【座談会】どうする?親の介護と住まい 沖縄で働く住まい・暮らしの女性プロ3人が、考えたこと

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親が高齢になり、介護が必要になったときの住まいをどう考えていますか? 今の家で介護ができるのか、バリアフリー改修をするべきか、施設を頼るか。沖縄で働く住まい・暮らしの女性プロ3人が、親の尊厳や子(自分)の生活も守る住まいについて、経験を交えて語り合いました。(編集部/東江菜穂、撮影/東川平綱木)

川端ゆかりさん(とまとハウジング代表)、前森章子さん(株式会社くらしVIS代表)、根原典枝さん(株式会社暮らし方ラボ代表)

座談会の参加者。左から川端さん、前森さん、根原さん=2026年7月15日、北中城村

介護と住まいの選択

川端 母は一人暮らしをしていたのですが、少しずつ認知症の症状が見られるようになって。その矢先、軽い脳梗塞で倒れたので、介護付き有料老人ホームを頼る選択をしました。私は仕事が忙しいので介護はプロにお任せし、ガンガン働いて費用を負担する。それも一つの愛だと思っています。

母は当初、「閉じ込められる」とネガティブなイメージがあったようですが、再び倒れたときに、「一人でいる方が不安」という意識に変わったみたい。それぞれの正解があると思いますが私はプロに任せたことで、母に優しくなれました。

川端さん/施設を頼る選択 私は働いて支える

かわばた・ゆかり/浦添市出身。那覇空港地上職・地元情報誌編集・建設会社不動産部勤務を経て1999年(有)とまとハウジング設立。趣味は猫とお酒と読書。対談の日に着たのは大好きな藤井風様のTシャツ。宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、競売不動産取扱主任者、任意売却不動産コーディネーター

根原 うちの実家は、「維持」を選びました。母は元気ですが、父は緑内障が進行してほとんど目が見えません。心配だったので、実家を2世帯住宅へ建て替えて同居しようと図面まで引いてもらっていました。ですが最終的には、父が体で覚えている今の住まいの方が、自立した暮らしのためには良いだろうと判断しました。今も父は毎日2時間かけて家の掃除をし、窓のサッシまでピカピカに拭いています。

母はミニマリストで、すごく片付け上手なんです。「物の定位置」がすべて決まっていることも、父にとって暮らしやすいのだと思います。

掃除をこなす根原さんの父/見えなくても体で覚えたわが家

根原さんの実家は、目の見えない父親が体で覚えている住まいの「維持」を選択。今も毎日2時間かけて、すみずみまで掃除をしているそう

前森 私は建築と福祉の視点から、リフォームの提案をしています。社会福祉士の資格を取ったのは、介護保険を使って和室を寝室にする改修工事に携わったのがきっかけです。暗闇での転倒を防ぐため、部屋の真ん中でひもを引っ張る照明だったのを、出入り口壁にスイッチを増設する提案をしました。しかし補助の対象外だったんです。手すりを1本減らせば予算内でできる工事なのに…と歯がゆい思いをしました。本当に必要な提案をできるようになりたくて社会福祉士の資格を取得しました。

根原 住む人の尊厳を守りながら、安全で豊かな暮らしを実現することが大切だと思うんです。

以前、娘さんからの依頼で、認知症のお母さま宅の片付けサポートをさせていただきました。家の中は物があふれ、ホコリを被っている物ですら「毎日使っている」とおっしゃって、捨てられない状態でした。

そこで、お母さまが出かけている間に「しれっと片付け」を決行しました。散在していたのは、お母さまが大切にしていた物たち。それを目の前で切り捨ててしまうと自尊心が傷つきます。100袋近いゴミが出ましたが、本当に不要な2、3袋だけを自宅に残し、あとは直接、処理場にもっていったりして、捨てたことを見せないようにしました。帰宅したお母さまは「キレイになったね」と素直に喜んで、なくなった物には一切、言及されませんでした。 

根原さん/自立した暮らしや尊厳守る「片付け」

ねはら・のりえ/うるま市出身。イギリス留学を経てブライダル業界に就職。片付けられない生活が原因で仕事の効率に悩む。結婚・出産を経て片付けの重要性に気づき、2010 年に片付けで悩む女性をサポートする「㈱暮らし方ラボ」を設立。24年「片づけられるようになるために私がやったこと(幻冬舎)」を出版

