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2015年4月24日更新

2世帯つなぐ畳間 気配伝わる安心感|(有)真玉橋設計事務所

沖縄本島南部、八重瀬町のTさん(32)宅は、周辺にサトウキビ畑が広がる静かな環境にある、平屋建ての2世帯。中央にあるタタミスペースが両世帯を緩やかにつなぐ。庭では子どもたちが走り回り、チョウを捕まえるなどして伸び伸び過ごす。

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庭で伸び伸び虫取り

Tさん宅 (家族7人 自由設計 RC造)


1階中央のタタミスペースと親世帯とのつながりを、Tさん世帯側から見る。共有するこのスペースが、両世帯を緩やかにつなぐ。庭に面した窓を開けると、縁側にいるような心地よさが感じられる。

2世帯を使い分け
Tさん宅は約180坪の敷地に、南側の庭を囲むように建つ平屋建て。東側にTさん夫妻と子ども3人の子世帯、西側に母と伯母の親世帯が暮らす。
特徴は両世帯の間にあるタタミスペースだ。隣の土間や北側の玄関とともに共用。普段は隣接する親世帯のリビングとつなげて使っている。「子どもたちがよく、母と折り紙をしたり、粘土で遊んでいる」とTさん。2週間に1回程度、家族7人で食事するなど、2家族をつなぐ場になっている。
Tさんは「当初は2階建てで完全に仕切るイメージだったけど、タタミスペースのおかげでほどよい距離感。同じ階に母がいるので子どもの世話も頼みやすい」と喜ぶ。
親世帯に来客がある時や静かに過ごしたい時には、引き戸を閉めればOK。母(56)は「1世帯にも2世帯にもなる」と上手に使い分けている。
南側のバスケットコートとアウトドアが楽しめる広い庭も印象的。どちらもTさんの昔からの憧れで要望したものだ。
長男(5)は「公園みたいで、チョウチョやトンボを捕まえて遊ぶ」と話し、庭で伸び伸び過ごす。一角には水場も設置し、Tさんが釣った魚をさばくのに重宝している。

造作家具で掃除ラク
以前も一戸建てに2世帯で暮らしていたTさん。子どもができたのを機に建て替えを試みるも、接道規定を満たさず断念。別の土地での新築を決めた。
住宅情報紙で気になった設計事務所を何件か訪問。一緒に土地を見る中で、「平屋の2世帯という他にはない提案に、意外性と距離の近い2世帯になるのではとの期待を感じた」という建築士に依頼した。
子世帯は子ども室、寝室、LDK、水回りが一直線に並ぶ。部屋の戸はいつも開けており、キッチンからは庭やタタミスペース、親世帯の様子が見える。夫人(35)は「家のどこにいても、子どもたちの声や足音が聞こえ、家族を身近に感じる」と安心しているよう。
収納はほとんど造り付け。「壁に直接取り付けられているので下部が浮き、掃除するときとってもラク」とも。洗濯機の隣に物干し用のサービスコートがあるなど、家事のしやすさも気に入っている。
2世帯がのびやかに暮らす住まいで、Tさんは「みんなでバーベキューしたり、庭にテントを張りたい」と目前に迫る夏を楽しみにしている。


1階東側にあるTさん世帯のLDK。写真中央の通路からタタミスペース、親世帯へとつながる。いつも戸は開けており光や風、家族の声がよく通る


1階の子ども室は将来、2部屋に区切れるようにした。収納が造り付けで多く設けられているため、室内はスッキリしている
 

ここがポイント
和室共有し広く近く

一級建築士の比嘉美幸さんと野里雅樹さんがTさんに提案したのは、玄関や土間、タタミスペース、庭を両世帯で共有し、その両サイドに各世帯を配置した平屋の2世帯。2階建てにして世帯を分けるとつながりが薄れる上、階段にスペースをとられがち。また仏壇があり、行事の際は親族が集まるため、和室も必要だったのが提案の理由だ。
「タタミスペースを客間として独立させるのはもったいない。親世帯のLDKとつなぐことで、普段はリビングと一体化させ、親世帯に広がりを生むよう工夫した」と説明する。
行事の時や友人らとバーベキューを楽しむ際は、玄関から土足のままタタミスペースや庭へ行き来が可能。共有スペース越しに互いの様子が垣間見えるつくりも、安心かつ居心地のいい距離感を生んでいる。
将来を見据えた配慮も随所に見られる。親世帯では車いすが必要になることも想定し、室内の段差を無くして間口を広く取ったほか、駐車場からリビングへ直接行き来できるようスロープを設置。子世帯では、子ども部屋は3方に窓を設け、将来仕切れるようになっている。
ほかにも、土間スペースは琉球石灰岩風のスタンプコンクリートで仕上げ、万一カビが生えても専用の洗剤で洗い流せるようメンテナンスを考慮。洗濯物は天候や視線を気にせず干せるよう、ガラス張りのトップライトのあるサービスコートを両世帯に設置した。


南側から見た庭。Tさんいわく「誰かが庭にいるのを見た途端、飛び出していく」ほど子どもたちお気に入りの遊び場。自転車も庭で練習し、乗れるようになったという


Tさん世帯のキッチン。コートを挟んで、タタミスペースや親世帯の様子が見える


北から見た外観。白くシンプルな形で青空に映える


1階西側の親世帯のリビング。バリアフリーで、写真右手のトイレの引き戸は車いすで行き来しやすい


1階タタミスペースは右奥のコートからも光が入り明るい

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人、母、伯母
敷地面積:594㎡(約180坪)
1階床面積:192.99㎡(約58.3坪)
建ぺい率:43.66% 容積率:35.28%
用途地域:指定なし
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:(有)真玉橋設計事務所 野里雅樹、比嘉美幸
大城達人(現場CM担当)
構 造:与儀建築工房
施 工:(株)カネヨシ工務店 他9社への分離発注
電 気:福元電気
水 道:㈲大川電工
植 栽:プランタドール 

[設計・問い合わせ先]
(有)真玉橋設計事務所
098-937-2777
http://www.madanbashi.com
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/徳正美

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1529号・2015年4月24日紙面から掲載

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