最適な工事に導く、マンションの「建物診断」|なるほど!大規模修繕の一歩

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住宅に長く住まうためには定期的な手入れが不可欠。共同住宅の修繕は一戸建て住宅と比べ、規模が大きく、設備や工種も増えるため、費用がかさむ。共同住宅の大規模修繕のポイントをタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんに解説してもらう。今回はマンションの「建物診断」について。必要な費用は診断の種類や依頼の仕方などで変わる。(文・写真・表/赤嶺雄一郎  株式会社タイズリフォーム代表取締役)


多くの分譲マンションでは、大規模修繕工事の実施を前提とした「建物診断や修繕見積書の依頼(以下、建診など)」を複数の会社から取得されると思います。しかし、依頼先や大規模修繕工事の発注を前提にしているかどうかで、建診が有償か無償か、費用の扱いが大きく変わります。

マンション管理組合が設計・監理方式で大規模修繕工事を実施する場合、有償で建築士やコンサルタントなど第三者の専門家が建診や修繕基本計画を策定。施工会社が工事を実施することが一般的です。

対して、責任施工方式などで第三者の専門家を介さず、施工業者に直接建診などを依頼する場合=表1、発注に関するマンション管理組合側の前提条件①「診断のみ」の実施、②「相見積もり」、③「特命発注」によって建診の費用の扱いが分かれます。

高額の追加工事リスクも

受注がほぼ確定している特命発注の場合、十分な経費を充当することができるため、建診などの精度が高くなる傾向にあります。

一方、失注リスクを伴う相見積もりでは無償実施できる調査は経費上の限界があるため、多くは一式に代表される丼勘定な見積もりや簡易的な診断になりがちです。さらに、そのような提案で受発注が確定し工事が始まると、高額な追加工事(追工)が発生するリスクがあります。

1・2次診断がメイン

そもそも建診などを実施する目的は建物の現在の劣化状態を正確に把握し、工事の基礎資料を得ること。その資料を基に最適な工事範囲や優先順位を判断します。

それ以外にも①実際の劣化データに基づいた修繕工事の必要性を組合員に提示することで合意形成の一助とする、②限りある修繕積立金を有効に活用する、③当初の長期修繕計画と実際の劣化状況との差異を修正し、将来のコスト負担を抑えることなどが挙げられます。

マンションの建診には1次から3次までとグレードがあり=表2、調査の目的や予算などに応じて選定されます。分譲マンションの建診はほとんどが1次・2次診断となります=写真1~3。

写真1:鉄筋を保護するアルカリ成分が残っているか調べる中性化試験

写真2:付着強度を数値化し、外壁タイル剥落の危険性を検証する付着力試験

写真3:赤外線試験。外壁で浮いている部分と健全な部分では温度差が生じる

組合事情で使い分けを

20年以上前のことですが、私がマンションの管理会社に勤務していた頃、今とは異なり大規模修繕工事の市場は非常に小さかったです。築25年以上が経過しても危機感が少ない管理組合が多く、相応の費用を要する2次診断を無償で実施。数値的根拠を示すことで工事の必要性の理解・促進や積立金の大幅改訂につなげていました。

大規模修繕が当たり前に実施されるようになった昨今では、修繕周期12~15年に達した建物は、専門技術者による外観目視を主とした1次診断のみとし、浮いたお金は修繕費に充てた方が良いと考えています。しかし、大規模修繕工事の合意形成が困難な管理組合や工事実施の数値的根拠を得たい場合は、2次診断を検討されるのも良いでしょう。

執筆者プロフィル

あかみね・ゆういちろう/株式会社タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士

問い合わせ

株式会社タイズリフォーム
電話 098(975)7815


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」なるほど!大規模修繕の一歩(6)
第2123号(2026年9月11日発行)より転載