古民家の快さ 現代風に|(有)門一級建築士事務所|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2017年2月17日更新

古民家の快さ 現代風に|(有)門一級建築士事務所

沖縄本島北部の新興住宅街にあるOさん宅。見た目はスタイリッシュな箱だが、南向きの大開口や垂れ壁といった涼を呼ぶ仕掛けで、伝統家屋の心地よさを現代風に取り入れている。

お住まい拝見

タグから記事を探す

南に開き垂れ壁で涼呼ぶ  大窓開けてリラックス

Oさん宅  RC造/自由設計/4人

庭からみた住宅。風向きを考え、幅9メートル余の大開口は南向きに。開口の外に設けた垂れ壁は外壁と一体化させたことで、スッキリとスタイリッシュな外観デザインになっている


収納でエリア分け
結婚当初から好きだった建築士の資料を集め、夫婦で家づくりの夢を膨らませていたOさん夫妻。10年目のある日、「妻から『お金がたまったから相談に行こう』と言われビックリ! ないしょで貯金してくれていたみたいで」とOさん。両親から敷地を譲りうけ、本格的に着手した。
「シンプルで住みやすく」と話す夫妻に建築士が提案したのは、古民家の心地よさを現代風に取り入れた住まいだ。
パブリックスペースは26畳の大きな箱の中を収納で仕切り、玄関、リビング、ダイニングキッチンをエリア分け。リビングの一角には琉球畳を敷いて和室スペースも設けた。「仕切りのない広い空間にしたいけど、食卓を見られるのは落ち着かない」「将来的に仏壇が入ってもいいように」との声に応えたものだが、「とにかくリビングが広くてリラックスできる。この空間は何物にもかえがたい」とOさん。幅9メートル余の大窓からは家中に風が吹き抜ける。窓の外には古民家の庇に見立てた垂れ壁があることで「雨が降っても窓を開けておいて大丈夫」。暮らしも気持ちも開放的だ。

「世界一の家」
「室内で全部済ませられる」家事動線は夫人の一押し。室内干し場はガラス張りの天窓から光が差し込むだけでなく、「ルーバー窓から風が通り天気を気にせず洗濯物が干せて乾きもいい」とOさんも使い勝手の良さに太鼓判を押す。
家づくりを振り返り「予算的な問題もあったので、まさかここまでできるとは。妻は『世界一の家』と喜んで、毎日掃除に励んでます」と笑う。
通り沿いや庭に彩りを添えるのは、Oさんが植えた花々。休日は「自分と同い年」のバイクを整備したり、釣った魚をさばいて庭でバーベキューしたり。「次はデッキをはろうかな」と夢は続く。


キッチン側から見たリビング。テレビ台の後ろが仕切りを兼ねたシューズクローク。天井が一続きにつながっていることでLDKがより広く感じられる


ダイニングキッチン。左手のカウンターを兼ねた収納がリビングからの目隠しに。空間はつながっているので風も声もよく通る


玄関。上部がリビングとつながり狭さは感じない。右に見えるのがシューズクローク


ここがポイント
光と影際立たせ心理的に涼しく

夏暑く、湿度の高い沖縄で快適に暮らすには、十分な通風換気が必要だ。建築士の金城司さんは沖縄の伝統家屋にならい、設計の際は方位を重視。「敷地にもよるが、春・夏・秋の風を取り込み、冬の北風を遮るよう極力南に開く」ことを信条としている。
Oさん宅では風を取り込むのはもちろん、室内からの眺めにも古民家のそれを意識して心理的な心地良さを演出。カギとなったのが大開口の外にあえて見せた垂れ壁だ。「昔の家は窓の外に低く抑えられた庇の先端が見え、その先に庭が見えた。その庇に見立てたのが垂れ壁だ。これにより垂れ壁が作り出す影が外の明るさや景色を際立たせると同時に、涼を感じさせる。奥行きを出し、西日を遮断する役割もある」と説明する。
そのほか「住まいとまちとの距離もできるだけ近づけられるよう意識」。プライバシーは確保しつつ、塀をあえて設置しないことで「通りの人の目が防犯にもつながっている」とOさんは話した。


玄関ホール側からみた室内。大開口の向こうに見える垂れ壁は、影を意識させ涼を感じさせるための工夫。正面の収納は仏壇スペースで、裏は家電類をおさめる収納カウンターになっている。収納が目隠し壁となりキッチンは見えないものの、西の端まで視線が抜け、奥行きと広がりを感じさせる空間に


仕切れば2部屋になる子ども部屋。窓の外には「季節の飾りつけを楽しめるスペースとして活用したい」と中庭も設けた


干し場。天窓とルーバー窓のおかげで明るく風通しも抜群。取り込んだら奥のウオークインクローゼットに収納でき便利


通りから見た外観。向かって左手の倉庫にはプロ顔負けの工具類も収納

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:360㎡(約108.9坪)
1階床面積:136.43㎡(約41.27坪)
建ぺい率:38.67%(許容50%)容積率:31.99%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設 計:門一級建築士事務所 金城司、與儀拓也
構 造:建築設計明 澤岻安正
施 工:(有)比嘉建設工業 大城敏己
電気・水道:北部設備サービス 具志堅勝
[設計・問い合わせ先]
門一級建築士事務所
098-888-2401
http://www.jo1q.com/
写真/比嘉秀明 撮影  編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1624号・2017年2月17日紙面から掲載

お住まい拝見

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
徳正美

これまでに書いた記事:91

編集者
美味しいもの大好き!楽しい時間も大好き!“大人の女性が「自分」を存分に謳歌できる”そのために役立つ紙面を皆さんと作っていきたいと思っています。

TOPへ戻る