「一人の善意」でなく地域の仕組みが必要|住まいでつながる未来の安心 共助で支える、高齢社会の賃貸経営

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沖縄県内最大規模の賃貸物件管理戸数を抱える中部興産のグループ会社・興産アメニティは、高齢者の物件探しをサポートする「R65不動産沖縄」事業を行っている。同事業を担当する久田尚志さんが県内の現状や課題について執筆する。(文/久田尚志 興産アメニティ株式会社「R65不動産沖縄」担当)

「放置」が経営に影響

「2階の方を追い出してもらえないだろうか」。大家から言われたことがあります。父親の代から所得の少ない方を受け入れてこられた物件を、息子が引き継いだアパートでした。

そもそも、その日に私が訪問したのは、「2階に長くお住まいの高齢者がいて心配だから、見守り機器をつけられないだろうか」とアパートの管理会社を通じ、依頼があったからでした。ところが、「高齢の方の住まい探しをお手伝いしています」と、大家に会社の取り組みを伝えた途端、表情が変わりました。「これまで散々受け入れてきた。それなのに、また受け入れないといけないのか」。住まいに困っている方を受け入れるたびに、「万が一、部屋で何かあったら」と不安が増す。とても疲れた様子でした。結局その日は、見守りサービスの話も前へ進みませんでした。導入費用を大家が持つのか、入居者が持つのか。どちらも難しく、話は止まってしまいました。

管理会社は物件の管理を担っていますが、入居者の生活上の課題まで、当然に支援する立場にあるわけではありません。郵便物がたまる、同じ話を繰り返す、台風でも鉢植えが出たまま。何かおかしいと感じても、どこに言えばいいのか分からないまま、やがて家賃の支払いが遅れ始めます。滞納が続けば、その入居者が次の物件を探す際、家賃保証会社の審査などで不利になる可能性があります。

大家としては、行き先のない方に退去をお願いすることになり、その後は空室が生まれ、原状回復の費用がかかり、募集のやり直しです。誰も得をしません。早い段階で福祉につながれば、生活支援が入り、暮らしは立て直せます。入居は続き、入れ替えの費用も生まれない。気づいた時点で相談できるかどうか。これは、善意のではなく、経営の問題なのです。

問題が起きてからではなく、元気なうちに準備を

居住支援協議会とは

2026年8月12日、那覇市居住支援協議会の設立に向けた準備会に参加しました。居住支援協議会とは、自治体、不動産関係団体、居住支援団体などが連携し、住宅を借りることが難しい方と、民間賃貸住宅の賃貸人の双方を支えるための仕組みです。一つのセクターだけでは解決できない問題を、行政、不動産、福祉、地域の関係者が一緒に考える。簡単に言えば、「家を借りにくい人」と「貸したいけれど不安な大家」を、地域で支えるチームです。

会で印象に残ったのは、不動産業者から出た「相談窓口を一本化してほしい」という声。また、福祉や行政の方々からは「不動産の現場をもっと知りたい」「顔を合わせる場がほしい」という声がありました。住まいは、福祉だけでも、不動産だけでも解決できません。だからこそ、地域の中に「困ったとき相談できる、顔の見える相手」が必要なのだと思います。見守りの費用を誰が負担するのか。あの日止まってしまった話も、こうした場で議論されるべきことだと考えています。

このような場ができることで行政に貸す側の声を届けられます。福祉や行政の方に、大家や管理会社が何に困っているのかを知ってもらうことができます。住まいを守るために必要なのは、誰か一人の善意ではなく、支え合える地域の仕組みだと思います。

執筆者プロフィル

くだなおし・興産アメニティ「R65不動産沖縄」担当。

問い合わせ

電話 098(882)1717 
https://r65.kosanamenity.com/


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」住まいでつながる未来の安心 共助で支える、高齢社会の賃貸経営(12)
第2121号(2026年8月28日発行)より転載