小さな変化に気付き福祉とつなぐ|住まいでつながる未来の安心 共助で支える、高齢社会の賃貸経営

沖縄県内最大規模の管理戸数を抱える中部興産のグループ会社・興産アメニティでは65歳からの賃貸物件探しをサポートする「R65不動産沖縄」事業を行っている。同事業を担当する久田尚志さんが県内の現状や課題について執筆する。(文/久田尚志 興産アメニティ株式会社「R65不動産沖縄」担当)

認知症まではいかないが…

「廊下の鉢植えをどうにかしてください!」。困り果てたオーナーから、管理会社へ電話が入りました。

長くお住まいの高齢の入居者が、共用部分に鉢植えを置いていました。本来は認められないことですが、いつもきれいに手入れされていたので、オーナーも大目に見ていました。ところが最近は手入れがされなくなり、台風でも屋内に取り込まれないまま。あれほどマメだった方が、なぜ。認知症と呼ぶほどではないけど、暮らしのリズムが崩れ始めているのかもしれない。管理会社やオーナーは、そんなとき、どこに相談すればよいのでしょうか。

これまで、死後事務委任や終身建物賃貸借、保険といった退去の際の備えをお伝えしてきました。しかし、日々の管理でじわじわと消耗するのは、むしろ「亡くなる前」の変化かもしれません。厚生労働省の推計では、認知症の高齢者は2040年に約584万人、およそ7人に1人になる見通しです。仮に入居中の方の認知症が進行し、意思能力が失われたと判断されると、本人との契約の変更も、解約のお願いもできなくなります。

代わりに動ける成年後見人の選任には数カ月かかります。変化に「気づいてから考える」では遅く、本人とまだ話し合える初期のうちに動けるかどうかが、暮らしと経営の分かれ目になります。

地域包括支援センターへ

不安への対策として、更新のない定期借家契約を選ぶこともあります。ただ、これは解決というより、2年ごとの先送りです。入居者は再契約のたびに「また住み続けられるか」という不安を抱え、オーナーも何かあれば「満期まで」と我慢を重ね、管理会社には再契約の実務負担が積み重なります。契約の形を変えても、実は誰の不安も減っていません。

そんなときに相談できるのが「地域包括支援センター」です。保健師や社会福祉士などの専門職が常駐する高齢者の総合相談窓口で、本人や家族に限らず、「最近、様子が気になる」という近隣や関係者からの相談も受け付けています。先の鉢植えのような小さな変化の段階で福祉につながれば、生活支援が入り、暮らしは立て直せます。「何かあったら、誰に相談すればいいか分かっている」。オーナーは安心して貸し続けることができ、入居者は長く住み続け、空室や入れ替えの費用は減っていきます。高齢者の受け入れは善意や社会貢献だけの話ではありません。見守り、退去の備え、日々の相談先という仕組みを持った管理会社や物件は、確実に増え続けるシニア世帯に選ばれ続けるはずです。

その「頼れる先」と顔の見える関係をつくる場が、まもなく那覇市で始まります=下記参照。皆さまと一緒に仲間づくりの一歩を踏み出せたらと思っています。

2026年8月12日に那覇市で居住支援セミナー

「住まいと暮らしの居住支援セミナー」(第1回那覇市居住支援協議会準備会)8月12日(水)午前10時〜正午、那覇市役所で開催。対象は不動産管理会社、行政・福祉関係機関、那覇市の居住支援に関心がある人。

管理会社、オーナー、行政・福祉関係機関が一堂に集まり、高齢者をはじめとする要配慮者の受け入れと賃貸経営の両立を考える。筆者も事例紹介で登壇。参加無料だが、人数制限あり。 

申し込み・お問い合わせは那覇市まちなみ整備課(電話 098(951)3235)。こちらからの申し込みも可能

執筆者プロフィル

くだなおし・興産アメニティ「R65不動産沖縄」担当。

問い合わせ

電話 098(882)1717 
https://r65.kosanamenity.com/


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」住まいでつながる未来の安心 共助で支える、高齢社会の賃貸経営(11)
第2116号(2026年7月24日発行)より転載