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2026年7月28日の熊本地震はマグニチュード7.1、最大震度7を記録。広範囲に被害をもたらした。同月の沖縄地方では震度1~3の地震が起こっている。建物の構造の安全性などについて、NPO法人沖縄県建築設計サポートセンターの一級建築士・上原利公さんに話を聞いた。(編集部/市森知)
劣化がないか確認してみよう
沖縄県耐震改修促進計画(2026年8月3日変更)には沖縄本島および先島地域を含めた地域で、マグニチュード6.9以上の大規模地震が発生すると想定されている。災害から身を守るため、建物の状態を知っておくことも大切だ。「建物の構造の安全性は『耐久性』と『耐震性』の二本柱が欠かせない」とNPO法人沖縄県建築設計サポートセンターの上原利公さんは話す。
建物の地震の備えといえば、「耐震性」を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、ただ耐震性を高めればいいというわけではない。NPO法人沖縄県建築設計サホートセンターの一級建築士・上原利公さんは「建物の構造の安全性には二つの柱が欠かせない=下図。それが『耐久性』と『耐震性』です」と説明する。

「建物の構造の安全性」のイメージ図。建物の耐久性に問題があれば、耐震性を高めても構造の安全性は損なわれてしまう(参照/NPO法人沖縄県建築設計サポートセンターのホームページ)
経年劣化などにより耐久性が低下すると、建物の骨組み自体が弱くなる。結果、耐震性の低下にもつながるため、「築年数がたった建物はまずは補修が大切」。RC(鉄筋コンクリート)造建築物ならひび割れやコンクリートの爆裂など劣化がないか、確かめることも日ごろからできる備えの一つだ=下記参照。
チェックリスト
| □建物の柱や梁に1ミリ以上のひび割れがある □柱、梁、壁などの表面から鉄筋が見えて、鉄筋がさびている→こちらを参照 □「1981年5月31日以前」に建てられた建物か→こちらを参照 □必要な手続きをせずに、増改築をした |
参照/NPO法人沖縄県建築設計サポートセンターのホームページ
▲簡易的なチェック項目。あくまで目安だが、家主自身で確認し、気になることがあれば建築士など専門家に相談してみては
RC造建物の劣化例

(左・右)ひび割れが建物に走っている。下写真の劣化も含め、建物の耐久性を損なってしまうため、早めの対策が重要となる

コンクリートが剥がれ落ち、内部の鉄筋があらわになっている
新旧の耐震基準は、築年数から把握
建築物の耐震性はいつ建築確認を受けたかで、変わってくる。1981年5月31日以前の建物は「旧耐震基準」、同年6月1日以降の建物は「新耐震基準」が適用されている=下表。

新旧耐震基準の違い。旧耐震基準は大規模地震(震度6〜7程度)の明確な規定がない一方、新耐震基準は多少の損傷は許容しつつも家屋が倒壊しないというもの。倒壊・崩壊を防ぎ人命を守る(参照/NPO法人沖縄県建築設計サポートセンターのホームページ)
「特に、県内にある旧耐震基準の鉄筋コンクリート(RC)造住宅はコンクリート中の塩分濃度が高い傾向にあるため、鉄筋腐食によるひび割れなどが進行する傾向にあります」と上原さん。こうした旧耐震基準の建物に対し、耐震性を確認するのが「耐震診断」だ=下図。

参照/NPO法人沖縄県建築設計サポートセンターのホームページ
建築物の診断で、耐震性などを数値化
住宅・アパートなど比較的小規模の建物の場合、耐震診断は1次診断と2次診断に分けることができる。2次診断はより詳細な調査を行い、「建物がどの程度の耐震性なのかだけではなく、耐久性の把握にもつながる」。
建物の劣化状況を調査するほか、RCのサンプルを取り出して材料調査も行う。サンプルの圧縮試験や塩分試験などから建物の耐久性が把握でき、「その建物の耐震性を示す『Is』を算出=下表。

参照/NPO法人沖縄県建築設計サポートセンターのホームページ
この値と構造耐震判定指標となる『Iso』を比較することで、耐震性を数値で表すことができる」。また、新耐震基準の建物も建築士など専門家に相談することが有効だ。
熊本地震の被災地で、建物の危険度判定
マグニチュード7.1を記録した7月28日の熊本地震は熊本県の発表(8月28日時点)によると、住家被害が4万3292棟にのぼった。上原さんは8月中頃、被災地である熊本県八代市などに向かい、応急危険度判定士の一員として活動。余震などによる二次災害を防止するため、建築物の危険性を伝える「応急危険度判定」を行った。
応急危険度判定士として被災地を回るなかで、建物の倒壊・損傷だけではなく、ブロック塀や給湯器などの住宅機器の倒壊も多く見られたという。上原さんは「ブロック塀は本来必要な鉄筋の本数が不足し、住宅機器は固定する金具が腐食していたことが倒壊の原因だと考えられる」と話した。
[応急危険度判定]被災した建物の危険性を、ステッカーで伝える
一般財団法人日本建築防災協会 公式ウェブサイトより
沖縄県は7月31日に熊本地震の被災地へ災害派遣医療チームなどを、8月に入り建築物の「応急危険度判定士」を派遣した。
応急危険度判定とは(一財)日本建築防災協会によると、「大地震により被災した建築物を調査し、その後に発生する余震などによる…(中略)…命にかかわる二次的災害を防止することを目的としています。その判定結果は…(中略)…その建築物の危険性について情報提供することとしています。…(中略)…」。
建物を目視や簡易計測などで調査し、損傷具合により①「調査済」②「要注意」③「危険」に分類。①〜③の建築物判定ステッカーを見やすいところに貼ることで、居住者や周辺住民らに判定結果を伝える。

建築物判定ステッカーは緑・黄・赤の3種類。建物の危険度に応じてステッカーを使い分け、具体的な被害状況は注記などで伝える
ただし、応急危険度判定は「罹災証明のための調査や被災建築物の恒久的使用の可否を判定するなどの目的で行うものではない」。
判定を行うのは、行政職員のほか、ボランティアとして参加する民間の建築士らの応急危険度判定士。応急危険度判定に関する講習を受講し、都道府県が養成・登録を行う。

ほかにも、転倒危険物ステッカー(左)と落下危険物ステッカーがある。二つのステッカーは黄・要注意と赤・危険の2種類
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」建物の構造の安全性は耐久性+耐震性
第2122号(2026年9月4日発行)より転載