前向きになれる空間とは

前森 印象的だったのが、娘さんから「高齢の両親が安全に暮らせるように」とのご相談で、92歳のお父さまと88歳のお母さまが暮らす家の水回りリフォームを手掛けた事例です。お母さまは「まだ使えるから、変えなくていい」とおっしゃっていましたが、段差や老朽化など不安がありました。そこで、使い勝手が変わらないように似た設備や、なじみのある色合いの内装を提案したんです。

お引き渡しの日、お母さまは「家をきれいにしてくれたから私も」とステキな服でお化粧して出迎えてくださり、お父さまも「補聴器を買おうかな」と笑っていらっしゃいました。住まいが整うと、何歳でも人は前向きになれる。親を思うご家族やご夫婦の笑顔に胸が熱くなりました。

川端 壁紙を変えるだけでも気持ちが変わりますよね。母が入所している施設は白壁で清潔感はあるのですが、私的には少し味気なく感じていました。「費用は負担する」「原状回復できるようにする」という約束で壁紙を変えました=下写真。落ち着いたグレーを基調に、大胆な花の壁紙も合わせたら、母は「ホテルみたい!」と大喜び。人に自慢したりして、施設を「自分の居場所」と感じるようになったみたいです。

川端さん母の居室/壁紙を大胆チェンジ

川端さんの母親が入居している部屋の壁紙をチェンジ。「ホテルみたい」と喜んでいるそう

前森 元気なうちに住まいの不安を解消しておくことも、これからの暮らしを豊かにする第一歩だと思います。根原さんと一緒に手がけた平良さん宅=下記詳細=は、「足腰が不自由になったときのことを考えて住まいを整えたい」という要望でした。そこで、大がかりな工事はせず、安心して過ごせるよう改修を提案しました。玄関から水回りまでの動線を見直し、日々の移動もスムーズに行えるようにしたほか、生活変化にも柔軟に対応できる住まいに整えました。

根原 玄関外にスロープを付けたいという要望もありましたが、高額になり、駐車場をつぶすことになる。現在、平良さん夫婦は歩けるので、もう少し先にしましょうと提案しました。時間的余裕があれば、予算と相談しながら計画的に改修できる。当人のペースで環境を整えるのが現実的なアプローチだと思います。

前森さん/これからの暮らし、元気なうちに整える

まえもり・しょうこ/那覇市出身。インテリアコーディネーター、二級建築士の資格を生かし、リフォームを手掛ける。2012年にはソムリエである夫と、ワイン販売やインテリアコーディネートなどを行う(株)クラシコを設立。22年に社会福祉士の資格を取得し、年を重ねても安全に長く暮らせる住まいづくりに力を入れている

前森さんがバリアフリー改修、根原さんが片付けサポート/平良さん宅

依頼主は70代の平良夫妻。「車椅子の親族がわが家に来たとき、かなり動きづらそうだった。いずれ私たちが車椅子になったときにも苦労する。自分で判断できるうちに住環境を整えておこうと思った」と話し、前森さんにバリアフリー改修を、根原さんに片付けを依頼した。

開き戸を引き戸にしたり、間口を広げたり、大がかりな工事をせずに暮らしやすさと安全性を追求。スムーズで快適な生活環境を実現した。本や服など思い切って処分した。「紙の本は愛着があったけど4分の1くらいに減らしたことでスッキリした。着物も大切にしまっていたがシミなどができていたため、大切な1着だけ残して処分した。山積みになっていた来客用の布団セットも捨てたことで、物置化していた2階の個室が使えるようになった」と喜んだ。

玄関は、靴箱に手すりの機能を

前森さんと根原さんが住環境を整えるサポートをした平良さん宅。天井まであった靴箱を撤去し、手すり替わりにもなる頑丈で低い引き戸タイプの靴箱を設置。ダイニングへの動線は壁を一部撤去して20センチほど間口を広げた。体をしっかり支える安全性を確保しつつ、絵画や観葉植物を飾り、彩りも楽しめる玄関になった

脱衣室の扉は、壁の外側にレールを取り付ける「アウトセット引き戸」に変更し、間口を広げた。開き戸の時は扉で隠れてしまっていた壁には横手すりを新設。段差があった浴室入り口の両側には縦手すりを設置し、安全に移動できるよう配慮した

大量にあった本も処分。必要な本だけをテレビ下に収納。すっきりして見やすくなった

暮らしの中で使う頻度の高い文具や薬、血圧計や書類などはリビングに種類ごとに収納している。一目でどこになにがあるか分かる


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」住まい・暮らしのプロが座談会 それぞれの選択
第2119号(2026年8月14日発行)より転載