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2020年4月10日更新

コンクリートブロック+木屋根の家|カメアトリエ

[お住まい拝見|「トラストブロック」の自邸]古い集落に建つ、建築士の亀崎義仁さん(40)、さちえさん宅。夫妻が考案した補強コンクリートブロック(CB)と木組み屋根(トラス)を組み合わせた「トラストブロック」の家を訪ねた。


亀崎邸(カメハウス)南側外観。古い集落に溶け込ませるため敷地を囲わずオープンにした。手前道路をウオーキングする人も、頭を下げるほどの距離感。正面の窓は高さ2メートル、幅1・6メートル。1枚ガラスと木サッシで借景を切り取る。安全面に配慮して網戸には十字の桟を入れ、雨戸も設置
 

小さい家で大きな暮らし

亀崎さん宅
補強コンクリートブロック+木造/セミオーダー/家族5人



カメハウスの外観は、さちえさんの好きな絵本「ちいさいおうち(作・絵:バージニア・リー・バートン、訳:石井桃子、出版社:岩波書店)」=右写真=をイメージした。広い庭を見守るように立つかわいらしい家は「帰ってくるたび、おかえり!と言ってもらっているようで、日々愛着が増す」と義仁さん


小窓は目、玄関ドアは口、掃き出し窓はほっぺ。広い庭を見守るように建つ約23坪の亀崎邸。通称「カメハウス」。
外観は、さちえさん(41)の好きな絵本「ちいさいおうち」をイメージした。

亀崎夫妻はともに建築士。新築した自邸は夫妻が2016年に考案した、補強コンクリートブロックの壁と檜の屋根(トラス)から成る「トラストブロック」。 長屋型なのが特徴。
「県内で6棟手掛け、7棟目に自邸を建てることができた」とさちえさん。

カメハウスは細長い空間のど真ん中に玄関があり、ドアを開けると檜の良い香りに包まれる。
入って左側にLDK、右側に寝室やデスクスペースが配されている。
浴室とトイレ以外、壁が天井まで到達しておらず「ひとつ屋根の下」な造りが一体感を生んでいる。
さらに、水回りを中央にまとめたことで「家事効率がとても良い」とさちえさんは話す。

 


周辺の豊かな緑が土地購入の決め手となった。リビング・ダイニングはもちろん、対面式のキッチンにいても掃き出し窓に面した庭、その先の借景が眼下に広がる。子どもたちは室内や庭、縦横無尽に遊ぶ
 

庭や借景 生活の一部

3歳・6歳・8歳、わんぱく盛りの三兄弟にとって、室内外すべてが遊び場だ。寝室からリビングへ走ってきたかと思えば、掃き出し窓から庭へ駆け出す。
それをキッチンから見守るさちえさん。「庭で遊ばせながら家事ができるなんて、最高にぜいたく」

庭のある暮らしに憧れ、土地を探して3年。見つけたのが糸満市の古い集落にあった約100坪。南東には緑の稜線が望める。
「空や緑が広がり、土の香りを感じる理想通りの場所。予算オーバーだったけど、私たちの建築の師匠に『まれにみる吉地だから買いなさい』と助言され、決断した」と義仁さん。

敷地の奥に小さな家を建て、景色が最もよく見える場所にLDKを配置。中でも眺めの良い南側のダイニングは、1枚ガラスの木製片引戸で絵画のように借景を切り取る。
 
昼は庭づくりに精を出し、夜はそこでたき火をしながら焼き芋やお湯割り片手にまったり過ごす。「5人家族の家にしては十分な広さでないけれど、窓には大きな景色が広がり、庭からは四季の移ろいを感じられる」と義仁さん。
さちえさんは「庇などは自分たちで作る。シンプルな平屋にしたのは、住みながら育んでいきたいから」と笑顔で話す。
小さな家で大きな暮らしを楽しんでいる。




キッチン内側。冷蔵庫は写真奥の壁の中に隠れている。洗濯機や冷蔵庫など大きな家電が表に出ていないので、スッキリしている


キッチン背面には幅6メートルの大収納がある


キッチンから洗濯機スペース、洗面室と直線状に並ぶ


ここがポイント
建物の幅固定し「分かりやすく」

「トラストブロック」は、統一サイズのトラスとコンクリートブロックを用いるセミオーダー建築システム。「2012年に私たちが行った持ち家に関するアンケートから、施主は家造りに『分かりやすさ』を望んでいることを知った。そこで、同じサイズのトラスを用いて建物の幅(短手方向)を4・96㍍に限定することで土地選びや設計、施工の各段階でわかりやすさを実現した。コスト合理化にもつながっている」と説明する。
さらに「部材は工場で加工するので、現場の作業を簡略化・省力化でき工期が短縮できる。廃材が少ないので環境に優しい」と話す。

そして、「沖縄の住まいで最も重要なのは屋根。太陽高度の高い地域は圧倒的に建物の頭部分に直射日光を受けるので、快適な室内環境を確保するためにも良い帽子をかぶせる必要がある」と話す。檜屋根を選んだのは「耐久性が高く、香りもいい。ダニの繁殖を抑えられ、アレルギーのリスクも低減できる健康的な材料だから」と説明。
 
自邸の設計は、さちえさんが主になった。義仁さんは「設計に関しては施主に徹した。庭とつながり、景色を生かす家にしてほしいと要望した」。
カメハウスが最も大事にしている食事の場(ダイニング)は、景色が一番良い場所に配置。もちろんキッチンやリビングからも、広い庭とその先の稜線が望める。
玄関の正面や廊下の先には窓を設け、集落の古い石垣を切り取る。日常の片隅にも自然や地域を取り込んだ。さちえさんは「突き当たりに窓を設けることで、家を広く感じさせる」効果も狙った。

コンパクトな家を機能的に使うべく、「個室は設けずに子どもたちの居場所をつくった」。細長い家に合わせて細長い2段ベッドを造り、その下にデスクスペースを設けた。

 


北側の寝室&デスクスペース。ロフトは子どもたちのベッドを兼ねる。その下に勉強机を置いている。「人が集まると子どもたちはここで遊び、大人は南側のリビングで過ごす。南北に細長い造りは、よく人が集まるわが家に合っている」と話す


玄関の正面の開口部は集落に残る古い石垣を切り取る。日々の暮らしのそばに「地域」がある

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[DATA]
家族構成:夫婦+子ども3人
敷地面積:326.64平方メートル(約98.8坪)
1階床面積:78.57平方メートル(約23.76坪)
建ぺい率:24.05%(許容40%)
容積率:24.05% (許容80%)
用途地域:第一種低層住居専用
躯体構造:補強CB造+一部木造
設計:カメアトリエ 亀崎さちえ・義仁
構造:前田建築設計事務所 前田耕司
施工:(株)尚建 新垣維浩
電気:嶺井電気商会 嶺井建伸
水道:(株)創水 前田二郎
ガス:沖縄協同ガス(株)前田淳
大工:High Times 杉浦俊一郎
キッチン:リッタイメタルワークス 仲地研二



[問い合わせ先]
カメアトリエ
098-836-7221
http://www.cameatelier.com


撮影/比嘉秀明 取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1788号・2020年4月10日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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