違う視点から見つめ、見立てる|アートを持ち帰ろう

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アーティスト・moneの作品を初めて見た時の印象は“気配が漂う”というものだった。(文/本村ひろみ)

“気配”を感じる

作品「What reminds」は、奈良の蔵で実際に使用されていた古い鍵をモチーフに制作されている。鍵が開けていた扉や蔵は失われ、その役割は消えてしまったが、彼女はその鍵を「時間の重み」を背負う存在として捉え、平面と立体の組み合わせで制作した。照明を少し落とした展示室で、その作品は、時の流れで出会った人々の気配をまとい、目には見えない共鳴のようなものも伝わってきた。

「絵画や立体など素材や染織など技法にとらわれない表現を目指している。特別な画材や技術がなくても、身近なものを違う視点から見つめたり、何かに“見立て”たりすることで、作品は生まれるということを、私の作品を見た人に伝えていきたい」と語る。技法にとらわれない表現は、織り、染め、オイルやアクリル絵画、そして鉄や木材、セメントを使った立体など幅広い。

「what reminds」平面97センチ×130センチ 立体35センチ×63センチ

一瞬をとどめる

作品「沸点まで」の説明に「湯が沸くまでの何げない待ち時間。揺れる炎や立ちのぼる湯気は、同じ形を二度とつくらない。日常の中では見過ごしてしまう一瞬を織りによって形にとどめた」とつづっている。台所の風景を織りにする発想。ざっくりとした風合いで織られたヤカンとコンロ。立ち上がる湯気のダイナミックさ。そこにいる人の気配を感じさせる作品には愛があふれている。

現在、美術の先生として忙しい日々のなか制作を続けているというmoneの個展が待ち遠しい。

「沸点まで」30センチ×60センチ 織り

「水脈」90センチ×150センチ 染め

「Still Standing」30センチ 鉄・木材
さびて役目を終えた古いハサミ。立ち続けている人間の生き方と重ねている

左写真 「目」45センチ×45センチ アクリル絵具
右写真 「気配」 45センチ×60センチ 油絵

台風を抽象的に表現。3枚の画面を「接近」「目」「通過」の時間軸で構成。渦の中心にある静けさとその周囲で渦巻く感情や記憶を表現した作品

作家近況

アーティスト・mone
奈良芸術短期大学 美術科 染織コース卒業後、聴講生として制作を継続。現在、沖縄県内の中学校で美術科非常勤講師として勤務。年内は個展やグループ展の予定はない。

執筆者プロフィル

もとむら・ひろみ/那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」「還暦ラジオ」でパーソナリティーを務める


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」アートを持ち帰ろう(66)
第2129号(2026年10月23日発行)より転載