中庭から直接リビングへ 逆三角形の屋根にシンプルな間取りの、2世帯平屋|お住まい拝見

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建築士の新田武志さん(37)が自ら設計したRC造の平屋は、横から見ると屋根が逆三角形になっているのが特徴だ。2世帯が中庭を囲み、玄関や世帯を隔てる壁もない、心理的にも解放された空間は、家族や友人、親戚がゆるやかにつながる集いの場となっている。(取材/赤嶺初美・ライター、撮影/比嘉秀明)

新田さん宅 RC造/自由設計/家族2人

4年前に建てた南城市の平屋。陸屋根の箱型が多いRC造の住宅にあえて勾配屋根を採用し、石調の磁器質タイルを全面に貼って、1枚の岩が浮いているように見せた。軒を深くして雨や日差しをしのぎ、建物は道路に対して斜めに配置。マンゴー農家の母親は、手のかかる花ではなく、葉が色づくクロトンなどの観葉植物を植え、庭を彩る

中庭が広げる暮らし

新田武志さんは4年前、母親との2世帯住宅を建てた。建て替える前の自宅は祖父が建てたもので、築50年たつ、RC造の2階建てだった。母親のYさんは「息子に『あんたは建築士なんだから、まずは自分がやりたいように造ってみたら』と言いました。本当に全部お任せで、相談もなかった」と笑う。

新田さんは、平屋で、2世帯が分断されず、ゆるやかにつながるよう設計。また「物を大事にするあまり処分できない」という母親の性格や「掃除など管理のしやすさ」も考え、物をため込まない暮らしができるよう、寝室とリビングに台所や水回りといったシンプルな間取りにした。

子世帯のリビングダイニング。天井の高いところにリビング、低いところに水回りを配置。道路側には床から天井までのスリット窓を採用。視線を遮りつつ風の通り道をつくった

「新居に移った最初の1年は、もう1部屋あったらいいのにと思っていた」と笑うYさん。新しい家の暮らしに慣れてからは「今の方が管理しやすいし、掃除もしやすく、とても暮らしやすい。終活にもつながる。まだ私の体が動くうちに建て替えてくれて本当に良かった。親孝行してもらえて幸せです」と喜ぶ。

リビングから出入り

古くからある集落で代々暮らしてきたムートゥヤーでもある新田家は、来客も多いが、玄関はなく、中庭から直接リビングへと招く。「昔の沖縄の住宅も縁側から入った。その形を中庭に置き換え、緑を見ながら出入りできる家にした」と新田さん。

子世帯リビングから親世帯を見る。2世帯が中庭を囲んで向かい合うように配置されている

吹き抜けの中庭は両世帯のリビングにつながっており、光や風を取り込みながら、通りや隣家からの視線を気にせず過ごすことができる。親族が集まるときは、仏間のある母世帯に大人が、息子世帯では子どもたちが過ごす。中庭で友人とバーベキューをするのも楽しみだ。「次も早くやろう、と催促されます」と新田さんも目を細める。

親族でBBQを楽しむ吹き抜けの中庭。玄関はなく、2世帯の隙間(写真奥中央)から中庭を通ってそれぞれのLDKに出入りする

現在の家で暮らすようになって、Yさんは毎朝、健康のために20分歩いた後、庭の掃除をするのが日課になった。「こんなにきれいな家を息子に建ててもらったし、ゴミが落ちていたら家の印象が悪くなると思って」と、小さなゴミ袋がいっぱいになるまで拾い、続きは翌日に回す。

親子も友人も親戚も、この家でゆるやかにつながりながら、それぞれの時間を楽しんでいる。

(左写真)子世帯のキッチンダイニング。親戚が集まる時はここが子どもたちのスペースに
(右写真)親世帯の畳間。さとうきび柄の障子がアクセントに

ここがポイント/切り妻&軒先を絞り、解放感を高める

敷地は南城市の旧城下にある約225坪。道路拡張で交通量が増え、向かいにはアパートが建った。「道路から建物をセットバックさせ、余白に樹木を植えて街並みに緑の景観を提供した。さらに道路に対して斜めに配置することで、外からの視線を防ぎつつ、建物の輪郭を際立たせ、外観に豊かな立体感を持たせた」と(株)国建の新田武志さん。

こだわったのは屋根と中庭だ。建設地は昔、城下町で瓦屋根が並んでいた。「そこにボックス型のフラットな屋根はちょっと違う」と三角屋根を選んだが、瓦ではなく「新しい現代建築のデザイン」として屋根に石調のタイルを貼った。屋根は、寄せ棟よりも天井高を確保できる切り妻を選択。さらに軒先の隅を絞ることで天井高が取れる面積を増やし、室内の解放感を高めた。これは「RCだからできたこと」。

西側から見た外観。勾配屋根には石調の磁器質タイルを貼り、重みでずれないよう金物を仕込んだ

もう一つは、建物の中央に庭を置く「コートハウス型」。庭を囲んで2世帯を配置し、玄関をなくした。「階で分けたり、壁で区切ったりせず、出入りを中庭という共有の外部空間にした」。高齢の母と何かしら顔を合わせられる方が安心と考えたからだ。壁はコンクリート打ち放しで、天井は断熱材に直接漆喰(しっくい)を塗って費用を抑え、床は木目に表情のある栗の無垢(むく)材とした。

「デザインに正解はない。今回は場所に合った形ができた」と、設計者として充実した表情を見せた。

(左写真)子世帯の書斎。床の栗材は湿気や傷に強く、沖縄の気候にも適している。均一でない木目も魅力
(右写真)母親が1番お気に入りという台所。「壁に向かって作業していた昔の家と違い、リビングを見渡せる」

家族構成:本人、母
敷地面積:754.51㎡(約225坪)
床面積:117.81㎡(約35.6坪)
建ぺい率:156.89%(許容60%)
容積率:15.80%(許容200%)
用途地域:非線引き
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式
設計:(株)国建
施工:(株)比嘉組
電気:松島電気工業(株)
水道:(有)ライフ工業
住宅設備:(株)ミラタップ

お問い合わせ

(株)国建
電話 098(862)1238
https://www.kuniken.co.jp


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」お住まい拝見
第2130号(2026年10月30日発行)より転載