【親子で建築士】父は意匠 息子は構造|山城東雄さん・浩二さん(株)東設計工房

「幼いころから父の仕事場をのぞいたり、職員の方に遊んでもらったり。自宅の下に事務所があったので、設計士の働き方を見ながら育ちました」と、山城浩二さん(41)は語る。

(写真左)父:やましろ・あずまお/1944年竹富町小浜島出身。1級建築士。沖縄工業高校建築科卒業後、建築設計会社での勤務を経て78年に東設計工房を設立。2007年に第19回住宅月間功労者として国土交通大臣から表彰。24年に日本建築家協会の名誉会員に選出された。
(同右)息子:やましろ・こうじ/1984年浦添市出身。構造設計1級建築士。琉球大学大学院理工学研究科卒業。大阪で構造設計事務所に勤めた後、2015年東設計工房に入社。19年に代表取締役社長に就任。3人の息子の父。

ものづくりに自然と興味を持ち、将来は設計に関わる仕事に就きたいと考えるようになった。一方で、建築に強いこだわりがあったわけではない。大学で建築を学ぶのを選んだ理由も「悩んだ末に、なんとなく」。父の山城東雄さん(81)は「『建築もいいと思うよ』と、さりげなく伝えたのが効いたのかな」と笑う。学びを深めるうちに「建築構造の分野が自分の性格に合っている」と感じ、大学院でも研究を続けた。

専門分野の意見は尊重

大学院を卒業後、浩二さんは大阪の構造設計事務所に就職した。「別の会社も経験したかった。県外に出てみたい気持ちもあったし、県内の建築事務所だと父の名前が知られているため、やりにくさがあると思った」。東雄さんも「外の世界を経験するのは大切。まずは3年ほど頑張ってきなさい」と送り出した。浩二さんは5年ほど働きながら、一級建築士の免許も取得。沖縄に戻って東設計工房に入社した。

現在は東雄さんが意匠設計を担い、浩二さんは構造設計を担当している。東雄さんの意匠について、浩二さんは「自分が考えたら、もう少しシンプル、悪く言えば面白みがないものになると思う。父は施主と話し合いながら、毎回工夫を凝らしています。こういう間取りにするんだ、こんな空間を作るんだ」と、父の発想に驚く。東雄さんも「構造に関する知識は息子の方が詳しい。専門的な計算や判断などは任せています」と一目置いている。社内の細かな方針を巡って意見がぶつかることはあるという。しかし、設計や構造など建築の話では「やりたいことがお互いに分かっているので、ほとんどけんかにならない」と浩二さん。互いの専門性を認め合いながら、仕事を進めている。

入社後、浩二さんは仕事の流れを覚えるために、東雄さんが基本計画の設計を行った住宅を任された。右も左もわからない状態から教えてもらいながら作業を進めた。完成した住宅(上・下写真)に施主が喜んでいる姿を見て「前職では施主と直接やりとりする機会が少なかったので、達成感がありました」(東設計工房提供)

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「この人あり」という仕事

 「父の建築は、父にしかできません。これまで東設計工房が積み重ねてきた技法は踏襲するつもりですが、同じような建築ができるとは思っていないです」と浩二さんはきっぱりと話す。ただ、変わらない土台もある。東雄さんが繰り返し伝えてきたのは、施主を第一に考える姿勢だ。「建物を完成させることが目的ではなく、そこで暮らす人が健康で幸せに過ごしてくれることが我々の責務」。この考えは、浩二さんや他の社員にも浸透している。今後について、東雄さんは「沖縄の建築界で『この人あり』と言われるような仕事をしてほしい」と息子の背中を押す。浩二さんは「建築を志す若い人たちに、この業界は面白そうだと思ってもらえるように頑張りたい」と話した。

東設計工房は再来年、創業50周年を迎える。大きな節目に向かって、2人はそれぞれの分野から施主と向き合い続ける。

東雄さんが設計した建物の中で浩二さんが印象に残っているのは「浦添市立図書館」。「内装や家具などが木で作られ、温かみがありました」と浩二さん(東設計工房提供)

社員と家族で一緒に渡嘉敷島に出かけた際の写真。後列右端に写るのが東雄さん。赤い服を着た右側の子どもが浩二さん(東設計工房提供)

影響を受けた建築物&建築士

山城東雄さん「那覇市民会館」

好きな建築物は金城信吉さんのチームが建てた「那覇市民会館」=写真=です。赤瓦を、小端積みと呼ばれる技法で庇に用いる新しい使い方は印象に残っています。力強さのある張り出した庇は、沖縄の建築の特徴でもあるアマハジ空間を支えています。躯体のコンクリートの劣化が原因で、残念ながら現在は解体されてしまいました。形あるものはいずれこうなってしまいます。宿命ですね。

山城浩二さん「モード学院スパイラルタワーズ(愛知県)」

構造設計の分野で初めてすごいと思ったのは、「モード学院スパイラルタワーズ(愛知県)」です。設計を担当した方の講演会を大学で聞く機会があり、高い耐震性とデザインを両立させる構造システムの説明に感動しました。

デザインが好きな建築家は「ルイス・バラガン」。メキシコの強い陽射しと乾燥した空気の中、原色を使った建物や空間づくり、素材感のある壁面は現地で直接体感してみたいです。沖縄の建築や風土にも通ずるものがあるのではと思います。

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取材/伊波克朗
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」7月1日は建築士の日
第2112号(2026年6月26日発行)より転載