【姉弟で建築士】姉が軸、弟が幅を広げ|末松渚さん・伊波豪さん(有)武一建設

父が立ち上げた建築会社で、姉は設計、弟は設計と施工も手掛けるのが、末松渚さん(49)、伊波豪さん(44)姉弟だ。

(写真右)姉:すえまつ・なぎさ/1977年石川市(現・うるま市)出身。2級建築士。同志社大学卒業後、営業職を経て大阪技術専門学校を卒業。父の営む武一建設へ入社。同社初の建築士として設計を手がけ、現在に至る。3人の母。
(同左)弟:いは・ごう/1981年石川市(現・うるま市)出身。2級建築士。名桜大学を経て、働きながら県内の社会人サッカーチームに所属。ケガを機に引退後、姉の誘いで父の営む武一建設へ入社。2023年に同社代表に就任。

渚さんが建築士を志したのは社会人になってから。型枠大工で、手間と技術が要る建物も難なくこなす父を見て育ち、「住みたい家を建てているところがないなら自分でデザインしよう」と専門学校へ入り直した。「どこにも染まらず自分のやりたいことをやれ」との父の言葉に背中を押され、卒業後すぐに父の会社へ入社。その年に建築士資格を取得し、自邸を設計した。

デザインの原点は、雑誌などで惹かれ、父と訪れたギリシャの建物だ。「現地で見た優しい丸みを帯びた空間と、手作り感に近い漆喰の風合い」を自宅にも取り入れ、開放感とプライバシーも確保。特に漆喰は「厚みのあるぽってり感」にこだわってスペインから直輸入。その営業担当にと、豪さんに声をかけた。

ケガで社会人サッカーの選手を引退していた豪さんは、特徴や扱い方を知るためスペインに行き来。「現地で直に学び、自分でも塗ってみたら楽しくなった」。「究める工程が好き」な性格も手伝って、左官をはじめ施工全体に関わるようになった。

豪さんが父とスペインのメーカーを訪れた際の写真。中央が、現地の職人に直に左官技術を教わる豪さん(建築士提供)

左官センス 相性ピッタリ

渚さんのデザインに欠かせないのが、漆喰壁に味や陰影をもたらす「美しい塗りムラ」。通常、ムラなく仕上げるのが仕事の左官職人にそのイメージを伝えるのは難しく、初めは何度も塗り直してもらったという。

そんな左官仕上げで渚さんがセンスを買っているのが豪さん。「弟に『この塗り方がいい』と見せると、くみ取って形にしてくれた。相性ピッタリ」。一方の豪さんは「作ろうとするんじゃなく、自然なムラが出たら、それを生かしていく」と気負いがない。「元アスリートだからでしょうね。弟は見た物や頭で描いた通りに自分の体を操るのが上手く、成長が早かった」と渚さんは頼もしげに目を細めた。

姉・渚さん宅のリビング。コートを囲んで居室を配置しカーテン不要の開放的な空間に(建築士提供)

玄関は窓やニッチもアーチ型にデザインされている。「暮らしのストレスを全て解消できるよう工夫。築19年経った今も色あせないお気に入りの一軒です」と渚さん(建築士提供)

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施工目線生かした設計も

「仕事に生かせるなら」と、豪さんが建築士資格を取得したのは12年前のことだ。渚さんの自邸にはじまり今や同社の軸となっている漆喰の風合いや回遊性がある動線計画をベースに、現場で培った施工目線を生かした設計を手掛けるようになった。「材料を無駄なく使え、現場作業も進めやすくする」ことでコストを圧縮。モデルハウスや手頃感を求める施主宅の設計を担当し、仕事の幅を広げている。

3年前には、父の跡を継いで社長に就任。現場に携わりつつ、経営者として「ニーズや時代の変化」にもアンテナを張る。

「設計を手掛ける今は、姉の意図するところがより分かる。施主第一で妥協のない姉の姿勢が今につながっていると思うと、勉強になる」「ほんの小さなことまで施主の思いをくみ取って形にする過程には、面倒で手間がかかると言われるコトも出てくるけれど、それができるのが自分たちの強み。そこを理解し、同じ方向を目指せる弟の存在は心強い」と2人は話した。

弟・豪さん設計のモデルハウス。内部造作を省いたシンプルな造りながら、和室とダイニング越しに緑が見え開放的(建築士提供)

影響を受けた建築物&建築士

末松渚さん

ひかれたのはエーゲ海に浮かぶギリシャの島々の建築=写真(建築士提供)。建築士になると決めたことを機に、父と建築旅行でミコノス島を訪れました。白い漆喰壁と曲線がつくる柔らかな表情、光と影の美しさ、そして飾り過ぎない心地よさに触れ、その魅力を改めて実感しました。建物同士が織りなす美しい街並みや、アーチの開口部が造る柔らかな陰影も印象に残っています。そうした魅力は、白い漆喰壁や曲線、アーチを大切にする私の設計につながっています。

伊波豪さん

影響を受けた建築士は姉。姉は施主第一で「毎日のちょっとしたストレスが積み重なって住みづらさにつながる。施主にこうしておけばよかったという後悔はしてほしくない」と、本当に細かいところまで要望に対応するんです。思えば型枠職人で現場を仕切っていた父も妥協しない性格なので、そのあたりは父譲りかも。その姿勢が今につながっていると思うと、学ぶ点は多いですね。

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取材/徳正美
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」7月1日は建築士の日
第2112号(2026年6月26日発行)より転載