住宅ローンは「道具」 上手に使いこなそう|建築士が語る 人生を楽しむ住まい

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一級建築士の村山創さんが建築の専門知識と人生哲学を交え、より「人生を楽しむ」ことにスポットを当てて住宅論をつづります。今回は住宅ローンについて。「住宅ローンは『敵』ではなく、使いこなせば家族が望む暮らしを早く実現してくれる『道具』です」と説明します。(文・イラスト/村山創 一級建築士)

借り入れは「もろ刃の剣」

「私は、いくらまで借りられますか?」。家づくりを始めると、多くの方がまずこの答えを探します。銀行などの試算で「4千万円まで借りられます」と言われると、それが住宅予算だと思えてくる。ここに最初の落とし穴があります。

住宅ローンは、まだ手元にないお金で住まいを手に入れる仕組みです。同じ額を貯めるには何十年もかかりますが、ローンを使えば今日からその家で暮らせる。いわば「時間を前借りする力」があります。

一方で、借りた瞬間から数十年、返済を続ける生活も始まります。つまり将来の収入を先に使う仕組みでもあるのです。暮らしを早く豊かにできる一方で、将来の自由を制限する。まさに“もろ刃の剣”です。

金融機関が審査で見ているのは、年収に対する返済額の比率が基準に収まっているかどうかです。その計算には、教育費も車の買い替えも、突然の出費も入っていません。さらに固定資産税、保険、光熱費、将来の修繕費など、前回お話しした「見えない家賃の支払いも出てきます。だからこそ、返済額だけでなく、住まいにかかる費用全体で考えることが大切です。頭金に手元の全資金を投入するのも危険です。急な支出に備えるお金を残し、貯蓄を続けながら返せる金額を考えましょう。

「銀行がいくら貸してくれるか」ではなく、「いくらなら安心して暮らし続けられるか」。これが、わが家の生活防衛ラインです。

国が変動金利に警鐘

2026年3月、国土交通省は「住宅ローンの常識が変わる!?」というリーフレットを公表しました。住宅ローン利用者の約8割が変動金利を選び、35年超えの超長期ローンも増えていることに警鐘を鳴らしています。

変わるのは金利だけではありません。家族構成も働き方も収入も、35年の間には必ず変化します。今の収入が続く前提でぎりぎりの計画を立てれば、少しの変化がそのまま危機になります。

そこで、基本の考え方を一つ。「金利ではなく、返済額を決める」。

変動金利は、金利上昇のリスクを借りる側が引き受ける仕組みです。全期間固定金利は、そのリスクを金融機関に引き受けてもらう代わりに、少し高い金利を払う。この上乗せ分は、いわば保険料です。目先の返済額の低さを取るのか、35年先まで返済額が決まっている安心を取るのか。物価も金利も上がる局面では、後者の価値が以前より確実に高くなっています。変動を選ぶなら、固定との差額を使わずに積み立てておく。住宅ローン控除が終わり、余裕ができたときに期間短縮型の繰り上げ返済にまわす。金利が上がれば、その積み立てが緩衝材になります。

どちらが得だったかは、返し終わるまで分かりません。だからこそ、どちらに転んでも困らない計画が大切です。

執筆者プロフィル

むらやま・はじめ/一級建築士、創環境Design代表。フラット35適合証明技術者。設計の仕事をしながら、住宅関係の講演会や一般消費者に向けて住宅づくりの情報をSNSで発信する
【創環境Designのホームページ】https://hajimemurayama.my.canva.site/


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」人生を楽しむ住まい(6)
第2123号(2026年9月11日発行)より転載