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2015年6月26日更新

手加え育つ混構造の家|仁設計

沖縄本島南部、南城市佐敷に住む陶工のMさん(45)宅は、柱と梁を鉄筋コンクリート(RC)、小屋組みに、壁面を木で造った混構造の平屋建て。LDKと寝室のみのシンプルな間取りで、陶器作りの工房も併設。台風対策用に窓に格子を付けるなど手を加えながら、夫妻と長男(7)の3人で暮らす。

素足に木肌感じ遊ぶ

Mさん宅(家族3人 自由設計 混構造)


1階リビング。小屋組みが見える高さ約4メートルの天井で、実際の床面積より広く感じる。太鼓梁(ばり)の力強さが印象的

家族と目が合うキッチン
畑に囲まれたMさん宅は、壁面を覆う木材と赤い屋根で、赤瓦の乗った沖縄の伝統住宅のように見える。
陶工であるMさんの「家と仕事場を一緒にしたい」との要望から北側に住居、南側に工房を設けた。両所は玄関土間で仕切っているが、壁の上部を開けているため、「工房で作業していても住居にいる家族の声や足音が聞こえ、身近に感じる」とMさん。
住居の間取りはLDKと寝室のみ。普段はつなげて広々使う。「仕切りがなく掃除しやすい。天井も高いので狭さを感じない」と暮らしやすい様子。
キッチンはリビングより低くなっており、夫人は「リビングに座っている家族と目線が同じで、キッチンからでも顔を見て話がしやすい」と建築士の配慮に喜ぶ。
東側の雨端は「雨が降っても窓を開け放しておけるし、息子はキックボードや縄跳びで遊んでいます」と夫人。心地よい風が通り、長男はわざわざ雨端までアイスを持っていって食べることもあるという。

メンテナンスは家族で
4年ほど前、住んでいた実家の建て替えを機に「静かで広い工房を作りたい」と家づくりを考え始め、土地を購入。「三角屋根の上等小屋を建ててほしい」と、Mさんの幼なじみである建築士に依頼した。
「木造にしたいが、耐久性や耐震性が不安」というMさんに対し、建築士は柱と梁をRC造、壁面と小屋組みを木造にする混構造を提案。スギ材を使うとともに、強固なコンクリートを取り入れることで、Mさんの不安を解消しながら要望もかなえた。Mさんは「木のぬくもりを感じられるし、安心感もある。自分たちにはなかった考え方」と満足げ。「木の肌触りが気持ちよく、息子もはだしで走り回っています」と夫人もうれしそう。
住み始めて約2年半。メンテナンスは定期的に行い、建物の中はみつろうワックス、外壁や柱には防蟻剤を、年に一度は家族で塗っている。
竣工してからベンチや、台風対策用の窓の格子などを手作りしたMさん。「今度は子ども用の勉強机を作って、壁に取り付けようかな」と、子どもの成長に合わせて構想を膨らませる。


1階の寝室からLDKを見る。壁や床、天井と木をふんだんに使った空間が広がる。天井は寝室から正面奥の工房までつながっている


住宅(正面)の外観。屋根は鋼板だが、隣の瓦屋根の建物にもなじんでいる


玄関土間。右側は靴や本、食器などの収納を造り付けた


リビングより30センチ低いキッチン。上にはロフトがある


混構造で強度高く

快適生む工夫
「木の温かみ」を取り入れつつ建物としての強度を高め、沖縄の気候やライフスタイルの変化にも対応する住まいの工夫を見てみよう。

 ①温かみと強度 両立 

柱と梁は鉄筋コンクリート、それ以外は木の混構造に。これにより耐震性など建物の強度を高めつつ、屋根や壁など大面積で木を取り入れることができ、温かみも増した。

 ② 涼呼ぶ 雨端と空気層 

庭に面して設けた昔ながらの雨端(アマハジ)空間(写真)。室内に直射日光が差し込むのを防ぎ、多少の雨なら窓を開け放して過ごせる。屋根には空気層も設け、軒先の換気口=上=から熱を逃がすことで、断熱効果も高めた。

 ③用途で材使い分け 
家の顔となる南側壁面は木を多使しているが、水回りのある北側壁面は、湿気を考慮しコンクリートブロック(CB)を採用。サッシも、南は木、北はアルミと使い分けた。

 ④空間広く 増改築しやすく 

骨組みはラーメン構造にすることで、Mさんが希望する「広々とした工房」を実現することができた=写真。木造の壁はRCに比べ撤去が容易で、将来の増改築に対応しやすいメリットもある。

必要な物を必要な分だけ
宮里武志さんに聞く設計のポイント


Mさんから「住宅と工房は一棟に」と要望があったことから、長手方向につなぎやすく庭が広く取れ、もともとあった古民家も生かしやすいと考え、現在の配置計画になりました。
ご自身の作風にも共通していることですが、Mさんの家造りの考え方は「作りこみ過ぎずシンプルに」が基本。住居は約15坪とコンパクトですが、部屋は細かく仕切るよりも時々に応じて使いやすいように、水回りはまとめて使いやすくと、必要なものを必要な分だけ設けた結果です。
要望だった「木」を多用しつつ建物としての強度をより高めるため、鉄筋コンクリートの骨組みに木を組み合わせる混構造に。結果として四つのメリット(上①~④参照)を生み出すことができました。施工会社や職人さんたちの協力あってこそと感謝しています。

[DATA]
敷地面積:328.36㎡(約99.3坪)
1階床面積:126.47㎡(約38.3坪)
容積率:38%(許容200%) 建 ぺ い 率:33.61%(許容60%)
躯体構造:混構造(鉄筋コンクリートラーメン構造+木造)
用途地域:未指定地域
設 計:仁設計 宮里武志、積島涼子
施 工:(有)友建産業 添石良平
大 工 工 事:上地工務店 仲里清秀
電 気:(株)大幸電設 知念清明
水 道:(有)共和設備 松山豊
キ ッ チ ン:LITTAI 仲地研二

[設計・問い合わせ先]
仁設計
098-890-1108 
http://www.takeshi-miyazato.com/
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1538号・2015年6月26日紙面から掲載

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