35坪に家と“隠れ家Bar” 通勤ゼロ距離 趣味満喫|お住まい拝見

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Kさん(44)夫妻の住まいは、2人の仕事場で週の後半だけオープンする隠れ家Barを併設する。「2人ともインドア派。通勤ゼロ距離で、本や映画など好きなことを贅沢(ぜいたく)に楽しみたかった」と夫妻。床面積35坪にこだわりの住まいと店を詰め込んだ。(編集部/徳正美、撮影/比嘉秀明)

Kさん宅 RC造/自由設計/家族2人

建物の西側を走る国道側から見た夜の外観。Kさん考案の縦横のラインがスタイリッシュな雰囲気を醸す。1階横長窓から見えるのがBarのカウンタースペース。セキュリティーと隠れ家感の演出のため、入り口は大通りから見えない位置に配置。室外機や配管類は向かって左手の北側にまとめ壁で目隠ししたことで、スッキリとした印象を保っている

大人だからできる贅沢

Kさん宅は3階建て。住まいは街並みの間から海が見える3階にLDKと水回り、2階に個室、1階に玄関を配置。その玄関と扉1枚でつながるBarが夫妻の仕事場だ。「ホテル勤めの頃は賃貸にいて車で通勤していたけれど、その時間もお金。職場と家はゼロ距離がいい」とKさん。夫人は「本を読んだり映画を見たりゲームをしたり、夫婦共通の趣味も多い。若い時から好きなことを、大人だからこそできるカタチで贅沢に楽しみたかった」と話す。

その思いは至る所に見て取れる。まず住居の階段スペース。2・3階の踊り場からリビングまで、壁一面に造り付けられた本棚に夫婦で集めた漫画や小説が美しく並び、まるで図書館のよう。「高さや奥行きに無駄が出ないよう、どこに何を収めるか細かく伝えて造ってもらった。全部で3000冊くらいはあるかな」とKさん。「今日はどれにしようか悩んでいるうちに気付けば30分くらいたっている」と夫人も笑う。

3階テラスから見たLDK。アクセントで取り入れた鮮やかなブルーの壁紙と、階段から続く本棚が目を引く。Kさんいわく「背表紙は本によって色が違うので、うるさくなり過ぎないように」と1冊ずつトレーシングペーパーでカバー。リラックスできるよう間接照明だけにしている

2階から見た階段。白とブルーで爽やか。踏み板は「ツートンにして正解でした」と夫人。手すりは、柱はスチール、バーは木で造作されている

2階にはそれぞれの自室を確保。Kさんはポスターやグッズを飾って「推し活」、夫人はリクライニングベッドに寝転んで映画やアニメ三昧と、一人時間も満喫する。

2階夫人の寝室。天井の照明兼プロジェクターから壁に映像を投影

一方で「何がイヤか面倒か、原因を探り解消できるよう反映」。例えば、扉はつり戸にして埃がたまるレールや取っ手の出っ張りをなくしフラットに。スイッチやコンセントカバーは目立たないよう壁と色を合わせるといった具合。

2階洋室はKさんが使用。壁は面ごとに壁紙、窓枠、コンセントカバーの色を合わせすっきり

「通勤ゼロ距離だからこそ気持ちの切り替えができるように」と色使いを工夫。住居は青、Barは赤をアクセントで取り入れた。

入り口から見た店内。黒とグレーを基調に、アクセントで棚の一部を赤に。入り口扉やトイレの壁にも取り入れている。棚には珍しいウイスキーがズラリ

外に出なくても快適

Kさんが「隠れ家Bar」にこだわったのは、「酒も料理も居心地も他にないものがあり、それを楽しめる方にきてもらえる店にしたかった」から。国道沿いだが直接行き来はできない「理想の土地」に出合い、その縁で紹介された建築士に設計を依頼。入り口はあえて国道から見えない位置にし、「貸店舗ではできない間取り・内装・機能」を詰め込んだ。

今は「夫婦2人なので店のカウンターと厨房(ちゅうぼう)がダイニングキッチン代わり」と夫人。週の前半は明るく気持ちがいいリビングでヨガや推しのライブを楽しみ、Barを営業する週半ばからは仕事に精を出す。外に出なくても快適な住まいは、オンオフ双方の充実をかなえた。

3階の洗面・脱衣室。「立ったまま髪を乾かしたり化粧するのは大変」と夫人が座って使える鏡も取り付けられている

ここがポイント/多機能&省スペースでゆとり

要望は、海が見える住宅にテーブル席二つとカウンター席六つの隠れ家Bar、駐車場5台分。敷地は南北に細長く、西には緑地帯を挟んで国道が走っていた。美音スペースデザインの比嘉新大さんは「建物は敷地奥の国道側に寄せ、周囲に駐車場を確保。前面道路からアクセスしやすい1階と2階の一部を店舗、奥の1~3階を住居とし、入り口や玄関は国道から見えない場所に設けた」と説明する。

海を望むには3階建てにする必要があったがコストがかさむ。ボーリング調査の結果、支持基盤は地面より1メートル下にあることが分かった。そこで「住居も店舗も階高を25~30センチ抑え、ワンフロアの面積もできるだけ小さく収めるよう工夫した」。店舗は「カウンター側は地面より50センチ床高を上げ、通行人と視線がかみ合わないよう配慮。逆にテーブル席側は半階分掘り込んで基礎を土間床として活用。そこから2階席までスキップフロアでつなぎ3層にすることで、必要な席数を確保した」。

カウンターから見た店内。客席は「気配は伝わるが、こちらと目は合わない配置にした」とKさん。南側の壁は角度を付けることで、床面積はそのままに、空間にゆとりをもたらした

コンパクトながら趣味を存分に楽しめる住居の肝は、多機能な空間使い。「一番苦労した」のは階段だ。居室との兼ね合いを考えると極力幅を抑えたいが「2・3階に大物の家具家電を運び入れるには、向きを変えたり、人が支えるための空間が必要になる」。目を付けたのは手すり。「上下階の手すりが10センチ幅内に重なって収まるようミリ単位で調整した」。必要最低限のスペースに線状で収めることで目立たず視線も抜ける。暮らしにゆとりを生む階段兼本棚となった。

右は南、左は西から見た日中外観

DATA

家族構成:夫婦
敷地面積:197.65㎡(約60坪)
1階床面積:43.25㎡(約13坪)
2階床面積:3.44㎡(約12坪)
3階面積:32.48㎡(約10坪)
建ぺい率:24.57%(許容80%)
容積率:59.08%(許容200%)
用途地域:近隣商業地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:美音SpaceDesign(株) 比嘉伝英、比嘉新大
構造:(有)ライサス建築研究所
施工:(株)長山建設
電気・水道:創電水プラン

お問い合わせ

美音SpaceDesign(株)
電話 0980(54)4500
https://bionsd.co.jp/


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」お住まい拝見
第2107号(2026年5月22日発行)より転載