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2017年12月29日更新

県内の省エネ住宅 キーワードは「3.2」|既存住宅でシミュレーション

[2020年の変 家造りに新たな基準]目前に迫る2020年は家造りの転換期になる。2016年に施行された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(以下建築物省エネ法)」により、一戸建て住宅を含むすべての新築の建物は、電気やガスなどの消費量を減らす「省エネ住宅」にすることが求められる予定。その省エネ住宅について解説する。

沖縄では高いハードル

省エネルギーの基準値は、全国一律ではない。気候などをもとに八つの地域に分けている=上表1参照。

沖縄の地域区分は「8」。冬も暖かいため、暖房時に室内から外へ逃げてしまう熱を表す「外皮平均熱貫流率の基準値」は設けられていない=上表2参照。

一方、冷房時に外から室内へ入ってくる日射熱を表す「平均日射熱取得率の基準値」は「3.2」と定められている。この基準値は、新築する住宅の屋上や外壁などから入ってくる熱を外皮全体の面積で割った値と比較して評価する。その値が「3.2」を下回らなければ建てられない恐れがある。

実は、現状の造りや建材を使用したままで「3.2」以下にするのはハードルが高い。県内の主流である鉄筋コンクリート造は熱の取得率が高いことや、通風のために開口部が大きいことは、評価計算で不利になる。

省エネ基準では、地域の気候・風土に応じた住宅であることにより、外皮基準に適合させることが困難と行政庁が判断したものには、基準適応の例外を認めている。

「県では、建築士や有識者とともに沖縄独自の認定基準案を検討しているところ」と金城班長は説明する。


コストも上乗せ

一般的な鉄筋コンクリート(RC)造の既存住宅=左上参照=でシミュレーションしてみると、平均日射熱取得率は4.4となり、基準値である3.2以下にならなかった。

日本建築家協会沖縄支部の金城優副支部長によると、この住宅を3.2以下にするには ①屋根の断熱材の厚さを3倍に ②ジャロジー(ルーバー)窓以外の全窓に遮熱・断熱効果のあるガラスを採用 ③開口部すべてにすだれなど外付けブラインドの設置が必要だという=上図面。コストを試算すると、断熱で約50万円、窓回りで約65万円上乗せすることになる。

「もとの平均日射熱取得率がさらに高ければ、開口部を小さくしたり、断熱材をより厚くするなど、さらなる仕様の変更が求められる」

外皮基準を達成したら、次はその数値に見合う一次エネルギー基準を満たさなければならない。上の例では、「LDKと廊下の間に引き戸を設けて冷房効率を高めたり、ハイグレードの空調や照明などが必要になるかも」。

木造はRC造に比べて外皮基準をクリアしやすい=上表=が、「冷房効率などを考えると、一次エネルギーの部分で工夫が必要になるだろう」と注意を促した。



2020年の変 家造りに新たな基準
<2020年の変 家造りに新たな基準>
01 求められていることは
02 基準を満たす家とは
03 県内の省エネ基準における地域区分
04 既存住宅でシミュレーション
05 評価してほしい工夫


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1669号・2017年12月29日紙面から掲載

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