーション
電気:(有)喜友名電気
水道:(株)設備技研
ガス:(有)具志頭給油所
キッチン:(有)MOV
カーテン・家具:インテリア フィールド ドット

お問い合わせ

(株)山口瞬太郎建築設計事務所
電話 050(3365)7595
https://yoaa.jp


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」お住まい拝見
第2102号(2026年4月17日発行)より転載