住宅に長く住まうためには定期的な手入れが欠かせない。共同住宅の修繕は一戸建て住宅と比べ、規模や設備などから工種や費用面で大きく異なる。共同住宅の大規模修繕のポイントをタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんに解説してもらう。今回は長期修繕計画と工事費の収支計画について。(文・表/赤嶺雄一郎 株式会社タイズリフォーム代表取締役)
一つの建物を多くの人が区分所有する分譲マンションは建物を維持管理していく上で多くの課題を有しています。共同生活に対する意識の相違、多様な価値観による合意形成の難しさ、そして「修繕における建物構造上の技術判断の難しさ」などです。
高額な大規模修繕費
分譲マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るためには適時、建物や設備の適切な修繕工事が重要です。しかし、大規模修繕工事などの修繕費は非常に高額となるため、実施に際して区分所有者に大きな経済的負担を強いることになります。
「総修繕費」や工事を実施するための「修繕積立月額」を算出するためには「長期修繕計画」=図1=の作成が必要となります。将来予想される一定期間(30年間)の建築・設備修繕工事などを計画します。

長期修繕計画表は推定修繕工事項目(表2参照)や修繕周期、想定金額が記されているので、計画期間の工事費総額が算出可能。有償で実施される建物診断や設計監理、長期修繕計画の作成費用も含まれる
国交省の計画基準
国土交通省は2008年に長期修繕計画を作成・見直しするための基準「長期修繕計画標準様式」とその考え方、作成時の注意点などを示した「ガイドライン及び同コメント」を策定しています。
この「長期修繕計画標準様式」は①計画期間②推定修繕工事項目③修繕周期④推定修繕工事費⑤収支計画=図2=で構成されています。標準様式とガイドラインは21年9月に改訂されました=表1。

収支計画グラフとは長期修繕計画表と連動し、毎年の①予想修繕費②修繕積立金の収入③残高の推移を一目で把握するための「財務計画表」のこと


建築工事の⑥は共用部分である玄関扉やアルミサッシが対象。設備工事の⑥は機械式駐車場などの取り替えが対象となる。いずれも非常に高額となる
計画期間は既存マンションも新築同様「30年以上」となることで、余裕を持った資金計画を立てられます。修繕周期はこれまでの「12年ごとに実施」から「12~15年」と幅を持たせることで各マンションの仕様や劣化状況に合わせた周期の検討がしやすくなりました。それ以外にも修繕時に断熱改修工事(屋上や壁面、窓)の推奨や定期的なエレベーター点検の促進なども追記されています。
まずは建物診断
これまで作成者により大きなばらつきがあった長期修繕計画にガイドラインが設けられたことは大変喜ばしいことですが、実務上の観点から申し上げると「建物の現状や過去の修繕履歴を踏まえた修繕計画が最も重要」だと思っています。建物ごとの特徴「個別性」があるため、ガイドラインが全ての建物に当てはまるわけではないからです。
まずは大規模修繕工事の実施を前提とした「建物診断」を行い、建物の現状を正確に把握した上で、最も費用対効果の高い工事仕様(施工計画)を定める。それから工事費を算出することが大切だと考えています。
もちろん、ガイドラインは一定の合理性と説得力を伴うため、今後の建物の在り方などを管理組合で審議するきっかけとなり、もめやすい修繕積立金増額の決議が得られやすくなります。次回は、長期修繕計画作成の事例や資金計画表との活用などについてお話します。
執筆者プロフィル

あかみね・ゆういちろう/株式会社タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士
【株式会社タイズリフォーム】電話 098(975)7815
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」なるほど!大規模修繕の一歩(2)
第2105号(2026年5月8日発行)より転載