精密に描かれた幻想的な世界|アートを持ち帰ろう

読了時間 約3分

アーティスト・今村雄太は多作だ。8月に開催した個展「望郷-Nostalgie-」では、さまざまなサイズの作品でギャラリーの壁が埋め尽くされていた。(文/本村ひろみ)

祈りを大胆な構図で

その数、100点以上。個展に向けてかなりの数の新作を仕上げたという。どの作品も細部までびっしりと緻密に描かれていて、制作への熱量が半端ない。大胆な構図に精緻な描写。モチーフは魚、動物、不思議な生物、植物、風景。彼のファンタジーな世界に引き込まれる。

街の風景を描いた「Purification(精製)」。作品の空には巨大な風船。その表面には得体(えたい)の知れない鳥や人のようなものがうごめいている。俯瞰(ふかん)する街には人々が生活を営み、この風景を私も知っているような気がした。「すべての感情、例えば後悔や喜び、悲しみを大きな風船に乗せて手放すことができたら人は何を想(おも)うのだろう」そして「たそがれ時は過去を回想し未来へと歩みを進めるための時間で、そう願うひとつの儀式」を描いたそうだ。詩的で日々の祈りを幻想的に描いた心に残る作品だ。

「Purification」727ミリ×530ミリ

沖縄に暮らし始め13年

作品「北風」では枯れ木の上にとまる小さな鳥を発見。この景色は今村が進学のために引っ越してきた春の沖縄で最初に見たもの。「季節風にさらされた枝の隙間には、楽譜の中を飛び交う音符のように、見た事もない鳥が行き交い囀(さえず)っている。沖縄に住んでいる事を実感した情景」だという。沖縄に住んで13年。趣味の釣りを楽しみ、釣った魚はおいしくいただき、感謝して真摯(しんし)に描く。岐阜で生まれ育った今村は、いま沖縄の風景にとけこんでいる。

「北風」420ミリ×594ミリ

「琉航」1120ミリ×1940ミリ

「琉叢(そう)賛歌」652ミリ×910ミリ

「森の王」1167ミリ×803ミリ

作家近況

アーティスト・今村雄太
展示会のお知らせなどはインスタグラムで
https://www.instagram.com/route0yuta/

執筆者プロフィル

もとむら・ひろみ/那覇市出身。清泉女子大学卒業。沖縄県立芸術大学造形芸術研究科修了。ラジオ沖縄「GO! GO! ダウンタウン国際通り発」「We love yuming2」「還暦ラジオ」でパーソナリティーを務める


毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」アートを持ち帰ろう(65)
第2125号(2026年9月25日発行)より転載