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一級建築士の村山創さんが建築の専門知識と人生哲学を交え、より「人生を楽しむ」ことにスポットを当てて住宅論をつづります。今回は「見えない家賃」について。住居費は住宅ローンや家賃だけではありません。光熱費なども含めた「住まいの価値」を考えてみましょう。(文/村山創 一級建築士)
「住まいの燃費」で差
「あなたの住居費は、月いくらですか?」と聞かれたら、家賃やローンの金額を答える人がほとんどでしょう。でも実は、住居費の「一部」に過ぎません。
光熱費や保険料に加え、持ち家であれば固定資産税や将来の修繕費など住まいには毎月・毎年かかるお金があります。私はこれを「見えない家賃」と呼んでいます。ローンと違い、こちらには完済の日が来ません。

この見えない家賃を大きく左右するのが、住宅の性能です。断熱・気密・日射遮蔽(しゃへい)に加え、給湯やエアコンなどの設備効率など性能の違いによって、同じ広さ・同じ家族構成でも、光熱費は大きく変わります。車で例えるなら燃費です。今まで、この「住まいの燃費」は住んでみないとわかりませんでした。
しかし今は、省エネ性能ラベルで住まいの燃費を「見える化」する時代になりました。2024年4月から、新築住宅の販売・賃貸では、省エネ性能を表示する取り組みが始まっています。物件によっては、星の数や年間の目安光熱費を確認できます。今後、住まいを見るときは、このラベルを見る習慣をつけてください。
賢く建てて安く暮らす
性能が低い家は、夏の寝苦しさ、冬の底冷え、窓の結露、押し入れのカビなどに悩むことになり、健康にも直結します。睡眠の質が下がれば日中のパフォーマンスが落ち、結露を放置するとカビやダニが発生しやすくなり、アレルギー症状などにつながる可能性があります。
「快適」はぜいたくではありません。働く、学ぶ、人生を楽しむ。あなた自身に対する一番大切な「人的資本」への投資です。
「沖縄は温暖だから、断熱は要らないでしょう」という人もいますが私は建築士として、逆だと考えています。沖縄の電気代は全国と比較して高い。そして冷房を使う期間は日本一長い。つまり日射を遮り、冷房効率をアップする「金銭的リターン」が、全国で最も大きい地域なのです。
初期費用の安い家と、性能に投資した家。建築時の価格だけを比べれば、前者の方が手に入れやすいです。しかし、35年分の光熱費まで含めた「生涯住居費」で比べると、費用差は縮まり、場合によっては逆転することもあります。さらに快適性まで考えれば、その差は数字以上のものになります。
「安く建てて高く住む」のか。「賢く建てて安く暮らす」のか。生涯住居費というモノサシを一本持つだけで、選ぶべき家は変わってきます。

見えない家賃は、工夫次第で減らせます。そして浮いたお金は、旅行や趣味、家族との時間など、当連載の第1回でお話しした「人生を楽しむ」ための原資に変わります。家の価格やデザインと同じくらい、住まいの燃費に目を向けること。それが、暮らしの満足度を静かに、しかし確実に押し上げてくれるのです。
執筆者プロフィル

むらやま・はじめ/一級建築士、創環境Design代表。フラット35適合証明技術者。設計の仕事をしながら、住宅関係の講演会や一般消費者に向けて住宅づくりの情報をSNSで発信する
【創環境Designのホームページ】https://hajimemurayama.my.canva.site/
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」人生を楽しむ住まい(5)
第2119号(2026年8月14日発行)より転載