緑眺め畑や趣味を満喫 こだわりのアプローチ|お住まい拝見

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全国を転々としてきたFさん(57)。定年後は夫婦2人、畑を耕し、趣味のものづくりを楽しみたいと、約190坪の細長い土地を購入。こだわりのアプローチと遊び心がある夢のマイホームを建てた。(文/赤嶺初美・ライター、撮影/比嘉秀明)

Fさん宅 木造/自由設計/家族2人

焼杉の外壁と琉球石灰岩の敷石、植栽が調和する北側の外観。Fさんの要望を踏まえ高さや枝ぶりを考慮して建築士が選んだ植栽は、外から屋内が見えないよう目隠しの役割もある

手作りがなじむ木造

転勤が多かったFさん。「定年後の終(つい)の家は子育て期の思い出深い沖縄で」と退職前から土地を探して見つけたのが、約190坪の南北に細長い敷地だ。

琉球石灰岩が敷かれた玄関アプローチは、ゆるやかに曲線を描き、両脇のキンモクセイ、ツバキ、ハギ、ツゲなど、県外出身の夫妻にとって郷愁を誘う植栽が四季折々に花や実をつける。アプローチを抜けると大きく広がる芝庭と畑。「実家が農家だったので、畑のある暮らしがしたかった」と夫人。ナスやネギなど自然栽培で育てた野菜は得意な料理でも楽しむ。畑仕事は未経験だったというFさんも、すっかり手慣れた様子だ。

琉球石灰岩の敷石、植栽が目を引くアプローチ。外壁沿いの砂利の犬走りが視覚的にゆとりをもたらしている

キッチン扉は全体の木目がそろうように作られ、木造の温かみと美しさが際立つ。食器棚は持ち込む食器の数を把握したうえで造作。天井高4.7メートルの吹き抜けが開放感をもたらす

遊び心で「うんてい棒」

設計は数社のモデルハウスを見学し「木の重厚さ」を感じた会社に依頼した。

夫妻の趣味はものづくり。自宅のあちこちに2人の手仕事が光る。表札、郵便受け、漆喰(しっくい)シーサーの置物はFさんが、藤の籠は夫人が作った。「木造だとそういうものがなんでも合う」と満足げ。キッチンや洗面所、トイレ、浴室などタイルは夫人が選んだ。「色が好き。全体のバランスを考え、組み合わせる作業は楽しかった」と振り返る。当初は夫人の母親のためにしつらえたという和室からは、外の景色が絵のように楽しめる。

「夫婦仲はいいけど、睡眠など生活リズムが違う」と寝室は別。夫人の寝室は、和裁の作業台や造作の本棚が印象的だ。2階のオープンスペースは普段は洗濯干し場として使っているが、扉を閉じればゲストルームとして独立。「県外に住む子ども家族など大人数でも寝泊まりできる」と大活躍だ。天井に取り付けられた「うんてい棒」は夫人が熱望したもの。「こういうのあると面白いじゃないですか」と笑う夫人。そんな遊び心が、この家らしい。

2階のオープンスペース。扉を閉じればゲストルームに。上部を開けておくことで2階の空調が家全体に行きわたる設計になっている。天井に設置した「うんてい棒」がユニーク

住んで2年近く。「はだしで歩きたくなるし、どこでも寝転がれる」とにこやかに話す。将来も見据え1階はすべてバリアフリー。互いに好きなことをしながら、飾ったり使ったり。2人のセカンドライフがゆったりと続いている。

1階和室。背もたれにもなる腰板は樹皮を剥いだ後の凸凹をあえて残す自然な風合いを生かしたつくり

1階南側の夫人の寝室。天然木の枝ぶりを生かした造作の本棚が壁面を飾る。机は30年以上使う和裁台を活用。自然光と照明で明るく

ここがポイント/プライバシーも景色も

Fさん宅の敷地は南北に細長く、前面道路との高低差が最大3メートル弱あった。そのため土地造成に予算が大きく取られることになる。設計を手掛けた伊良皆盛栄さんは、「大規模な造成を行わないで済むよう、もとの段差を生かして盛り土で形を整え、道路のある北側の高い所に住宅を配置。その手前の南側に芝庭、さらに一段下がって畑を設ける、土地の個性をそのまま生かした配置計画でこの家の骨格をつくった」と話す。

高低差3メートル弱の傾斜地に、住宅、芝庭、畑を段状に配置。土地の個性をそのまま生かした

3方に民家が建つ上、向かいは敷地も一段高く2階建て。そこで、民家の視線は遮り室内からは緑だけが見えるよう、窓と植栽の位置を決定。特にアプローチは「雑木林のような景色を眺めたい」との施主のイメージを実現するため、前面道路脇の電柱の位置まで計算して木を配置した。東の板塀は、風を通しながら目隠しと植栽を際立たせるキャンパスとしても機能する。外構へのこだわりが強いFさん夫妻のために設計段階から予算を確保。住宅の各部屋を一回りずつ小さくするなど調整しながら、完成度を上げた。

室内は東南と北西で公私を分けて使い勝手良く。屋根に太陽光パネルを搭載したほか、気密性を高め、引き戸を開けておけば猛暑以外は2階の空調1台で冷暖気が家全体をゆるやかに循環する設計も、光熱費を抑える工夫の一つだ。漆喰(しっくい)の壁、木の床、造作の水回りなど、使い込むほどに味わいが増す素材を選び「経年美化」を目指した。

オープンスペースには洗面台、トイレも設置。組み合わせ次第でデスクにも椅子にもなる造作家具が大活躍

庭から直接出入りできる土間には階段下収納、犬小屋、洗濯機

DATA

家族構成:2人
敷地面積:631.49㎡(約191坪)
1階床面積:86.53㎡(約26坪)
2階床面積:41.60㎡(約12.5坪)
建ぺい率:15.15%(許容60%)
容積率:20.3%(許容200%)
用途地域:指定なし
躯体構造:木造
設計施工:(株)琉球住樂 伊良皆盛栄
造作家具:(株)琉球住樂 伊良皆沙彩・伊良皆杏奈
電  気:(有)山城商工
水  道:(有)海西工業
外部大工:金城工業 棟梁・金城清正
内  装:真内装 棟梁・伊佐真二
鋼製建具:(株)エクセルシャノン
木製建具:(有)照屋木工
屋  根:(有)スカイルーフ
造  園:金勢造園

お問い合わせ

(株)琉球住樂
電話 098(852)6936
https://10raku.co.jp


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」お住まい拝見
第2108号(2026年5月29日発行)より転載