人生を最も豊かにする 身の丈に合った暮らし|建築士が語る 人生を楽しむ住まい

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一級建築士の村山創さんが建築の専門知識と人生哲学を交えて、より「人生を楽しむ」ことにスポットを当てて「住宅論」をつづっていく。今回は「身の丈にあった住まい」。「大切なのは誰かの基準ではなく『自分軸』で選ぶこと」と村山さんは説明する。(文/村山創 一級建築士)

SNSで見失う「自分軸」

私たちは日々、何げなくSNSを開き、他人の暮らしや住まいを目にしています。「美しい家」「広いリビング」「最新の設備」。タイムラインに流れてくる画像は、とても魅力的に映ります。

しかし、この当たり前に使っているSNSが、私たちの幸福度を少しずつ下げているケースも多々見受けられます。

人は無意識のうちに、他人と比較してしまいます。「もっと広い家がいい」「もっとキレイな家がいい」。そんな思考が積み重なると、本来すでに持っているものへの満足感は薄れ、欠乏感が生まれてしまいます。

さらに、「平均」や「世間」を基準に住まいを考えると、選択肢はどんどん少なくなっていきます。本来、住まいは“自分の人生”に合わせて選ぶもののはずなのに、いつの間にか他人の基準に引っ張られてしまうのです。

すでに持っているものがある。それなのに、比較によってそれを見失ってしまいます。だからこそ大切なのは、他人軸ではなく「自分軸」で住まいを考えることです。

自分にとって何が心地よいのか。どんな暮らしがしたいのか。そこに正直になることが、満足感の高い住まいを手に入れる第一歩です。

「足るを知る」選択

例えば、「小さく暮らす」という選択。「小さく暮らす=我慢」と思われがちですが、実はそうではありません。余計なものをそぎ落とし、本当に必要なものを選び取るという前向きな選択です。

家が大きくなれば、その分だけ建築費は上がり、維持費も増えます。掃除や管理の時間も増え、知らず知らずのうちに「お金・時間・体力」を消費。気づけば、家のために働く人生になってしまうこともあります。

一方で、身の丈に合った住まいはどうでしょうか。無理のない家賃や住宅ローン。手入れのしやすい広さと整理された品物。そこには、「暮らしを楽しむ余裕」があります。これが、ダウンサイジングの本質です。

賃貸でも、一戸建てでも、マンションでも、正解は一つではありません。大切なのは、自分で選び、納得していることです。人生の満足度を大きく左右するのは、「自己決定感」です。誰かの基準ではなく、自分の価値観で選んだ住まい。自分で選び、納得しているという感覚。その積み重ねが、人生の豊かさにつながります。

住まいは、人生の土台です。だからこそ、見栄や比較ではなく、「自分にとってちょうどいい」を基準にしてほしいと思います。背伸びをしない暮らし、足るを知る選択。それこそが、これからの時代の一番の豊かさではないでしょうか。

執筆者プロフィル

むらやま・はじめ/一級建築士、創環境Design代表。フラット35適合証明技術者。設計の仕事をしながら、住宅関係の講演会や一般消費者に向けて住宅づくりの情報をSNSで発信する

【創環境Designのホームページ】https://hajimemurayama.my.canva.site/


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」人生を楽しむ住まい(2)
第2105号(2026年5月8日発行)より転載