企業・ひとの取り組み
2016年4月1日更新
長く使え 絵になる作品を|「ゆらりら工房」
木工作家として活動し17年。ことし、木工芸部門で沖展賞を受賞した金城久美子さん(58)。受賞作「空駆ける天馬」と題したベンチは、ソウシジュとクスノキで製作されており、背もたれにデザインされた羽が印象的だ。
木の手づくり「ゆらりら工房」
主宰 金城久美子さん
木工芸で沖展賞を受賞
沖展賞のベンチは、背もたれが羽になっているんですね。
羽って飛躍のイメージがあるでしょ。9月に2度目の個展を控え、これまで以上に頑張りたいとの思いを込めました。
作品をご覧になった方からは「もたれて大丈夫?」と聞かれますが、安全性は折り紙つき。使ってもらわなければ良さは伝わりませんからね。
作品作りのこだわりは?
実用的で絵になること。手づくりなので少し値は張りますが、使い込むうちに木肌が飴色になって味わいも愛着も増すし、良い物を使うと気持ちも豊かになる。だから、一度使っていただいた方から次の注文をいただくと、本当に幸せな気持ちになりますね。
合板と違い無垢の一枚板を使っているため、傷ついてもカンナ一つで新品同様によみがえるのも木工の良さ。お子さんやお孫さんの代まで、長く使っていただきたいですね。
木工芸は40歳で始めたとか。
工房を併設する叔父を手伝ったのがきっかけ。アクセサリーを作ったところ女性客にうけて、鹿児島の展示会に呼んでいただいたこともありました。最近は重箱やジュエリーボックスといった箱物、額縁や手鏡などのフレーム類が多いですね。
普段は、リュウキュウマツやセンダン、ソウシジュなどの県産木を組み合わせる「寄せ木」や木を埋め込む「象嵌」で作品をつくります。手は掛かりますが、材同士が引き立てあう組み合わせの妙が、魅力になるんです。
展示会への意気込みを一言。
小物だけでなく、使い勝手にこだわった家具類にも力を入れようと思っています
受賞作、3日まで沖展会場で
工房2階にカフェギャラリーも
沖展賞を受賞した金城さんの作品「空駆ける天馬」(写真)。ソウシジュの木目を生かした背もたれの羽が印象的だ。4月3日(日)まで浦添市民体育館で展示中。
また沖縄市にある工房の2階はカフェギャラリーになっており、そこでも渡久地政幸氏と金城さんの作品に触れることができる(下写真)。クロキやクスノキ、イジュ、アカギなどがライン状にあしらわれたフタを開けると、四つのマスが2段重ねになっており、器代わりにもなる「おもてなし重箱」(写真)はじめ、手鏡、箸置きなど。どれも使い勝手が良く、木のぬくもりが伝わってくる。
きんじょう・くみこ
1957年沖縄市生まれ。97年、叔父で木工作家の渡久地政幸氏を手伝ったのを機に木工に携わる。2004年、ゆらりら工房を設立。その後、県内外で展示会を開く。06年に県工芸公募展で奨励賞。13年、沖縄県工芸士に認定される。14年に沖展奨励賞、ことし沖展賞受賞。
木の手づくり「ゆらりら工房」
沖縄県沖縄市上地2-18-16
098-932-3774
取 材/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1578号・2016年4月1日紙面から掲載