考えるなら、夫婦2人の今! 「1人」になっても無理なく暮らせる工夫|家と心理

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空間デザイン心理士Ⓡで一級建築士。2児の母でもある、まえうみ・さきこさんが、空間を心理的に解析する。今回は、子どもが巣立ち夫婦2人になった後の住まいを考えよう、という提案です。1人になっても無理なく安心して暮らせる工夫を紹介します。(文・イラスト/まえうみさきこ・ielie)

残された側への「優しい贈り物」にするために

長く連れ添った夫婦でも、最期のときまで2人そろって、というわけにはいかないものです。どちらかが先に逝き、どちらかがしばらく1人で暮らす。順番は違えど、多くの家庭にいつか訪れる時間です。

この「1人になったとき」のことを、2人とも元気で、まだ笑って話せるうちに少し考えておくことは、残される方への優しい『贈り物』になると、私は思うのです。

1人には広過ぎる「家族前提」の家

まず、住まいのことから。今の住まいは子どもたちがいた4人家族や、夫婦2人を前提に建てられていませんか? 2階建てで、人数分の部屋数があって、庭や複数台分の駐車場があって。子どもたちが巣立っても2人で暮らすには、まだ大丈夫だったかもしれません。

でも、1人になったとき、その家は広過ぎたり、管理が大変だったり、負担を感じる空間に変わることがあります。2階の掃除、庭の手入れ、メンテナンスや修繕の判断。これまで2人で分担していたことが、全て自分1人の肩にのしかかってきます。体力も気力も落ちてくる時期に、です。

だからこそ「どちらか1人になっても、無理なく回る家かどうか」をチェックしておきましょう。1人での生活や管理に不安があるようなら、リフォームや減築、生活動線の変更など対策しましょう。

一方だけが知るトリセツを共有

通帳の場所、保険のこと、近所や親戚の連絡先、家の設備の使い方。こうした情報が夫婦の一方の頭にだけ入っている、という家庭は、実はとても多いです。その人がいなくなった瞬間、残された方が、わが家の暮らしの「トリセツ=取扱説明書」を失ってしまいます。

悲しみの中で、どこに何があるのかも分からず途方に暮れる…。連れ合いがこうした事態になることは、なんとか避けてあげたい。

そのためにも、大事な書類の保管場所、加入している保険、いざというときの連絡先を、1枚の紙にでも書き出して、2人で共有しておきましょう。これは遺言のような堅い話ではなく、残される人が、暮らしをちゃんと続けていくための、優しい「引き継ぎ書」です。

人とつながれる空間にしておく

そして、忘れてはいけないのが「人とのつながり」です。1人暮らしになると、社会との接点が少なくなりがちです。誰とも話さない日が続き、家に閉じこもりがちになる。これが心にも体にも、一番こたえます。

だからこそ、「1人の家」を考えるときには「人を呼びやすいか」という視点を持ってほしいのです。お茶を一杯出せる小さなテーブルがあるか。子どもや友人が、気軽に立ち寄っておしゃべりできる玄関まわりか。

むしろ、1人になったときの方が、家は「人を招く場所」としての役割が大きくなります。広さより、温かく人を迎えられるかどうか、そこを大切にしてください。

1人でも安心して眠れる家かどうか

人とのつながりと並んで大切なのが、「安心して過ごせるか」という視点です。

2人で暮らしているときは、なんとなくお互いが見守り役になっています。夜、外で物音がしても隣に誰かがいる。体調が悪くなっても、気づいてくれる人がいる、という〝よりどころ〟がありました。

ところが1人になると、その安心が丸ごとなくなります。夜になると、ちょっとした不安が大きく感じられるものです。

その対策は、大きな工事をしなくても始められることが多いんです。例えば玄関まわりに人感センサー式の照明を設置する、窓や玄関などの鍵をもうワンランク上のしっかりしたものに替えるなど。今は、離れて暮らす子どもがスマートフォンで見守れるサービスもあります。


「1人になったときの家」を考えるのは、暗い話ではありません。2人がまだそろっている今だからこそできる、温かい相談です。どちらが残っても、その人が困らないように。寂しいかもしれないけど、ちゃんと安心して暮らしていけるように。その話し合いの結果として、リフォームという選択が出てくることもあれば、「今はこのままでいい」という結論になることもあります。

どちらでも実は構わないのです。大切なのは、2人で一度、その未来に向き合ってみること。今できる一番の備えは、この会話そのものなのです。

1人でも管理できる空間にする

1人の生活を考えて住まいを見直してみましょう。寝室・トイレ・浴室・台所が近くにまとまっているか。庭や水回りの管理が1人で手に負えるかなど。不安があるなら、減築やリフォーム、改庭などの対策があります。こうしたことは、遠い将来ではなく「今、2人で決めておいた方がいいこと」です

お金と暮らしのトリセツを共有

通帳や大事な書類の保管場所、加入している保険、親戚・ご近所さん・業者などいざというときの連絡先、給湯器やブレーカーなど家の設備の使い方などを、書き出して、夫婦で共有しておきましょう

人を招きやすい住まいに

来客にお茶一杯出せる小さなテーブルを用意したり、子どもや友人が、気軽に立ち寄って少しおしゃべりできる玄関だったり。1人になったときこそ、人とのつながりが大事。「温かく人を迎えられる空間」を大切にしてください

安心して眠れるよう対策

玄関や窓周りに人感センサー式の照明を設置する、鍵をもうワンランク上のしっかりしたものに替えるなど。電気やガスなどの使用状況を離れて暮らす人が確認できる見守りサービスを利用するという対策もあります

執筆者プロフィル

まえうみ・さきこ/1976年、嘉手納町出身。建築会社に20年勤務したのち、2021年6月に「ielie(イエリエ)」を設立。建築の知識やママの経験を生かして、住まいの悩みに応じたコンサルティングやインテリアコーディネートを行う。一級建築士、空間デザイン心理士®、夫、2人の子ども、猫2匹と暮らす。

ielie(イエリエ)ホームページ

https://ielie.okinawa

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毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」家と心理(54)
第2122号(2026年9月4日発行)より転載