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2022年6月3日更新

[沖縄]配偶者居住権|失敗から学ぶ不動産相続③

自分が亡くなった後も、配偶者には住み慣れた住まいで穏やかに暮らしてほしいと希望する人は多い。ですが、遺言書で準備していても、相続のルールを知らなければ、かなわないことがあります。(文・ともり まゆみ)


配偶者居住権

所有権なくても家はある

妻の暮らし守るため遺言書作成

「住み慣れた家があれば暮らしていけるだろう」。相談者の夫は、自分亡き後の相談者の生活を案じていました。息子は金銭トラブルが続いており、尻拭いをしたこともあってあまり信頼できない状況。金銭的な余裕がない中で相談者の今後を守るためにと、遺言書を書くことを決意しました。

法定相続人も2人と少なく、相続する財産も特定しやすいことから、専門家に頼らず関連書籍を見ながら自分で作成。夫婦ともにこれで大丈夫! と安心していました。

しかし、いざ相続が発生すると、息子から相談者に「遺留分侵害請求」が届きました。
 
息子にも遺産相続の権利

夫の法定相続人は妻と息子の2人。民法で定められた法定相続割合は、それぞれ2分の1ずつとなります。遺産の分け方を遺言書で指定した場合でも、法定相続人には少なくとも法定相続割合の半分(今回なら2分の1の半分なので4分の1)をもらう権利があります。

つまり全遺産を妻に相続させる旨の遺言書があっても、息子には4分の1の財産をもらう権利があり、妻はそれに応じなければいけません。これを遺留分といい、遺留分を請求することを遺留分侵害請求といいます。

息子は「権利をないがしろにされた」と勘違いし請求したとのこと。相談者である妻が亡くなったら自宅の土地建物は息子に譲ると伝えても納得してもらえませんでした。

息子に所有権 妻に居住権

夫の「妻が生きている間は自宅土地に住まわせ、妻亡き後は息子に相続させる」という意向を実現するには、遺言書で「配偶者居住権」を設定しておくべきでした。息子に自宅土地建物の所有権を相続し、妻には配偶者居住権を設定する旨を遺言書に記すことで、妻は自宅に住み続ける権利を持つことができます。所有権は息子にあるので、母である相談者の相続が発生した後は息子が自由に活用することができます。

遺言書は書けば良いというものではありません。希望通りの相続を実現するには、相続に関するルールを踏まえて内容を決めていく必要があります。家族の未来を守るためにも、遺言書の作成は専門家に一度ご相談ください。

【概要・経緯】

相談者は夫と息子の3人家族。財産は自宅の土地建物がほとんどで、わずかな貯蓄と年金で生活していた。浪費家の息子は経済的に不安定で、現在は疎遠状態。夫は妻の生活を守るために自宅土地は妻に相続させ、妻が亡くなった後は息子が相続し自由にしたらいいと考え、その旨の遺言書を作成していた。



【どうなった?】

相続発生後、息子が「自分にも財産をもらう権利がある」と全財産の4分の1を現金で請求(遺留分侵害請求)。預貯金ではこれを準備することができず、また自宅土地建物を共有名義にしてもこれまでの素行から何をされるか分からないという恐怖もあったため、相談者は自宅の土地建物を売却せざるを得ない状況となった。

【どうすべきだった?】

・自分が希望する相続を息子も含めて伝える
・話すことが難しければ、誤解を与えないよう遺言書へ付記事項として思いを記す
・トラブルが想定される相続人がいる場合、事前に専門家に相談し対策を講じる


用語説明「配偶者居住権」

被相続人が所有していた自宅に配偶者が住み続けることができる権利のこと。遺言書での指定や法定相続人同士での話し合い(遺産分割協議)等で決めることができる。配偶者は自宅の所有権を持たないことから、その他の財産をより多く取得することができる。二次相続対策にも有効。



[執筆者]
友利真由美/(株)エレファントライフ・ともりまゆみ事務所代表。相続に特化した不動産専門ファイナンシャルプランナーとして各士業と連携し、もめない相続のためのカウンセリングを行う。☎098・988・8247

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1900号・2022年 6月3日紙面から掲載

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