【沖縄】原状回復の分担を知ろう|気になるコト調べます![74]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

特集・企画

2022年3月25日更新

【沖縄】原状回復の分担を知ろう|気になるコト調べます![74]

アパートから引っ越しする際、トラブルになりやすいのが「原状回復」。賃貸アドバイザーや講師を務める、宮城裕さん(カセイ代表取締役)に、国のガイドラインに沿った借り主と大家の負担範囲の考え方やトラブルを避けるために確認することを聞いた。

賃貸退居時のトラブルを避けるために


 経年変化の修繕費は家賃に含まれる 

原状回復とは、不注意のほか、通常の住まい方や使い方を超えて、借り主がつけてしまった傷や汚れを復旧することで、その修復費用を借り主が負担する。一方、経年変化や通常損耗の修繕は大家の負担に。国のガイドラインに「修繕費は賃料に含まれているものとする」と示されており、修繕や古い設備の交換は次の入居者が入りやすいよう整えることで、部屋の価値を上げることにつながる。

宮城さんは、レンタカーを例に「ぶつけて傷つけた部分の修理費は発生しますが、普通に走って消耗したタイヤの修繕費がレンタル料とは別に発生する、なんてことはないですよね。原状回復も同じ考え方です」と話す。


 設備の経過年数で負担を分ける 

原状回復で最も修復件数が多い壁クロスを例にしてみよう。クロスに借り主がつけた目立つ傷や汚れがあって張り替えが必要な場合、その1面の張り替え費用を借り主が負担する=事例。それに伴い、色合わせのために張り替えるほかの面の費用は、大家の負担となる。

また、十分に認識が広まっていないのが、経過年数(設備などの耐用年数)による借り主と大家の負担割合。「借り主さんは自身が破損させた分の復旧を行い、大家さんも原状回復以上の利益を得ることがないよう合理的なバランスをとる考え方です」。破損した部分の修復でも、経年変化分を除いた費用を借り主が負担するというものだ。

一方、耐用年数を超えたものであっても、傷や汚れの修復費用は借り主の負担となる。「借り主さんには『借りているモノだから丁寧に、注意を払って使う』という善管注意義務があり、自身がつけた傷や汚れはこの義務に違反したことになります」。原状回復として本来の機能まで戻す必要があり、例えば落書きを消すための人件費、傷を修復する工事費などが借り主の負担となる。

なお、ガイドラインでは大家負担だが、特約により借り主負担とされる場合もある。「最近はトラブルを避けるため、特約に目安額も一緒に記載することが多い。最も有効な回避法は、入居前に傷や汚れの状況を両者で確認すること。出口で焦るより入り口で対策を」と宮城さんは話した。



 原状回復の借り主と大家の負担範囲 

 借り主 
故意・過失、善管注意義務違反、通常の住まい方や使い方を超えてつけた傷や汚れを復旧する。

【負担区分】
イスを引きずった跡、引っ越しの家具の出し入れでつけた傷、落書き、結露を放置してできたカビ汚れ、雨が入り込んで痛んだ畳、冷蔵庫のさびを放置してできた床のさび跡、重い物を固定するために開けた壁のねじ穴 など


 大 家 
経年変化、通常損耗の修繕。建物の価値を増大させる要素が含まれているもの。

【負担区分】
壁の画びょう跡、家具の設置による床のへこみ、家電の背面のクロスにできた黒ずみ(電気焼け)、クロスの変色 など

【特約で借り主負担になりやすいもの】
ハウスクリーニング、エアコン清掃、畳の表替え、鍵の交換




 壁クロス張り替えの負担範囲(イメージ) 

・クロス3面中1面に傷
・入居直前に張り替え済
・入居年数:2年
・クロスの耐用年数:6年
・経過年数による負担割合
 大家:約34%(6分の2)
 借り主:約66%(6分の4)

傷部分だけの張り替えではクロス本来の機能まで戻せたといえず、左1面の張り替えが必要。2年分の経年変化を考慮し、借り主負担は左1面の張り替え費用の約66%となる。左1面の残り34%と色合わせした右2面は大家負担。なお、6年以上入居していた場合、借り主は修復にかかる費用を負担する。



 補修価格の目安(2014年2月時点、税別) 
クロス張り替え     ⇨1000円/㎡~
クッションフロア張り替え⇨3000円/㎡~
フローリング張り替え  ⇨上張り 6000円/㎡~

             下地から施工 9000円/㎡~
    畳     ⇨  表替え 3500円/畳~
             新調 7000円/畳~

※現在は人件費や資材費の高騰により価格が高くなっている可能性がある。
出典:県宅地建物取引業協会「退居時の原状回復における補修負担割合解説書沖縄県ルール」


 原状回復に関する相談窓口 
・住まいの総合相談窓口 ☎098・917・2433
・消費者ホットライン  ☎188
・県宅地建物取引業協会 ☎098・861・3402
 

気になるコト調べます!一覧


取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1890号・2021年3月25日紙面から掲載

特集・企画

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2138

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る