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2017年9月29日更新

[育て世代の家づくり]「住育」視点で考える住まいの子育て環境

子どもの誕生や成長を機に家を建てる、住み替えるという家族は多い。住まいは子どもの健やかな成長と発達を育む大切な場所。だからこそ、子どもが安全で元気に過ごせ、親子のコミュニケーション、家事や子育てが楽しくできる配慮が重要だ。その工夫どころを、家族が仲良くなる「住育」視点の家づくりを手掛ける一級建築士の宇津崎せつ子さんに教えてもらった。「一番の要は、子どもに目が届く特等席のキッチン。家族が集うリビングの収納計画も、居場所づくりやお片付けを身につけるポイント」だと言う。

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顔と気配が分かる 安心感が自立促す


見える、見せるキッチン

「『お母さんが見てくれている』『すぐに答えてくれる』という安心感は、子どもの心の安定と自立につながります。お母さんが家の中で一番長く居るキッチンを『特等席』にすることで家事や子育てに余裕が生まれ、子どもに笑顔で接することができます」と宇津崎さん。子育て世代の住まいの新築、リフォームを数多く手掛け、自身も1歳半の息子を育てる中で実感していることだ。

家族の絆と子どもの健やかな成長を育み、家族みんなが家事も暮らしも楽しめる「住育」視点の家づくりで、宇津崎さんが重視するのはキッチンからのロケーション(視界)。家事をしながらも子どもの行動や様子を見守ることができるよう、リビングダイニングや隣接する空間を見渡せるのがポイントだと言う。「声掛けや会話もしやすいので、お母さんも子どもも孤立しません。視界が開けていると立っていても気持ちがいいので、家事も楽しくできます」。

自宅のキッチンは、「物を出しっぱなしにせず、パッと片付ける意識がつくから」と、フラットな対面式にした。手元が隠れないため、料理や片付けの様子を子どもに見せることができるのも利点だという。「子どもって大人のまねをするのが大好きですよね。お母さんが楽しそうに家事をしていたら、まねから始まって自然とお手伝いにつながっていきます。息子はいま、洗濯物たたみをまねっこしています」と笑う。

「見える」「見守る」「見せる」キッチンが、子どもの健やかな成長を育む。


収納で居場所をつくる

子ども部屋やリビングダイニングなど、子どもが日ごろ過ごす空間にはどんな工夫が必要なのか。

「リビングダイニングに広いスペースがあれば、子どもは自由に遊ぶことができます。また、子ども用の収納を設け、子どもと一緒に使い方のルールも作ると、お片付けやルールを守る意識も身に付けられます」

収める物は、小さいころはおむつ、おもちゃや絵本、学童期には勉強道具や学校の持ち物など成長に応じて変わる。ダイニングテーブルで学習する際も、専用の収納場所があると片付けがスムーズだ。

子ども部屋について宇津崎さんは、「私は立派な個室を与えてもらいましたが、寂しくてずっとそこには居られませんでした。子どもには家族の愛情や気配を感じることで得られる安心感、充足感が大切だと感じています」と話す。

だからこそ、子ども室を充実させるよりも、リビング以外に家族みんなで快適に使えるスペースを設けることを勧める。例えば、寝室と子ども室の間にスペースを設け、大きな本棚や机を置き、調べ物や勉強ができるようにするなど。「そうすることで、子どもが部屋に引きこもらない環境をあらかじめ作っておくことができます」。

「子どもや家族の行動は、物の位置、建具や収納を変えるだけで変わります」と宇津崎さん。

例えば、リビングで子どもがテレビばかり見るのが気になるなら、テレビ台の高さを変えてみて。「高さを70センチくらいにすると、近くで見るには上を向かなければならず、子どもは疲れるので自然とテレビから離れていきます」。

その空間で何をするか、どう使いたいのか。子どもとどう過ごしたいのか。子育ても暮らしも「やりたいこと」を明確にし、家族一人ひとりの日々の行動をよく振り返ることで、その家族に合った居心地のいい間取りや収納のあり方が見えてくる。

宇津崎さんは、「ご家族でしっかり確認し、望む暮らしと行動を主体的に把握して家づくりに臨むと、家事も子育ても楽しめる『住む人が主役』の居心地のいい家になります。住まいづくりは、その先の人生を考える過程になります」とアドバイスした。


キッチンを家族の顔が見える特等席に

ポイント①
ロケーション
死角なく部屋が見渡せる

宇津崎さん宅のキッチンは対面式で、リビングダイニングやその奥の和室まで一目で見渡せる。家事をしながら子どもに目が届くので、子どももお母さんも安心して過ごせる。
幼い子は特に、顔と顔が向き合っているとより安心感が得られるよう。宇津崎さんは、「わが家では、ダイニングテーブルで息子が座る席を、キッチンと向かい合わせになる場所にしています=上写真★部分。食事の支度やお片付けをしている間は、座ってお絵かきしたり、おしゃべりしながら待ってくれています」と工夫を話してくれた。
リビング収納(ポイント③)は、家族の行動パターンを踏まえて収納を計画し、造り付けた。壁面の一方にまとめることで、収納量を確保しながらスッキリした空間になる。

ポイント②
空間づかい
リビングに広い空きスペース

キッチンの正面、ダイニングテーブル脇には広く空いたスペースがある。そこでは長男がバイクに乗るなどダイナミックに遊ぶ。「広い空間があれば、子どもは自由な発想で遊びますよ」。




リビングにも子どもの収納

ポイント③
専用収納
片付け・お手伝いの習慣化


リビングダイニングの壁面収納の一部に、子ども専用の収納を用意=上写真○部分。現在入っているのはおむつ。宇津崎さんの「おむつ取ってくれる?」の一声で、長男は引き出しを開け、取り出したおむつを手渡した。分かりやすく、取り出しやすい専用収納が、片付けやお手伝いの習慣化につながる。


共有スペースの充実

ポイント④
こもらない備え
家族で快適に使える空間

家族の共有スペース(写真/宇津崎せつ子・設計室提供)

2階にある子ども室と寝室の間に設けた共有スペースには、大きな本棚とハンモックがあり、遊ぶ、くつろぐ、本を読むなど家族が思い思いの時間が過ごせる。「廊下を作らず、広いワンルームを仕切るようなイメージで設計しています」と宇津崎さん。吹き抜けを通して1階の声や気配も届く。

 

家事ラクのヒント


「家事室に機能的な造作収納」
キッチン脇にある家事室には、機能的な工夫がいっぱい。家族の衣類を収める造り付け収納の一部にアイロン台が収まっていて、引き出せばすぐにアイロンがけができる。上部には昇降式の洗濯ポールがあり、天気を気にせず室内干しもできる。洗濯機上部のオープン収納は、ロールスクリーンを下ろしてサッと目隠し。



「住育」視点で考える住まいの子育て環境|宇津崎せつ子さん
宇津崎せつ子さん
うつざき・せつこ/宇津崎せつ子・設計室代表。一級建築士、幸せ家族ナビゲーター。京都市を拠点に、家族が仲良くなる「住育」視点を生かした「人が主役の家づくり」を提案。新築からリフォームまで幅広く手掛ける。ホームページを通して、子育て世代の家づくりに役立つ情報も発信する。
http://madori-plan.com/
 


編集/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1656号・2017年9月29日紙面から掲載

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比嘉千賀子

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住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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