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2020年11月20日更新

共用スペースで縁紡ぐ|多くの拠り所がある暮らし[8]

2019年の秋に約1カ月間、日本各地で多拠点生活してみた。その体験などを通して、定住にとらわれずにいくつかの生活の拠点を持つような新しい暮らし方について、連載で紹介する。(文・写真/久高友嗣)

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南伊豆から次に向かったのは京都市伏見桃山のアドレス(多拠点生活向けの住居提供サービス)の家。この家では、今回の多拠点生活の中で最も長い5泊6日で滞在した。


土間の玄関から共用スペースを見る。元学生寮をリノベーションしてオープンな空間にしつつ、既存の柱や天井、土間の要素も一部残している。左手の通路にある窓から隣の屋敷が見える

到着すると、家の中が見通せるガラスの玄関ドアが出迎える。そのドアを開くと、土間の玄関、その横に砂利敷きのダイニングキッチン、奥には小上がりの畳間があり、滞在者の共用スペースになっている=上写真。玄関から延びる通路の窓からは、家主が住む隣の屋敷が見える。玄関から屋内の共用スペースまで閉塞(へいそく)感がなく、家の外へも開かれた印象を与える空間が広がっている。ここでは地域の方やゲストが集うこともしばしばあるそうだ。

滞在期間中、家にいる時は共用スペース、特に奥の畳間で過ごしていることが多かった。座り心地のいい座椅子があり作業もはかどるなど、居心地が良かった。その共用スペースでは予期せず今後にもつながる地域の人との出会いがいくつかあった。


アドレス京都伏見の家の外観。玄関ドアがガラス張りなのが特徴的。左手の屋敷には家主のお母さんが1人で住んでいる


滞在した家の2階の個室。トイレやシャワー等の水回りもついていて、1Kのアパートで過ごすような感覚だった。これまで滞在した家の中では最も広かった


京都から沖縄・台湾へと広がり

まず1人目は、家の向かいに住むお姉さん。ガラスの玄関ドア越しに家守(管理人)がいたのを見かけて、家守に誕生日の祝いの言葉を伝えに訪れた。私もあいさつを交わすと、お姉さんは「再来月に子どもと沖縄旅行へ行くよ」と話し、沖縄に来た時は一緒にキャンプをした。
2人目は、家守の知人で、子どもと遊びがてら共用スペースを訪れていた時にSNSでつながった。その後、SNSの投稿から私の中学時代の同級生が共通の友人だと分かった。この縁をきっかけにその同級生と10年ぶりに再会した。
3人目は、通りがかりの京都在住の台湾人の奥さま。玄関をノックする音が聞こえて戸を開くとその奥さまがいた。少し変わった家の外観から、どういった場所なのか気になって、とのこと。家の紹介もしつつ話を交わし、流れで連絡先を交換。今でも育てているお花やつくった台湾料理の写真を送ってくれ、時折異文化を感じている。

京都の家でのふとした出会いが、京都だけにとどまらない縁になった。多拠点生活で行った先の土地や人との出会い、その人と自分の地元との接点がどんどんつながっていく。この連鎖が、自分と各地、また地元とのつながりをより濃くしていくように感じた。
「またおいでね」と言ってくれた隣の屋敷に住む家主のお母さん。そんな言葉を頂けると、迎え入れてくれることのうれしさ、ありがたさを感じる。また訪れたい。そう思った。さまざまな縁が生まれるきっかけとなった共有空間での時間が思い出深い京都滞在となった。


家主のお母さんからお裾分けしてもらったちらしずし。畳間で過ごしていると、通路の窓越しに隣の屋敷からお母さんが手招きしてくれた

 
 久高友嗣/くだか・ともつぐ/1990年、那覇市生まれ。琉球大学卒業後、健康×ITの領域で起業。2018年からキャンプ団体「CAMPO(きゃんぽ)」の活動を開始。レジャーの枠を超えたキャンプをテーマに、用品の提供や遊休地などを利活用した場づくりなどを手掛ける

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1820号・2020年11月20日紙面から掲載

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