緑に囲まれたのどかな集落の一角に建つCさん(45)宅は、段状の敷地に沿うようにして階層で世帯を分けた2世帯だ。3人の子どもたちは家中を駆け回り、親子で虫取りや水遊び、家庭菜園も楽しむ。自然いっぱいの暮らしをのびのび満喫する。
Cさん宅 RC造/自由設計/家族5人

前面道路から見た外観。段状になった敷地の形状に沿うように1階に親世帯、2階に子世帯を設け、玄関は共有している。駐車場や菜園、庭も設けた
家中駆け回りのびのびと
イソヒヨドリやウグイスの鳴き声が聞こえ、窓の向こうには青空に映えるサトウキビ畑や雑木林が広がるCさん宅。「建てている時から思っていたけれど、ここは風通しが良くて窓を開けると気持ちいい」と夫人はリラックスした表情を見せた。
家造りを考えたのは、子どもの成長に伴い、住んでいたアパートが手狭になったのがきっかけだ。夫人が生まれ育ち「実家も近いこの場所に」と考えたが、もともとは祖父が所有していた不整形な山林と農地。母や叔父の先輩で同じ地域に住む建築士に相談したところ、宅地への転用や相続など煩雑な手続きが必要で時間がかかり、費用もかさむことが分かった。
それでもこの土地にこだわったのは環境の良さゆえ。「自然がいっぱいで静かなこの場所で、隣近所を気にせず子どもたちとのんびり暮らしたい」とのCさんたっての希望で家造りに踏み切った。

子世帯のLDK。リビングはL字の庭に向けて大きな掃き出し窓を設置。「雑木林との間ののり面は土を残しているので、将来果樹園などとしても楽しめる」と建築士

子世帯リビングから子ども室、階段を見る。子ども室側は扉を省いたことで視線が抜けて広々とした印象
できることは自分で
Cさん宅は、段状になった敷地に沿うように建てた2世帯住宅。将来、夫人の母親が住めるようにとしつらえた親世帯を1階に、子世帯を2階に設け、玄関は一つだが階層でプライバシーを分けた。
DIY好きなCさんは「できることは自分たちで」と外壁は夫婦で含浸系表面保護材を塗布。「子どもたちの成長に合わせて自由に間取りが変えられるように」と収納などの造作や仕切りも最低限にした。
LDKは、東と南にある大きな掃き出し窓を開ければ庭や裏手の雑木林までつながり、明るく開放的。水回りを中心にLDK、子ども室、寝室が配置されていて、引き戸を開ければ家中行き止まりなくつながる造りになっている。

寝室側から見た子ども室。正面の格子戸は、その先にある階段室の窓の位置に合わせて配置。外へと視線が抜けるだけでなく、採光通風にも一役買う
子どもたちは7歳の長男を筆頭に男の子3人、元気いっぱい!「ずっと走り回っていますが、アパートのころのように音を気にしなくてすむのが一番。とにかくのびのび過ごせるのがいい」「坪数の割に広々。子どもたちが隣の部屋で遊んでいても様子が分かるので安心」と喜ぶ夫婦。
1階敷地の一角には家庭菜園も設けた。「子どもたちとスイカを植えた時は『実はどこになる?』と話が広がった」と夫人。Cさんは「育てた野菜が食卓に出てくるのも幸せ」とかみしめる。この夏も雑木林でセミ取りしたり庭で水遊びしたり、楽しい計画は続く。

雑木林側にある里道から見た外観。子世帯をL字に囲むように庭を設けた。今は砂利敷きだが将来は人工芝を張る予定。南の掃き出し窓の外には将来的に庇を設けてアマハジ空間として使えるよう足元には犬走りを設置した
ここがポイント/建物で土留め 造成費圧縮
敷地は前面道路から階段状に上る不整形な土地。市街化調整区域内にあって、都市計画法の制限がかかる山林と、農地法と都市計画法をクリアしなければならない農地が混在し、家を建てるための許可を得るのが困難な場所だった。
①開発許可や農地転用に加え、進入路を造るために農地の一部を隣の農地と譲渡し合い、相続まで、複雑で手間のかかる手続きが必要で、②敷地囲いや造成にも大きな予算が見込まれた。
①は専門家を交えて関係各所に出向き、書類を整え交渉すること2年余。建築士の大城通さんは「開発行為の許可が下りるまで担当者が4度も入れ替わり、長かった」と振り返る。
②は敷地の形状を生かして圧縮した。
前面道路に面する農地を1段目とすると敷地は4段形状。1段目から2段目に向けて進入路を造り、2段目に親世帯と駐車場と家庭菜園、3段目に子世帯と庭を配し、傾斜した果樹園予定地を駆け上がると4段目の里道、雑木林へとつながる。「段差の大きい2段目と3段目は親世帯の仕切り壁を土留めにし、駐車場側だけ既成のよう壁を採用=下写真。敷地周囲など1メートル未満の段差は既製のトンブロックで対応した」

北側から見た外観。車の奥に見えるのが既成のよう壁、写真右手には家庭菜園もある
前面道路には排水側溝がなく、浄化槽と処理水をため置く貯水槽を設置。貯水は家庭菜園への散水にも活用できる。
「共用玄関だが、引き戸を閉じれば互いのプライバシーが保てる造りに。子世帯の水回りは、どの部屋からもアクセスできるよう中心に据えてトップライトで採光。寝室と水回り以外はオープンにして回遊性を持たせたことで、効率の良い家事動線と風通しのよさを実現した」

トップライトから差し込む光で明るい子世帯の洗面脱衣室。正面の引き戸を開けるとキッチンへ

2世帯が共同で使う玄関。右手の引き戸を開けた先が親世帯。引き戸を閉じればプライバシーを保てる。子世帯へと続く階段下は物入れとして無駄なく活用している
DATA
家族構成:夫婦、こども3人
敷地面積:518㎡(約157坪)
1階床面積:40㎡(約12.1坪)
2階床面積:91.9㎡(約27.9坪)
建ぺい率:17.9%(許容60%)
容積率:131.9%(許容200%)
用途地域:市街化調整区域内
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設計:てぃーだ建築設計室 大城通
構造:沖縄県建築サポートセンター
施工:建物(有)大真建設、外構(株)翁長開発
電気・水道:(有)新光組
お問い合わせ
てぃーだ建築設計室(同)
電話 098(992)3191
https://thii-da.com/
取材/徳正美 撮影/比嘉秀明
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」お住まい拝見
第2116号(2026年7月24日発行)より転載