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2021年1月22日更新

需要なくば技残らず保存の難しさ痛感|BACK TO THE タイムス住宅新聞⑧

週刊タイムス住宅新聞は創刊35周年、発行した紙面は今号で1829号に上ります。紙面づくりに関わる社員らが思い出を語る当コーナーですが、今回は、沖縄タイムス社時代にタイムス住宅新聞の編集にも携わってもらったOBに、思い出深い連載と取材について寄せてもらいました。

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需要なくば技残らず保存の難しさ痛感

2012年11月9日発行(第1404号)


手づくり赤瓦の製法を伝えた紙面

タイムス住宅新聞の編集に携わったのが約10年ほど前だった。沖縄の住宅建築を先駆的に取り上げ、あるべき姿を追求してきたからには、「原点となる沖縄の古民家を取り上げようじゃないか」と編集会議で提案した。結局は言い出しっぺの自分が担当することになり、「赤瓦の風景」のタイトルで2年以上も連載してしまった。

県内の古民家を訪ね歩くのは楽しく、気候風土に即した様式や石材の活用方法などをむしろ「学ばせてもらった」と思っている。

最も印象に残った人物といえば、唯一の手づくり赤瓦職人の故・奥原崇典さんだった。焼失する前の首里城の赤瓦を復活させたことでも知られるが、取材した時は文化財修復用の赤瓦を黙々とつくっていた。




伊計島に特徴的な屋敷内の「涼み台」は一般にあまり知られておらず、うれしい発見だった

古代の製法を残す桶巻き作りの技術について「需要がなければ技術も残らない」と嘆きつつ、「自分は死んでも首里城の瓦は残るからいいさ」と達観したように笑っていた。その首里城が焼け落ち、精魂込めた瓦がまさに瓦礫になるのを崇典さんは天国から見下ろし、落っこちんばかりに驚愕したと思う。

伝統工法による木造住宅を、沖縄の厳しい自然環境の中で維持するのは並大抵のことではない。取材しながら梁や桁の力強さ、丁寧に積んだ石垣やヒンプンの立派さを褒めると、家主さんはとても喜んでくれた。

沖縄県の古民家の保存・再生・活用を目指す調査事業にも一委員として携わった。市町村による保存活用の方法までマニュアルも作成した。しかし、家屋は個人の財産であり、所有者に保存する熱意と費用がなければ、立派な家も朽ち果てていくという現実をいくつも見てきた。

個人的には、名護から宮古島への古民家移築を提案し、施主さんに実現させてもらったのが唯一の成果だった。この件も「移築に挑戦」として連載したが、木造技術者の少なさと費用に思いを致すと、いっそう古民家保存の難しさを思い知らされることになった。



砲弾の破片で穴が開きながらも気丈に立っている立派なヒンプンは、文化財ものと思う(糸満市喜屋武)


戦後、初めて造られた外人住宅は本格的な赤瓦ぶきだったというのにも驚いた(南城市佐敷)




山城興朝|沖縄タイムスOB
奥の坂道(ブログ)
 

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1829号・2021年1月22日紙面から掲載

 

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山城興朝

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古民家鑑定士一級。2011年4月~2013年5月まで週刊タイムス住宅新聞にて『赤瓦の風景』を連載。2015年から名護市で古民家の修復に着手し、並行してうるま市からの移築にも取り組んでいる。

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